スーパーGTの2021年シーズンが始まった。3月6日、7日岡山国際サーキットで公式テストが行なわれ、スバルからは新型BRZ GT300が公式テストに参加した。GT500からは15台、GT300は28台が参加し、そして観客も動員しての開催となった。
2021年シーズンは海外のタイ、マレーシア戦がなく、すべて国内で開催。オートポリス、岡山、鈴鹿、富士、もてぎ、SUGOで開催され、もてぎと富士は2レースが予定されている。そして最終戦は11月最終週に富士スピードウエイの予定となっている。
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開幕戦は例年どおり岡山国際サーキットで4月10日(土)、11日(日)に予定されており、開幕に先駆けて公式テストが行なわれた。
スバル/STIは既報のようにマシンは新型となり、オフシーズンに独自テストを行ない、手応えを掴んでの公式テストとなった。テストは土曜、日曜の2日間行なわれ、午前2時間、午後2時間で合計4セッション。各チームにとって、シーズン幕開けであり、マシンのセットアップと岡山の開幕戦に向けての調整が行なわれる重要な公式テストというわけだ。
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思わぬ重量増でのテスト
SUBARU BRZ GT300は2月に岡山でテストを行なっており、セットアップも概ね掴んでいたので、この日は開幕戦に向けての調整とタイヤ選択という位置づけでテストに臨んだ。
しかし、GTAからBoP(性能調整)+85kgの指示があり、想定していた重量よりも重たい状態でのテストとなった。そのため、メインのタイヤテストに加えて、まずは重量増でのサスペンションのセットアップも必要となった。
ちなみにBoPの85kgは、正確にはBoPが+50kg、特別BoPが+35kgというもので、BRZ GT300のJAF規定である最低重量1150kgに+85kgを搭載し1235kgでのテストとなった。今回の特別BoPは、助手席にウエイトを搭載することが指定され、レースで獲得したポイントによるサクセスウエイト(今季からウエイトハンディの名称が変更)は、50kgまでは助手席に、それ以上のウエイトは、搭載位置自由というルールがある。
また、レギュレーションの変更でBRZ GT300は、燃料タンクが120Lに変更されており、満タンにするとBoPと合わせると、100kgを超える重量でロングランテストをこなすことになった。一方でタンク容量が増えたことは、ピットインのタイミングの幅が広がり、戦略的にはメリットのあるルール変更と考えられる。
一方タイヤは先シーズン、安定した成績を出せるタイプのタイヤが存在し、ダンロップによれば、その実績のあるタイヤの耐久性を上げたタイプを今季は開発してきたという。主に、構造の変更とコンパウンドの変更を行なったもので、今回のテストの中心となるタイヤに位置づけられている。
【Day1午前】高いレベルでマシンはまとまっている
初日のテストはタイヤ特性の見極めを行なう。ドライバーは井口卓人選手。「ダンロップのエンジニアとチームの目指す方向性は一致しているので、持ち込んだタイヤが狙いと一致しているか?ということの確認をしました。タイプがたくさんあるのですが、いいもの、合わないものもありましたけど、良いテストになったと思います。テストは持ち込んだセット数の半分くらいは乗ることができたので、午後は残りをヤマちゃん(山内英輝選手)がテストして、開幕戦で使うタイヤを絞り込むようなプログラムになると思います」
「特に新開発したタイヤは全体的にはいいんですけど、前後のグリップバランスが違ったりするので、クルマで合わせるのか、タイヤを調整するのかわかりませんが、まだ調整は必要という印象でした。また新型のBRZ GT300は基準ができたというか、基本がしっかりあるので、冒険的なテストもできるようになったのも大きいです」
井口選手のコメントのように、10セット近くあるタイヤを持ち込み、岡山の路面μや路面温度への適合などの比較テストも行なったようだ。この日の午前は路面温度で24度、天候は晴れというコンディションで、タイムも1分26秒629でセッション1で2位のタイムだった。ちなみにトップは52号車トヨタGRスープラのさいたまトヨペットだった。
また今季のニューマシンは市販車で言えば、レベルの高いプラットフォームを手に入れたということで、走るサーキットに合わせて自在にセットアップができ、ダウンフォースやドラッグも含め、セットアップに迷いがないという印象を受けた。これも先シーズンまでのノウハウが、今季のニューマシンに投入されたという証拠だ。
午前のテストを終え、小澤総監督は「本戦に向けてタイヤの候補を絞り込んだので、それをベースにロングをやってみる予定です。それぞれの摩耗特性を見ながら、最終的にレースタイヤはどれかを決められればと考えています」
【Day1午後】速いのは間違いない
午後は天候がややくずれ、曇天になり気温もかなり下がっている。路面温度は15度、気温は8度と寒い。そうした中、順調にテストをこなしていたようだ。「クルマはまだ煮詰めたいところや、バランスを変えたいところもありますけど大きな問題ではないので、タイヤテストに集中しました」と山内英輝選手は話す。
