現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > どノーマルの市販車でサーキット走行なんて意味ないじゃん! メーカーのなかにもある「声」にレーシングドライバーが堂々反論

ここから本文です

どノーマルの市販車でサーキット走行なんて意味ないじゃん! メーカーのなかにもある「声」にレーシングドライバーが堂々反論

掲載 56
どノーマルの市販車でサーキット走行なんて意味ないじゃん! メーカーのなかにもある「声」にレーシングドライバーが堂々反論

 この記事をまとめると

■筑波サーキットは市販車のテストや開発を行うのに最適なサーキットでもあった

GRカローラやメガーヌR.S.はリヤシートまで取っ払った軽量モデルを用意! たかが「椅子」をハズしただけでどれだけ速くなる?

■雑誌やビデオ取材で使われることも多く、エンジニアもサーキットテストには注目していた

■サーキットテストは減少傾向だが、サーキットで得られるデータは公道以上という声もある

 なぜ誰もが走るわけではないサーキットで車両開発をするのか

 遡れば1970年代後半頃から、「市販車をサーキットで走らせて評価する」というテストスタイルは行なわれていた。当時、多く使われていたのは東京からほど近い茨城県に位置する筑波サーキットだ。1周約2kmの小ぢんまりとしたサーキットでバックストレートが約400mあり、性能指標のひとつとして取り上げられることの多かった0~400m発進加速(通称:ゼロヨン)を計測するのに好都合だった。

 だが、走り好きな編集者が多い媒体でラップタイムに着目して、ハンドリング性能とラップの速さを確かめるようになるのに時間はさほどかからなかった。

 僕が初めて筑波サーキットを試走したのは大学生の頃。某月刊自動車専門誌でアルバイトをしていたときだ。レーシングドライバーで自動車評論家でもあった津々見友彦氏が、トヨタ・スターレットにニュータイヤを履かせて試走していたのをラップ計測し、撮影も行なわれていた。その時間の最後に10分ほどの時間が残り、津々見氏から「走ってみていいよ」、と声をかけていただいたのがきっかけ。

 ナンバー付のノーマルスターレットで走ると1分22秒くらいのタイムだっただろうか。

 ただタイムが計測されるだけでなく、周回毎のラップタイム変化やブレーキのフェード現象なども起きる。教習所で坂道の下りでブレーキを多用するとフェード現象が発生し止まれなくなるのでエンジンブレーキを併用しなさい、と教わったはずだが、実際にフェード現象を体験することは一般道では難しい。それがサーキット走行では2~3周もすればブレーキがフェードし、ブレーキペダルストロークが長くなり、減速もし難くなる。そうなったらどう回避するのか。サーキットでの試走体験から問題視すべきテーマが次々に見出だせてきたものだ。

 1980年代になると、どの媒体でも新型車の性能テストをサーキットで行なうことが多くなる。年々クルマの走行性能は高まり、「名ばかりGTは道をあける」という過激なキャッチコピーまでCMで流れるようになった。

 そのキャッチコピーを受けて国産GTモデルを筑波サーキットに数車集め、レース形式で走らせて速さを競う企画を行なった。マツダRX-7(初期型)が1分18秒という最速タイムを叩き出したが、レース形式のテストではブレーキの耐フェード性能がもっとも優れていたトヨタ・セリカ2000GTが制した。人気抜群だった日産スカイライン2000GTは1分22秒台という有様だったのを覚えている。

 このように、サーキット走行を行なうと結果がラップタイムに表れ、クルマの本質的な性能が明らかになる。ハイパワーであるとか優れたサスペンション機能を持っているとか謳われていても、サーキット走行では実力が明確に現れて、ごまかしがきかないのだ。

 サーキットでは公道テスト以上のデータ取りができる場面もある

 やがて、筑波サーキットでの市販車走行テストは大きなブームとなって、ベストモータリングというビデオ媒体では「バトル」と題して速さを競う企画が大ヒットしたのである。

 サーキットで走らせると、そのクルマが持っている性能を明らかにできる。動力性能だけでなくハンドリングやブレーキ性能、耐久性などバランスよく仕上げられていなければすぐにボロがでる。ごまかしが効かないので多くの国産車メーカーはスポーツカーの開発テストを筑波サーキットでも行なうようになっていくのだ。

