8月27日、イギリスのダイアナ元皇太子妃の愛車がオークションにかけられ、1億円超で落札された。このクルマの歴史的背景と落札金額について武田公実が解説する。
特別なエスコート
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欧米の一流オークションハウスでは、著名なセレブリティたちの“元愛車”たちが出品される機会が、けっこうな頻度である。
またその機会は極めて少ないとはいえ、世界各国のロイヤルファミリーがかつて所有していた車両が、特別な付加価値を謳いつつ“For Sale”となるのもある。
今回、英国のオークションハウスであるシルヴァーストーン・オークション社が、さる8月27日に開催した「The Classic Sale at Silverstone 2022」に出品され、世界的な話題となった1台を紹介したい。恐るべき高価格で落札されたのだ。
なんの変哲もない37年前の中古コンパクトカーにも映るが、ファーストオーナーは、今年で逝去から25年を迎える故プリンセス・ダイアナだった。
ダイアナ妃は1981年にチャールズ皇太子と結婚したのちも、王室保有のロールス・ロイスやデイムラーの後席に座るよりは、自ら愛車のステアリングを握ることを好んだという。
そしてまた、ロンドン市内でショッピングや友達とのランチのために自分のクルマを運転することは、防弾仕立てのロールス・ロイスを取り巻く警察の監視や注目から逃れるために望ましい方策と考えていたのだろう。
ダイアナ妃は、皇太子から婚約記念にプレゼントされた銀色の5ドアハッチバックを皮切りに、少なくとも2台のフォード「エスコート・マークIII」を乗り継いだとされる。当初2台目の候補となったのは、より華やかな赤い「エスコート1.6iカブリオレ」。ただしプライバシーが大幅に制限されるオープンモデルに、彼女が価値を見出せなかったのと、セキュリティの面からロンドン警視庁王室警護部の反対を受けたため、この乗り換え計画はキャンセルさせたという。
このとき元妃殿下は、よりステルス性の高い(≒目立たない)「エスコートRSターボ」にこだわったとの由。そこで英国フォード社の広報部門は、当時ホワイトのみがボディカラーの選択肢とされていたRSターボに、ブラックボディの特装モデルを製作したいと提案した。結果、本個体は、ファクトリーオリジナルのRSターボ・シリーズ1としては最初にして唯一のブラックボディ車両になったのである。
黒のペイントワークは、英国フォードの特殊車両エンジニアリング部門が担当。よりステルス化を図るために、RS専用のラジエターグリルではなく、標準版エスコートと同じ5スリットのグリルを取り付けた。また、助手席に乗るSPのための補助バックミラーと、グローブボックス内には無線装置が取り付けられ、そのケーブルは現在も残されている。
走行距離はわずか2万4961km
1985年8月23日に登録されたこのRSターボ・シリーズ1とプリンセスは、そののち数年間、チェルシーのブティックやケンジントンのレストランにて、パパラッチたちから多くの写真を撮られた。ある報道写真にはウィリアム王子が後席に座り、ダイアナ元妃が優しい微笑みを浮かべながらハンドルを握る姿が写っている。
これらの写真がPR効果をもたらしたかどうかは定かではないが、RSターボが“ピープルズ・スポーツカー”と呼ばれたことと、ダイアナ妃が“ピープルズ・プリンセス”と呼ばれ、英国国民から讃えられたのは関連しているかもしれない。
製作から2年9カ月後の1988年5月、走行距離約6800マイルでフォード社に戻されたこのエスコートは、同社の幹部社員が愛妻のために購入。さらに1993年9月には英国「Kiss-FM」のプロモーションで抽選の賞品とされるなど、今世紀初頭まで幾人かのオーナーのもとを転々とする。
しかし2008年、このエスコートRSは英国内最高のフォードRSコレクターの目に留まり、今回の出品までコレクションに留まることになった。
オークションカタログ作成の時点で、走行距離はわずか2万4961km。それに見合った、卓越したコンディションを有する。くわえて数奇な歴史を裏づける、詳細なヒストリーファイルなどのドキュメントや純正付属品も添付してのオークション出品となった。
“No Reserve”の効果
近年、急速な高騰状態にあるクラシックカーマーケットでは、1980~1990年代の通称“ヤングタイマー・クラシック”も過熱の一途を辿っているなかでも、フォルクスワーゲン初代/2代目「ゴルフGTI」やプジョー「205GTI」に代表されるホットハッチの人気モデルは、ここ2~3年で数倍、ないしはそれ以上の価格上昇をみせている。
そして日本での知名度こそ低いが、イギリスにおける英国フォードのスポーツモデルは、われわれ日本人には信じがたいほどの支持を得ている。エスコートRSターボも例外ではなく、以前は日本円にして100万円以下でも充分に購入できたのが、現在では3万ポンド(約490万円)で売られる事例も少なくないという。
今回の出品個体は、RSターボ・シリーズ1としては唯一のブラックボディであること。この個体特有のモディファイが施され、それが現在でも維持されていることなどが、バイヤーたちの購買意欲を掻き立てたのは間違いあるまい。
しかもその特別な出自にもかかわらず、コンクール・デレガンス基準のディテールアップが施されており、コンディションについても世界最高レベルの1台とのことだった。
でも、たとえそれらの前提条件を念頭に置いたとしても、今回の落札価格には驚くほかないだろう。
シルヴァーストーン・オークション社は、今回の出品について最低落札価格を設定しない“No Reserve”とした。この出品スタイルは、安値でも落札されてしまうリスクもあるいっぽうで、特に対面型のオークションの場合、確実に落札されることから会場の空気が盛り上がり、ビッド(入札)が進むというメリットもある。
8月27日に行われた競売では、リスクを冒した賭けが巨大な成功を招いたようだ。海外の通信社からの外信によると、イギリス国内にくわえてアメリカ、あるいはドバイなどのバイヤーたちが熾烈な入札合戦を繰り広げ、終わってみればシルヴァーストーン側に支払う手数料も合わせて73万7000ポンド、つまり日本円に換算すれば約1億1900万円という、恐るべきプライスで落札にいたったのだ。
ちなみにダイアナ元妃の所有していたエスコートといえば、上記した銀色の5ドア「ギア(Ghia)」も、昨2021年夏に英国「リーマン・ダンジー(Reeman Dansie)」社のオークションに出品され、このときは5万2640ポンド(約850万円)で落札されている。
このプライスも、RSターボではないギアの相場価格を数10倍レベルで上まわるものであり、やはり悲劇の元プリンセスのネームバリューは、あの悲しい自動車事故から四半世紀を経た今もなお、色あせるものではないと実感した。
文・武田公実
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