「僕が走ったタイヤは、コンパウンドが硬めのものだったので、この路面温度だと正直合わなかったです。テストとしては低い路面温度だとどうなるか、というデータは取れたと思いますけど、僕自身としてはいいコンディションで走りかったですね。でもマッチングの悪いときの感触はつかめました」
これもマシンのポテンシャルが上がったからこそ、振れ幅の広いテストもできたということだ。そうした厳しい状況でも山内選手のタイムは午前より伸びており、1分26秒566で全体4位のタイムだった。各チームがどんなテストをしているのかは憶測になるので、タイムでなにかを判断するのは難しいが、ひとつの参考値になることは間違いない。
早計かもしれないが、これまでのテストを見る限り「速い」のは間違いない。そのあたりを小澤総監督に聞くと「そうですね、タイムはそこそこ出てるし、2位から5位までは団子状態のタイムなので、レースはできるかなぁというレベルにいると思います。85kgの重量増なので2月の岡山テストとは違ったセットアップが必要で、そこもまぁ、おおよそ想定内で対応できた手応えですね」とコメントしている。
この日の午前、午後のセッション合計でもSUBARU BRZ GT300は4位のポジションを獲得していた。
しかしながら気温が下がった影響もあり、予定していたロングランが十分テストできず、翌日へ持ち越しとなった。さらに、本戦に向けての本命タイヤの絞り込み作業も足踏みといった状況になってしまった。
一方、マシンの微調整も必要な箇所が出てきた。今季パワーユニットではタービンを変更し、アクセルのツキを良くする方向に変更している。BRZ GT300 は250rpm刻みで過給圧が決められているレギュレーションに縛られているが、その回転数の中でも立ち上がりがよくなるためのタービンに変更し、それを制御で対応する変更を行なっている。
そのため、ミッションとの協調制御の変更も必要であり、より短い時間でダウンシフトができるような制御変更も煮詰めることになった。こうした変更は想定内ではあるものの、+85kgの重量増はこうした領域にも影響していることも見えてきた。
【Day2午前】ワンランク上になったBRZ GT300
前日にこなせなかったロングランをテストする予定が、この日も路面温度が低い状態となり、テスト条件としては良くない。そうした中、山内選手が午前を走り「新しく開発したタイヤは、タイムは出るんですけど耐摩耗性はもうひとつという印象でした。路面温度が低いですけど、午後は硬いタイヤでロングのテストがいいかな、と思ってます。それだとタイムはでないけど、耐久性勝負みたいなことも考えられるかと。でもやってみないとわからないですね」と話す。
ニュータイヤに期待しているものは一発のタイムではなく、耐久性や摩耗変化による影響の小ささだ。しかし、思うようにテストは進まないものの、この日のタイムも2番手で、昨日よりタイムアップしている。1分26秒190はチームベストだ。結局、午後はロングランテストのチームが多く、このタイムがDay2全体で2位という結果になった。
だが、新型BRZ GT300は、タイムを出すこと、速く走ることといったテーマから脱却していることが伺い知れる。前型BRZでは、タイムを出すために空力の変更やタイヤにかかる接地荷重の変更などをし、さらに最高速を求めたり、コーナリングスピードを求めたりすることもあった。その結果、予選での速さを作り上げることができたと思う。
今季は小澤総監督が狙う、全戦ポイント獲得の目標では、予選タイムの速さよりもレース距離での速さを求めている。この公式テストのタイムから実力を計るのは難しいが、2番手のタイムであるとか、前日よりタイムが伸びたということを歓んでいるメンバーはいない。やはり、小澤総監督のそうした「決勝で速い」という目標がチーム全体に浸透していることを感じる。
【Day2 午後 厳しい現実に遭遇】
いよいよ、最終のセッション。開幕戦で使うタイヤを絞り込む必要となった。ドライバーは井口選手が担当し、徹底的にロングランをして摩耗性を確認していく。同様に他チームもロングランをテストしているだろうチームも多く、井口選手のタイムはこれまでで最も遅い1分27秒176。
さらにセッションの後半では、おそらく本命視していると思われるタイヤは、1分30秒台、29秒台でしか周回できない。ブリヂストンを履く52号車は1分28秒台前半を連発するロングランを見せているので、本戦用タイヤの選択は厳しいものになった。
BoPの85kgを考慮すると、先シーズンのウエイトハンディをフル搭載した時とほぼ同等の重量になってのロングランテストだった。ダンロップのエンジニアも、マシン重量はタイヤへの影響が大きいと話す。人間1.5人分の重さが増えるだけでグリップ性能も摩耗性能にも大きく響くのだと。
一方で、実績のあるタイヤであればリヤ2本交換という戦略は活かせる。一皮むけたBRZ GT300で、どのように戦っていくのか? タイヤ以外の戦略面にも注目したい。特に燃料タンクが120Lになったことで、ドライバー交代をいつにするか、タイヤの摩耗状況を判断しながら、ということが以前よりは幅広い戦略が取れる。
果たして、どんな結果になるのか。開幕戦が待ち遠しい。<レポート高橋明/Akira Takahahi>
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