 真っすぐ走るだけなら最速を記録できるハイパワーマシンが、サーキットではコーナリングGによりエンジンオイルが偏り、潤滑不良でエンジンが焼き付いて壊れてしまったということもあった。ブレーキの耐フェード性は重要で、何周も安定したブレーキ性能を発揮させるためには、ベンチレーテッドディスクブレーキに冷却エアを導くエアガイドの装着も不可欠になっていく。

 オイルの偏りは制動時の減速Gによっても引き起こされ、とくにエンジンを横置きするFF車にはオイルパン内にバッフルプレートを追加する処置が必要だとわかる。同時に燃料タンクの形状や燃料パイプのレイアウトも吸い込み不良を回避するように設計されていなければならない。燃料タンクに半分以上燃料が入っていても、サーキットでは横Gで片寄り、吸い込み不良でガス欠症状が出てしまう。こうした現象に対処するために試行錯誤が繰り返される。

「自分はサーキット走行などしないから、サーキットでの性能なんてどうでもいい」という人も実際に多いし、自動車メーカーのなかにもそうした考えの経営者がいる。

 近年、環境性能を第一義と捉え、限界性能は二の次と考える風潮となっているのは残念なことだ。取材車両でのサーキット走行テストを禁じている自動車メーカーも圧倒的に多くなった。サーキット走行でボロが晒されなければコストダウンもできる。過剰なブレーキシステムもサスペンションも不要とばかりに牙を抜かれた”自称”スポーツモデルが増えてしまった。

「サーキットを10周もすれば一般道の10万km分のデータが取れる」、と勇んでいたエンジニアの多くが職を離れ、現役世代にはほとんど見られなくなってしまった。それでもなお、サーキットでテスト走行することは速さを目的とするだけでなく、走行安全性の確保や定量化など重要な役割があると知っているメーカーもある。

 出来上がったクルマを走らせてみると、サーキットで磨き上げられたかどうかがわかる。サーキット生まれであるなら、それは大きな安心感と高い耐久性を与えてくれ、ユーザーに大きなメリットとなるに違いないのだ。

