■跳ね馬の紋章を授かったV8モデル
フェラーリ・オーナーの仲間入りをするために、クラッシック8気筒を探していたカスタマー予備軍にとって、2020年のRMサザビーズによる「オープンロード・・ヨーロピアン・サマー・オークション」は、実に見どころの多いオークションだったに違いない。
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なにしろ1985年の「308クワトロバルボーレ」、1987年の「328GTB」、そして1992年の「348tb」という、ファースト・フェラーリとするには、コストパフォーマンスに優れたモデルが出品されていたからだ。さっそくその概要を紹介していくことにしよう。
●1985年式 フェラーリ「308GTBクワトロバルボーレ」
ピニンファリーナによる優雅なボディを組み合わせた新型8気筒ベルリネッタ、「308GTB」がフェラーリから発表されたのは1975年、パリ・サロンでのことだった。
デザインは、一見すれば「ディーノ246GT」のコンセプトをさらに進化させ、さらなる美しさを得たもののようにも感じられるが、それは紛れもない事実。
だがその場に立ち会った多くのフェラーリ・ファンを興奮させたのは、フロントノーズに横長のディーノではなく、縦長のフェラーリのエンブレムが燦々と光り輝いていたことにほかならなかった。
デビュー当初のディーノから、後にフェラーリへとブランドを変更した「308GT4」のセールスは、予想に反して低迷していたので、フェラーリにとって早期にフルモデルチェンジすることは必要不可欠な課題だった。
ちなみに308の開発プロジェクトのスタートから、ショー・デビューまでの期間はわずかに1年。驚くべき速さで308GTBはデビューを飾ったのだ。
308GTBはその後、1977年にはタルガトップの「GTS」が、また1980年には排出ガス規制の強化に伴いインジェクション化された「308GTBi/GTSi」となり、パワーダウンを余儀なくされるが、1982年には喜ばしいニュースが待っていた。搭載エンジンを4バルブ化した「308GTB/GTSクワトロバルボーレ」の誕生である。
最高出力は、欧州仕様では240psにまで復活し、US仕様でも230psと発表された。前作308GTBi/GTSiの欧州仕様ですら214psだったのだから、クワトロヴァバルボーレが人気の一台になったのも当然だろう。
RMサザビーズはオークション前に、この1985年式308GTBクワトロバルボーレの予想落札価格を5万-7万5000ユーロ(邦貨換算約630-940万円)と発表。
ロッソ・コルサのボディーカラーにベージュのインテリアという、当時のフェラーリとしてはもっとも高価な仕様の308GTBクワトロバルボーレだが、スタート前には燃料漏れの持病があるという。その整備費用等も考慮した結果の落札価格は4万7300ユーロ(同590万円)だった。
■1000万円以下でフェラーリオーナーの扉を開く!
次に注目されたのは、308シリーズの後継車となる「328」だ。出品車は1987年式の328GTBである。
フェラーリが公式に残す記録によれば、328シリーズ・トータルの生産台数は1985年から1989年にかけて7412台。このうちベルリネッタ(クーペ)のGTBは1344台、タルガトップのGTSは6068台と、市場での人気から見ればGTSの方が圧倒的に高いことが分かる。
ただし現在では、その希少性や耐候性からクーペの人気が逆転している。
●1987年式 フェラーリ「328GTB」
328シリーズでは、フレームやサスペンションをはじめ、デビュー時より308から大きく異なるメカニズムが採用されていたが、やはりそのメイントピックといえるのは、新たに排気量が3.2リッターに拡大された、V型8気筒DOHC4バルブエンジンの存在だろう。
さらに高性能なパワースペックを得るためのモディファイも数多く施されており、インテーク側のバルブリフト量の拡大や、吸気ポートのデザイン変更、新型の点火システムの採用などもおこなわれている。
その結果、328用の3.2リッターエンジンが得た最高出力は、欧州仕様で270ps。ただし、日本やアメリカ向けモデルでは、最高出力は260psに絞られていた。
今回のオークションでは、7万-9万ユーロ(邦貨換算約880~1130万円)の予想落札価格に対して、7万5900ユーロ(同950万円)での売買が成立した。
この少々お安く感じてしまう落札価格の原因は、翌1988年モデルでは、サスペンション・セッティングの大幅な見直しや、それまでオプションだったABSの全車標準装備などがおこなわれているからである。それを知るコレクターやマニアは、1988年以降の328を狙っているというわけだ。
しかし、逆に割安感の出てきた、1988年以前のモデルをあえて狙うというのもありだろう。
●1992年式 フェラーリ「348tb」
最後に紹介するのは、それまでの308/328からドラスティックにエクステリアデザインを変化させた、1989年デビューの348tbだ。この348にもベルリネッタのtbと、タルガトップのtsがあり、さらに1993年になるとフルオープンモデルのスパイダーも加わる。
出品車は1992年式の348tb、すなわちベルリネッタだ。
車名の「t」の文字は、搭載されるV型8気筒エンジンに組みあわされる5速MTが、横置きされていることを意味している。
日本では、さまざまなトラブルが発生したためか、あるいはそのような噂が流れたことから、さほど人気のない348シリーズだが、ピニンファリーナのチーフ・スタイリストであったレオナルド・フィオラバンティが最後に残したというデザインは、先に誕生した12気筒モデルのテスタロッサの持つ雰囲気にも似て、実に優雅なものだ。
リヤミッドに縦置き搭載されるエンジンは、3.4リッターに排気量が拡大されたV型8気筒DOHC4バルブで、最高出力は300ps。最高速は275km/hを記録した。
6万-8万ユーロ(邦貨換算約750-1000万円)という、比較的手頃な予想落札価格で出品されたこの348は、新車からの走行距離は1万800kmと少ないものの、助手席ドアミラーや同ドアエッジ、リアバンパーカバーなどにマイナーな修理の跡があり、その部分の再塗装はおこなわれずに出品されている。
こうしたことが理由なのだろう、落札価格は5万2800ユーロ(同660万円)とかなり安い結果となった。ただしこれも、自分でレストアを楽しむには、魅力的な一台といえるのではないだろうか。
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みんなのコメント
348は意外と奮闘しましたね。市場価格が安いのでオークションだと400〜500だと思っていました。