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クルマはいいんだけどね……なぜ最近の「ホンダ車」にクルマ好きがときめかないのか!?

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クルマはいいんだけどね……なぜ最近の「ホンダ車」にクルマ好きがときめかないのか!?

 VTECやタイプRなどでクルマ好きたちを唸らせていたかつてのホンダ。だが、最近のホンダを見ていると「うーん……悪くはないんだけど、こういうんじゃないんだよなあ……」と、なんだかもどかしく感じることもある。

 クルマ好きはなぜ最近のホンダ車にときめかないのか? 永田恵一が解説する。

クルマはいいんだけどね……なぜ最近の「ホンダ車」にクルマ好きがときめかないのか!?

文/永田恵一、写真/HONDA

■ヴェゼルとシビックタイプRだけ?

2022年9月に発売された新型ホンダ シビックタイプR。2021年4月発売のホンダ ヴェゼル以来の「ときめくホンダ車」だ

 昨年のホンダの日本国内販売は、白いナンバープレートがつく登録乗用車/26万9034台(2021年比98.1%)、軽乗用車/29万8969台(同97.9%)と、堅調だ。また、納期もいろいろな事情があるにせよ、ほとんどの車種が半年以上、1年というモデルも珍しくないと好調なようにも見える。

 しかし、ここ3年ほどで登場したホンダ車で目立ったのは「現行ヴェゼルとシビックタイプRくらい」と感じる人が少なくないかもしれない。

 ここではなぜそんな印象を持つのかを、登場の新しいホンダ車4台を例に考えてみた。

■フィットは「インパクトに欠ける」から

 2020年に登場した4代目モデルとなる現行フィットは、初代モデルから続く「センターランクレイアウトなどを基盤とした、これ1台で充分使える広いコンパクトカー」というコンセプトで開発されたコンパクトカーである。

 現行フィットもキャビン、ラゲッジスペースともに相変わらず広く、Aピラーの大きな三角窓により視界は広く運転はしやすく、価格もリーズナブルと実用を主にコンパクトカーを選ぶなら、いまだその平均点は高い。

 しかし、実によくできたN-BOXをはじめとしたホンダ社内での軽乗用車の影響やクセを感じるスタイルに加え、実用面のイメージが強すぎる、華に欠けるというのも現行フィットにときめかない理由なのではないだろうか。

 それをはじめに思ったのが同時期に登場した現行ヤリスである。広いフィットと前席中心のフィットはコンパクトカーでも若干ジャンルが違うのもあるにせよ、現行ヤリスは狭いけど全体的にスポーティで若々しいイメージを持つ。

 また、現行ヤリスは実用燃費30km/Lも夢ではない1.5Lハイブリッドの搭載(現行フィットe:HEVとの燃費の差はスペースで納得できる範囲ではある)、賢く使いやすい自動駐車、登場時は現行フィットより優勢だった安全&運転視点システムなど、興味を引く装備、機能が多数ある。

 このあたりが、現行フィットのほうが売れそうなコンパクトカーでありながら、登場時から現行フィットの販売が伸び悩んでいる原因のひとつに感じる。

■ヤリス、ノートに比べて伸び悩むフィット

2022年10月のマイナーチェンジと同時に設定されたホンダ フィットRS。トヨタ ヤリスや日産 ノートに比べて伸び悩むフィットへのテコ入れを狙って追加された

 次に2020年11月登場の現行ノートは、ハイブリッドのe-POWER専用車となるフィットに近いコンパクトカーだ。

 現行ノートはLEDヘッドライトなど欲しい装備をオプション装着すると現行フィットより高く、燃費も現行フィットハイブリッドに対しやや劣勢だ。しかし、先代モデル同様にe-POWERのレスポンスに優れ、電動感溢れる現行ノートの加速感のインパクトは強い。

 また、現行ノートは標準車、高級なオーラ、スポーティなオーラNISMOと意義あるバリエーションを揃える点も強みだ。

 という状況の打開のため、現行フィットはスポーティなRSの追加、ガソリン車の1.3Lから1.5Lへの変更を中心としたマイナーチェンジを2022年秋に行った。

 マイナーチェンジされた現行フィットは、RSはほどよくスポーティで、RS含め価格も依然リーズナブルだ。

 しかし、RSを見るとハイブリッド同士だとノートオーラNISMOは291万円とフィットRSに対し60万円近く高いが、趣味性の強いスポーツモデルだとパワフルで電動感の強いノートオーラNISMOの競争力も高い。

 また、1.5LガソリンのRSもMTが欲しかったのに加え、スペースを考えなければ依然スイフトスポーツの魅力は鉄板なのに加え、MTのヤリス1.5Lガソリンも150万円台のXグレードをカスタマイズのベースにするというマニアックな面白さがある。

 といったことを考えると現行フィットRSもちょっとインパクトに欠け、今後の現行フィットの大幅な巻き返しは難しいように感じる。

■ライバルと比較してインパクト不足が否めないステップワゴン

2022年5月登場の新型ホンダ ステップワゴン

 昨年登場した現行ステップワゴンも現行フィットに似たところを強く感じる。現行ステップワゴンも3列目シートを床下収納としたことで3列目シートも快適で、運転すればしなやかないいクルマである。

