■ハイブリッド車でもモーター式4WDでなく機械式4WDを採用
ホンダはSUVの「CR-V」や「ヴェゼル」などにリアルタイムAWDと呼ばれる4WDシステムを搭載しています。
【画像】雪道走行も何のその!「ヴェゼル」と「CR-V」のたくましい走りを見る(26枚)
2011年にデビューした4代目CR-Vからは、それまでのデュアルポンプ式に代わり、電子制御によるクラッチをつなげることで後輪へトルクを送るシステムに変更。2018年2月の先代ヴェゼルのマイナーチェンジ以降は、制御ロジックを大幅に進化させた新世代タイプとなり、それが現行CR-Vや現行ヴェゼルにも組み込まれています。
同システムのポイントは、走行状況に応じて前後の駆動力配分を最適に調整すること。
アクセル開度、車輪速、選択しているギヤなど基本的なセンサーに加え、新世代タイプではステアリング舵角やヨー(車体が曲がろうとする力の大きさ)の動きなども検知し、クルマの状態をより細かく正確に把握。発進時はアクセルを踏み込んだ瞬間から反応遅れなくリアタイヤにトルクが伝わることで空転を防ぐほか、旋回時は前後トルク配分を最適化してハンドリングも高める制御をおこなうという、賢い4WDシステムです。
そしてもうひとつの特徴は、ハイブリッドでもガソリン車と同様に、後輪をモーター駆動するタイプではなくプロペラシャフトを用いたこのメカニカルな4WDを組み合わせること。
昨今はSUVであっても後輪をモーターに任せるクルマが増えつつありますが、ホンダは「SH-AWD」を除き、モーター駆動の4WDを展開していません。
その理由は、パッケージングと走りを両立することといいます。
CR-Vクラスになると話は変わってきますが、それよりも小さなヴェゼルクラスでは、走りのために求められる後輪のトルクをモーターで発生しようと思うと、大きなモーターが必要となるために荷室が狭くなる(床が高くなる)のは否めません。
コンパクトSUVで力強い駆動力とヴェゼルのライバルに対する大きなアドバンテージとなっている広大な荷室を両立するには、メカニカルな4WDが理想的というわけです。
ちなみに、4WDユニットはCR-Vとヴェゼルで同じものを搭載します。
■同じ4WDシステム採用なのにヴェゼルとCR-Vには走りの違いが
「e:HEV」と呼ぶハイブリッドモデルを雪道で試乗してみると、タイムラグなく後輪へトルクが伝わって滑りやすい上り坂でもスムーズに発信できることからも、電子制御の多板クラッチに後輪への駆動力配分が巧みにおこなわれていることを感じられます。
かつてホンダの4WDは「レスポンスがいまひとつで、前輪がスリップしてからでないとあまり役に立たない」などと言われることもありましたが、それはすっかり過去の話だということを実感しました。
驚いたのは、旋回時の動き。
アクセルを戻してのターンインは、時にはイン側の前輪にブレーキをかけてクルマを曲げていく「アジャイルハンドリングアシスト」も活用しつつ素直にノーズの向きを変え、いっぽう脱出時は駆動力を4輪にしっかり配分することで安定感のある加速と挙動が自然だから安心できるのです。それはCR-Vとヴェゼルの両者に共通する美点でした。
ただし、そこから先の領域が楽しいのはヴェゼルでした。
安定志向のCR-Vに対し、ヴェゼルはアクセルをグッと踏み込むとリアが流れ、VSA(横滑り防止装置のホンダの名称=通称ESC)をカットした状態であれば、カウンターステアを当てつつアグレッシブに走れます。
この挙動はクルマを操る喜びに満ち溢れるもので、腕に覚えのあるドライバーならついつい楽しんでしまうことでしょう。いっぽうでそこまでのドライブテックニックがなければ、VSAをオフにせず、またアクセルを踏み込まなければ安定性の高い走りが得られます。
※ ※ ※
ところで、CR-Vもヴェゼルも同じ駆動系ユニットなのに、操縦性に違いがあるのはどうしてでしょうか。
じつは、制御が異なるのです。
CR-Vの前後トルク配分が、概ね65:35から55:45の間でコントロールするのに対し、制御の世代が新しいヴェゼルでは、概ね60:40から50:50とリアに多めのトルクを配分します。
その違いが、安定に徹するか、時には後輪駆動のような感覚の楽しいハンドリングを実現するかの際になっているというわけです。
もう一度繰り返しますが、安定した走りや安心感はどちらも共通。いっぽうで運転を積極的に楽しむならヴェゼルのほうが魅力的です。
ちなみに両車とも、フロントタイヤが空転した際などは瞬間的に最大40:60までリアタイヤのトルク配分を高めてトラクションを向上させる仕掛けとなっています。
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