こんな記事も読まれています

大変失礼だけど[イタフラ車]だけで大丈夫なの!? しかも土地代バカ高い世田谷だよ!? 老舗ラテン系専門中古車店のビジネスの実態が衝撃
大変失礼だけど[イタフラ車]だけで大丈夫なの!? しかも土地代バカ高い世田谷だよ!? 老舗ラテン系専門中古車店のビジネスの実態が衝撃
ベストカーWeb
アロンソの“個人的な要望”から生まれたV12+6MTの限定車『ヴァリアント』がグッドウッド出走へ
アロンソの“個人的な要望”から生まれたV12+6MTの限定車『ヴァリアント』がグッドウッド出走へ
AUTOSPORT web
「失敗作の汚名挽回!!」大胆イメチェンで一発逆転!! 大成功したクルマたち
「失敗作の汚名挽回!!」大胆イメチェンで一発逆転!! 大成功したクルマたち
ベストカーWeb
ガソリンがリッター424円! 激高なアウトバーンのスタンドで給油せずに節約するためにとった方法とは?【みどり独乙通信】
ガソリンがリッター424円! 激高なアウトバーンのスタンドで給油せずに節約するためにとった方法とは?【みどり独乙通信】
Auto Messe Web
フォルクスワーゲンが新型車5モデルを同時に発表|Volkswagen
フォルクスワーゲンが新型車5モデルを同時に発表|Volkswagen
OPENERS
【635ps/750Nm】トップ・オブ・新時代ディフェンダーあらわる ランドローバーからディフェンダー・オクタ発表
【635ps/750Nm】トップ・オブ・新時代ディフェンダーあらわる ランドローバーからディフェンダー・オクタ発表
AUTOCAR JAPAN
非ハイブリッドの「欧州最速」仕様 ポルシェ・カイエン GTSへ試乗 コレぞ運転を楽しめる大型SUV!
非ハイブリッドの「欧州最速」仕様 ポルシェ・カイエン GTSへ試乗 コレぞ運転を楽しめる大型SUV!
AUTOCAR JAPAN
F1パワーユニット開発に取り組むアウディ、すでにレース距離のシミュレーションも実施。他カテゴリーでの経験が大きな資産に
F1パワーユニット開発に取り組むアウディ、すでにレース距離のシミュレーションも実施。他カテゴリーでの経験が大きな資産に
AUTOSPORT web
中国からの刺客 BYD新型EVスポーツセダン「SEAL(シール)」販売開始 
中国からの刺客 BYD新型EVスポーツセダン「SEAL(シール)」販売開始 
AUTOCAR JAPAN
フォルクスワーゲン、5つの新型車を同時発表『Tクロス』『ティグアン』『パサート』『ゴルフ/同ヴァリアント』が順次発売
フォルクスワーゲン、5つの新型車を同時発表『Tクロス』『ティグアン』『パサート』『ゴルフ/同ヴァリアント』が順次発売
AUTOSPORT web
BMW、現行『4シリーズ』のクーペとカブリオレを刷新。新デザインのLEDヘッドライトを採用
BMW、現行『4シリーズ』のクーペとカブリオレを刷新。新デザインのLEDヘッドライトを採用
AUTOSPORT web
プジョー陣営のハンセンが原点“レッド”に回帰。新たな市街地戦構想にBTCC王者も興味/WorldRX
プジョー陣営のハンセンが原点“レッド”に回帰。新たな市街地戦構想にBTCC王者も興味/WorldRX
AUTOSPORT web
約550万円! トヨタ新型「86」特別モデルに予約殺到!「戦艦」モチーフの“斬新デザイン”がカッコイイ! 予想を超えた「驚きの声」とは
約550万円! トヨタ新型「86」特別モデルに予約殺到!「戦艦」モチーフの“斬新デザイン”がカッコイイ! 予想を超えた「驚きの声」とは
くるまのニュース
欧州に「本腰」入れる中国メーカー 長城汽車(GWM)が本格上陸 「嗜好」の違い課題に
欧州に「本腰」入れる中国メーカー 長城汽車(GWM)が本格上陸 「嗜好」の違い課題に
AUTOCAR JAPAN
テスラやボルボにもマッチ! プレミアム輸入車の足元によく合う鍛造削り出しのシャープなデザインがカッコよすぎるウェッズ「FZ-6」とは
テスラやボルボにもマッチ! プレミアム輸入車の足元によく合う鍛造削り出しのシャープなデザインがカッコよすぎるウェッズ「FZ-6」とは
Auto Messe Web
【MC20がベース】 今季そのまま参戦のコンペティションモデル マセラティGT2にモデナで試乗
【MC20がベース】 今季そのまま参戦のコンペティションモデル マセラティGT2にモデナで試乗
AUTOCAR JAPAN
レーシングカーのマフラー音をBGMに睡眠!? サーキット内常設キャンプ場「RECAMP 富士スピードウェイ」を一足早く“体験”
レーシングカーのマフラー音をBGMに睡眠!? サーキット内常設キャンプ場「RECAMP 富士スピードウェイ」を一足早く“体験”
くるまのニュース
【F1第11戦無線レビュー(2)】「勝てるぞ、ジョージ!」思わぬ勝機が巡ってきたレース終盤。メルセデス代表は大興奮
【F1第11戦無線レビュー(2)】「勝てるぞ、ジョージ!」思わぬ勝機が巡ってきたレース終盤。メルセデス代表は大興奮
AUTOSPORT web

みんなのコメント

56件
  • FUT
    運転免許が無いのが社長をやるメーカーには、理解出来ないだろ
  • Ta*****
    家電でも。産業機器でも。「通常の使用条件」より過酷な条件でテストするのはアタリマエ。それが安全や性能向上に繋がる。
    コストアップにはなるかもしれない。でもそのコストを切り詰めるって事は、「通常の使用条件」からちょっと外れたら即危キケンな状態になり得るって事だ。
    「条件を統一」する事で、何が優れているかの比較を定量化できるって面もある。
    公道じゃぁ細かい条件を統一できないからね。
    勿論、「通常の使用条件」でのテストに加えての話だけどね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2695.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1640.03258.0万円

中古車を検索
GTの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2695.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1640.03258.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村