 しかし、20年以上前の2代目ステップワゴンを思い出させるスタイルは今さら感を含め「ウーン」という人も少なくないだろう。

 また、同時期に登場した現行ノアと比べると、乗り味はビシッとした現行ノアとしなやかな現行ステップワゴンという印象で、この点は好みの範囲といえる。

 だが、現行ノアは跳ね上げ式の3列目シートを生かした2列目キャプテンシートの超ロングスライドや、使い勝手に配慮した2列目の2人掛けベンチシートを設定。

 ほかにも、スイッチを側面に付けた電動バックドア、スマホを使うと車外からも操作できる自動駐車、渋滞中なら手放しもOKな運転視点システムなどなど、考えずに欲しいオプションは付けていくと高価にせよ、目を引く、華のある機能や装備が満載だ。

 といったあたりに現行ステップワゴンも現行フィット同様の、ライバルと比べた際のインパクトの弱さを感じてしまう。

■タイプR以外のシビックは「価格が高い」

2021年8月登場のホンダ シビック

 2021年に登場した現行シビックはタイプR以外も乗ると非常にガッチリ感があり、1.5LガソリンターボのMTのフィーリングは良好、ハイブリッドのe:HEVも強いエンジンの存在感を感じさせてくれるいいクルマである。

 しかし、フル装備とはいえ1.5Lガソリンターボが319万円から、e:HEVが394万200円という価格は、車格に対して躊躇してしまう人が多いのではないだろうか。

 比べてみると、ボディタイプの違いなどもあるが2Lガソリンのカローラスポーツの最上級グレードとなるG”Z”は264万円とだいぶ安い。

 ハイブリッド同士でも、万人向けではないにせよスタイルなどに強いインパクトを持つ2Lの現行プリウスZは370万円、バランス型の1.8LハイブリッドもKINTOのみの扱いながらアップデートなどの特典があるUが299万円だ。

 カローラスポーツや現行プリウスとの価格差を見ると、今後ファン以外はシビックを買いにくいのではないだろうか。

■ZR-Vの「思い切った」価格設定はライバルと戦えるのか?

2022年11月に発表されたホンダ ZR-V。2023年4月登場予定

 シビックのSUV的存在となるZR-Vもスタイルにクセはあるが、シビック同様にいいクルマだ。

 だが、乗り味などZR-Vに届かないところはいくつかあるが、直接的なライバル車でSUVらしい雰囲気を持つカローラクロスの最上級グレードとなるハイブリッドZはディスプレイオーディオ付で299万円(FF)だ。

 ZR-V e:HEV XのFF/329万8900円(実際にはさらに何らかのモニターが必要)はシビックe:HEVを基準にすると頑張っているにせよ、やはり高い。

 また、カローラクロスにはさらに安いグレードもあり、燃費や動力性能の魅力は薄いものの、クロストレックの最上級グレードとなるリミテッドは4WDで328万9000円(ディスプレイオーディオ付き)とZR-Vと迷える範囲にあり、ZR-Vも長期的に見るとファン以外は買いにくくなりそうに感じる。

■結論

ホンダ N-VANをベースとした軽商用EV(プロトタイプ)。2024年登場予定

 最近のホンダ車にこういったクルマが多いのは、筆者が考えるホンダらしさが薄くなっているためではないかと思う。

 「ホンダらしい」という実に抽象的な言葉には人それぞれVTEC、タイプR、F1など、いろいろな想いがあるだろう。筆者個人はホンダらしさを「こういうものがあるのか! こういうのが欲しかったんだ! という商品を、庶民が買える価格(300万円がひとつの目安だろうか)で提供すること」と定義している。

 という意味ではバブル崩壊後のピンチを救ったクリエイティブムーバーシリーズのオデッセイ、CR-V、ステップワゴンの初代モデル、「庶民が買えるタイプR」だった初代インテグラタイプRや初代フィットはまさしくそうだった。

 言い換えるなら、やはりホンダ車には多少なら弱点があってもいいから強いインパクトや明るさ、若々しさ、攻めの姿勢が欲しいということである。

 最近は特にトヨタ車にホンダらしさのようなものを感じることが増えており、この傾向はナンバー1ではないホンダのポジションなどを含め、ホンダとしていいのか? と感じる。

 もし、アグレッシブ路線以外でというのであれば、現行N-BOXのように圧倒的に出来のいいクルマで対抗するという作戦もあるにせよ、そういったクルマを出し続けるのは難しいだろう。

 と言ったことを考えると、現在の供給不足が終わった時にホンダの国内販売がどうなっているかはちょっと心配だ。

 しかし、今後のホンダを見るとホンダらしさを感じる100万円台からの価格となるN-VANのEV版が2024年に登場する。

 また、ホンダ社内での地域分けが北米、中国、日本を含めた北米と中国以外の3地域となったことで、日本にも新興国向けのモデルなどが導入されやすくなりそうな雰囲気もあり、ホンダがホンダらしさを取り戻してくれることを大いに期待したい。

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みんなのコメント

347件
  • 明らかな日本市場の捨て感。

    ホンダ好きは、アジア市場の小型車や、欧米市場のセダンやスポーツ車を知っている。
    オデッセイを買う訳ではないが、オデッセイすら売らなくなった(売る努力をやめた)と受け取られたのだよ。
  • 高い。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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