■「F355」にも負けない「パンテーラ」とは
正真正銘の駄馬をダービー馬に育てあげることは、いかに優れた調教師であっても不可能なことだろう。
【画像】いま再評価すべき「パンテーラ」の魅力を画像で見る(13枚)
けれども、ひねくれて育ったもんだからロクに走ってはくれないし、誰も何も期待していなかったけれども、実は由緒正しき種馬の隠し子であった、なんてことが分かって(実際の種馬ではありえないけど)、という馬ならば、十分、競馬界のシンデレラストーリーを実現する可能性があるだろう。
「パンテーラ」こそは、隠れた駿馬だ。
断言しよう。コイツは名車である。
これまでパンテーラに関しては、各メディアでいろんなことがいわれてきたし、マニアックな領域においては肯定的な意見も散見された。ここでは名車である理由について、技術的な観点から深く掘り下げるつもりはないし、そもそもスペースも足りない。その話をアレッサンドロ・デ・トマソの生い立ちから書き始めたならば、ゆうに本一冊分になるだろう。
名車である理由を、実際に取材したこの個体に何度も乗る機会のあった人間の、ナマのインプレッションをベースにして、事実を事実として、シンプルに述べておきたい。
ちなみに、この「パンテーラL」は、非常に丁寧なレストレーションとグレードアップを随所に施した個体であり、フルノーマルもしくはオリジナルコンディションであるとはいい難い。けれども、クルマのコンセプトや基本構造を変更するような大規模な改造は受けておらず、あくまでも、基本のポテンシャルを現代の技術で磨きあげたというレベルである。いわゆるハイテックやレトロモッドとは一線を画する。
本個体がパフォーマンス面において、オリジナルよりグレードアップされているのは、タイヤ、ブレーキ、エンジンルーム内補強、多少のエンジンパワーくらいのものだろう。全体の雰囲気をみてもらえれば分かる通り、オリジナルの状態をよく残している。
このクルマで、たとえばフェラーリの同じV8ミッドシップ2シーターであれば、いったいどのモデルまで相手にできると貴方なら想像するだろうか。
答えは、「F355」だ。
加速やハンドリングで、シロウトの駆るF355になんぞ負ける気がしなかった、というと、驚かれただろうか? おそらく、シンプルに最高速ならツラい。F355でも295km/hは堅いから、パンテーラで勝つにはもう少し馬力も、空力的な工夫も必要だろう。
けれども、リアルワールドでの加速においては、どこまでもラクラクについていけた。焦るフェラーリオーナーの顔が見えるような気がしたものだ。
高速道路だけじゃない。その辺のワインディングロードでも、ノーマルのF355についていくのはもっとカンタンだった。とくに、コーナーからの立ち上がりが鋭く、履き替えられた極太タイヤのグリップをうまく制御して走らせれば、相手がプロでもないかぎり、離されることなどなかった。
■どうして「パンテーラ」の評価は低いのか?
これは、ひょっとすると、一般的なスーパーカーファンはもとより、当のパンテーラオーナーが驚く事実ではないだろうか。底なしポテンシャルのアメリカンV8をチューンアップすれば、直線勝負は何とかなる。けれども、ヒップアップ・ミッドシップのパンテーラにそこまでの実力があったのか、と。
あったのだ。
もちろん、フルノーマルの初期モデルや、パワーダウンの著しい後期モデルでは難しい。が、しかし、そのポテンシャルの高さをもってすれば、随所を根気強く磨き上げることで、原石はがぜん、輝きを増す。
アレッサンドロは、フェラーリやランボルギーニには、とうてい真似のできない世界、つまり「安くて高性能なスーパーカー」をコンセプトに掲げてパンテーラの開発を進めようとした。そのためには、高額なスーパーカーを作るよりもむしろ、より才能に秀でた、野心的なスタッフを必要とした。
チーフエンジニアに指名されたのが、ランボルギーニ「ミウラ」で一躍スーパーカーシーンに躍り出たジャンパオロ・ダラーラ。デザイン担当はギアのトム・ジャーダであった。
サイズやレイアウト、パッケージは超一流のミドシップスポーツカースペックでありながら、設計と生産に掛かるコストは徹底的に抑えこまれた。
エンジンは、もちろん、フォード製のV型8気筒OHVであった。生産された工場の名前からクリーブランドユニットと称される351c.i.(5.75リッター)エンジンで、これは当時最新のフォード車用V8であり、確かに大量生産品ではある。けれども、その設計は意外に凝ったもので、強固なブロックを筆頭に高い潜在能力を秘めていた。
一流のスタッフによる一流のアイデアが結実したパンテーラは、確かに低価格ではあった。なぜなら、フォード・リンカーンのディーラー網で販売することが決まっていたアメリカ市場向けの戦略モデルであったからだ。
パンテーラにとって不運だったのは、開発を急いだために熟成不足のままマーケットに放り出されたことにあった。その結果、初期モデルにはトラブルが相次ぎ、以降、パンテーラといえば「よく壊れる」クルマの代名詞となった。
実際には、その後、改良も進んだのだが、一度ついたイメージはなかなか払拭されず、そのことがメンテナンス不足の個体を増やし、さらにイメージダウンに繋がるという、負のスパイラルが起こったように思う。
3000台近くというイタリアンスーパーカーとしては異例の初期受注があったとはいうものの、全米ディーラー網にとってはわずかな量に終わったこと、そして何よりも、デビュー直後にオイルショックに見舞われたことによるフォードとのコラボレーション解消で、デ・トマソブランドのイメージダウンが余儀なくされたことも痛かった。
とはいえ、ガンディーニデザインの「ヌォーバSI」モデルまで含めれば、なんと1993年まで生産されたというから、超寿命のスーパーカーが多かった時代であったとはいえ、設計時の素性がいかに優れていたかが伺えるだろう。
安物、しかし、高性能。
アフターマーケットの力を得たパンテーラは、今なお「伸びしろ」のあるスーパーカーとして、世界中で愛され続けている。同じ時代のフェラーリやランボルギーニ、マセラティのV8搭載モデルでは到底に不可能な、現役レベルの「速さ」や「スポーツ性能」を発揮させることも、パンテーラをベースにすれば、今なお可能である。
パンテーラは確かに安物だったが、フォード「GT40」の安物、だったのだ。
* * *
●De Tomaso Pantera L
デ・トマソ・パンテーラL
・全長×全幅×全高:4270×1830×1100mm
・エンジン:V型8気筒OHV
・総排気量:5763cc
・最高出力:266ps/5000rpm
・最大トルク:45.0kgm/3500rpm
・トランスミッション:5速MT
●取材協力
DREAM AUTO
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みんなのコメント
スーパーカーブームを作った「サーキットの狼」というマンガで田舎のヘタレなボンボンが乗っていた車として登場したから最初からイメージが悪かったんじゃないのかしら。
ネットで得た情報書き並べてるけどw