12月15日、ブリヂストンが東京都港区の同社グローバル研修センターにて『2023年ブリヂストンモータースポーツ活動60周年「極限への挑戦」次のステージへ -サステナブルなグローバルモータースポーツ活動強化-』と題した記者会見を開催。次の時代へ向けたモータースポーツ活動について発表を行った。
2023年にモータースポーツ活動開始から60周年を迎えた日本のブリヂストンタイヤ。今回の会見には、代表執行役グローバルCEOの石橋秀一氏と、常務役員で製品開発管掌の草野亜希夫氏が出席し、12月6日に明らかとなった2026/2027年シーズン13からのABB FIAフォーミュラE世界選手権へのタイヤ供給などについて説明が行われた。
ブリヂストンのタイヤ供給が決定。2026/27年導入予定のフォーミュラE“Gen4”サプライヤーが発表
会見には、まず石橋CEOが登壇。ブリヂストンのモータースポーツ活動開始から60周年を迎えた2023年を機に、モータースポーツに懸ける情熱を再確認し、サステナビリティを中核に据え、活動を進化させる決意を“Passion to Turn the World(世界を変えていく情熱)”という新たなメッセージに込め、サステナブルなグローバルモータースポーツ活動を強化していくことを語った。
このメッセージには、ブリヂストンがモータースポーツを通じて、レースを楽しみ、勝つことにこだわり、『極限へ挑戦』し、イノベーションを加速させていく情熱、さらに、仲間とともに、持続的なモビリティ社会を支えていくという情熱を表現していると言う。
モータースポーツはタイヤメーカー“ブリヂストン”としての原点と位置づける石橋CEO。今後は、フォーミュラEへのタイヤ供給など、サステナブルなグローバルモータースポーツ活動を通じて、レースを『走る実験室』として、極限の条件で技術を磨き、“From Circuit to Street”のコンセプトの下、市販用タイヤ開発の次のステージへ繋げ、進化させていくと続ける。
そんなブリヂストンのサステナブルなグローバルモータースポーツ活動を支えていくのが、同社が誇る商品設計基盤技術の『ENLITEN(エンライトン)』。この技術は、3次元形状革新サイプによるパターンブロック挙動の最適化および、最新シミュレーション技術を活用した接地形状最適化により、運動性能とタイヤライフを維持しながら、タイヤに使用する部材を削減。225/40R18インチタイヤでは、従来に比べて約20%の軽量化、転がり抵抗を約30%低減することを可能にした新技術だ。
ブリヂストンはこの“エンライトン”ブランドで、タイトルスポンサーを務めるワールド・ソーラー・チャレンジや、FIAエコ・ラリーカップなどを2023年から支えている。そんなブリヂストンにとって、およそ15年ぶりのグローバルモータースポーツ活動復帰となるのが、2026/27年シーズン13からのフォーミュラEへの単独タイヤ供給となる。
石橋CEOは「ブリヂストンは、これまでと変わらないモータースポーツに懸ける情熱をコアに、サステナブルなグローバルモータースポーツを“EV時代の新たなプレミアム”と位置づけるENLITEN技術で支えるとととも、ビジョンである『サステナブルなソリューションカンパニー』へ向け、モータースポーツを起点にしながら、会社全体をより早く進化させていきます」と語る。
「サステナブルなグローバルモータースポーツ活動強化を通じて、すべてのひとりひとりにとっての『最高』を支え続け、モビリティの未来になくてはならない存在となることを目指していきます」
エンライトンを通じてサステナブルなモータースポーツ活動を行っていくと言うブリヂストンだが、気になるのは、これまでブリヂストンのモータースポーツおよびスポーツタイヤの象徴となっている『POTENZA(ポテンザ)』ブランドの今後だろう。編集部員が質疑応答でモータースポーツでのポテンザブランドの今後について質問すると、フォーミュラEへ供給を考えているブランドと合わせて、石橋CEOは次のように答えた。
「ブリヂストンのブランドにおいて、ご存知のようにポテンザは、まさに運動性能を追求するユーザー向けに製作されたブランドです。四輪モータースポーツにおいても、例えば現在日本で開催されているスーパーGTやスーパー耐久はポテンザブランドを使用しています」
「本日説明したエンライトンは、新たな時代の技術です。そういった意味では、まさに次の時代の“新しいプレミアムブランド”という意味でエンライトンを立ち上げ、そのブランドを使用していこうという風に思っています」
「モータースポーツでは、例えばアメリカのファイアストンなどは地域に合わせていきます。ですが、今後の新しいEV時代のレースについてはエンライトンブランドを使用していこうと思っています。(ブランドの)使い分けは行っていきますが、将来のフォーミュラEにつきましては『ブリヂストン・エンライトン』で供給を行います」
また石橋CEOは、エンライトンは技術ブランドであることから、2024年に登場予定の“レグノ”ブランドの新タイヤはエンライトン技術が投入されることから、将来的には“エンライトン技術を搭載したポテンザ”の登場も「十分に考えられる」と続けた。
そして、ブリヂストンのグローバルモータースポーツ活動において記憶に新しいのが、F1世界選手権の次期タイヤサプライヤーへの入札を行ったことだ。この件については公式発表こそ行われていないものの、10月11日に『FIAおよびFOGの発表を受けてのコメント』と題されたリリースが発表されたとおり、ブリヂストンが次期F1タイヤサプライヤー選定に入札を実施したことは周知の事実となっている。
そのことを問われた石橋CEOは、F1次期タイヤサプライヤー入札に関して「ご存知のとおり、ブリヂストンは過去F1に参戦していました。また、最近のF1は特にサステナブル活動にどんどんと行われており、アメリカではネットフリックスなどでドキュメンタリーが公開されていることで新規ファンを多く掴み、かなりの盛り上がりをみせています。そういった意味で、我々の戦略と合致する部分があったので『挑戦しよう』という結論になりました」と振り返った。
しかし、石橋CEOが「残念ながら今回は選出されませんでした」と続けるとおり、F1は現在タイヤを供給するピレリと2027年(オプション1年)の契約延長を発表。ブリヂストンのF1復帰は叶わなかった。なお石橋CEOは、2027年以降のF1タイヤサプライヤー再挑戦について、現在決定していることはないと語る。
「次のチャンスに向けてどうなるか、ということに関しては、今後のことなので決定していることは何もありません。まずは、今回決定したまさにグローバルモータースポーツであるフォーミュラEへのタイヤ供給に対して、いろいろなリソースを注力していきます」
2023年の国内レースでは、スーパーGTのでは2019年以来4回目となるGT500、GT300両クラスでのチャンピオン獲得、さらに2024年からのオフィシャルタイヤサプライヤーに先駆け、工場火災に見舞われたハンコックに代わり緊急でタイヤ供給を行ったブリヂストン。今後は四輪および二輪のモータースポーツ活動をさらに注力していくとのことで、将来的には世界中のさまざまカテゴリーでブリヂストンのタイヤをみることができそうだ。
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