高齢者の運転操作ミスによる交通事故が後を絶たないなか、運転免許の自主返納をおこなう人が増加しています。その一方、自主返納を受け付ける現場レベルでは混乱も生じており、自主返納の手続きをおこなった人からは不満の声も聞かれます。
はたして、免許返納の現場では、なにが起きているのでしょうか。
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運転免許返納時にはどのような手続きをおこなうことになるのか 池袋で起きた高齢ドライバーによる交通事故によって、より多くの人に知られることになった運転免許の自主返納制度ですが、制度自体は1998年に始まっているものです。
警察庁によると、運転免許の申請取り消し(自主返納)がおこなわれた件数は制度の導入以降増加を続け、2017年には過去最高となる42万3800件に達しました。2018年は42万1190件と微減しています。
自主返納した人の運転経歴を証明する「運転経歴証明書」の交付制度も2002年に始まっていますが、運転経歴証明書の交付件数も2017年に36万6696件とピークに達し、翌2018年は35万8740件となりました。
2019年は高齢ドライバーによる交通事故の増加がマスメディアで大きく取り上げられたこともあり、自主返納や運転経歴証明書交付の件数も再び増加に転じることが予想されます。
その一方で、運転免許の自主返納を受け付ける現場の対応に、一部から不満の声が挙がっています。
実際に、親が運転免許の自主返納をおこなったばかりであるという女性に話を聞いたところ、次のように話します。
「私の母は、2019年6月末に運転免許を自主返納しました。返納すると決めた理由は、高齢ドライバーによる事故がマスメディアで盛んに報道されるなかで、本人に『次は私が事故を起こすのではないか』という心配が芽生えたからだそうです。
返納の手続き自体は本人がおこないましたが、本人だけでは不安もあったので付き添いました」
返納手続きをおこなった際に、その女性はあることに驚いたといいます。
「単純に免許を返すだけ、という気持ちで向かったのですが、手続きにとても時間がかかりました。すべての手続きが完了するまで1時間以上待たされたと記憶しています」
※ ※ ※
返納を受け付ける現場では、どのような手続きがおこなわれているのでしょうか。ある運転免許更新センター(以下、免許センター)の担当者は、次のように説明します。
「運転免許の自主返納と運転経歴証明書の交付を同時に申請する際には、返納する免許証と6か月以内に撮影した証明写真が必要です(地域によっては印鑑などが必要な場合もあり)。代理人による申請の場合は、代理人の身分証と委任状も必要となります。
手続きにかかる時間は、日によって変動もありますが、運転経歴証明書の発行も含めると最大で2時間ほどかかる場合があります。日曜日は比較的混雑しているほか、平日は朝一番の時間帯が混雑しやすいです。
運転経歴証明書の手数料(東京都では1100円)を支払う窓口が、運転免許更新の手数料支払いをおこなう窓口も兼ねているので、運転免許の更新が混雑すると返納の待ち時間も長くなる傾向です」
現状では運転経歴証明書の発行まで含めると、免許の返納に半日弱程度は必要となります。自主返納をおこなう人には高齢者が多いことから、長時間の外出による身体への負担は決して軽視できません。
運転免許返納時に職員が発した言葉とは? 運転免許の自主返納を受け付ける現場において、一部では職員の理解不足な言動も問題視されています。
運転免許返納をおこなった高齢者が苦しむことがあってはならない 親が運転免許の自主返納をおこなった前出の女性は、手続きをした際に職員から受けた言動について、次のように振り返ります。
「自主返納は警察署でもおこなうことができると聞いていたので、まず警察署へ向かいました。
しかしそこで『いまは人手が足りないから時間がかかります』と、免許センターに移動してもらいたいことをほのめかすような発言を受けました。不快に感じたので、免許センターで手続きをおこないました」
女性が違和感を覚えたのは、警察署での出来事だけではありません。
「免許センターでも、職員から手続き時に『運転免許の期限があと1年以上も残っていますが、手続きを進めても大丈夫ですか』と、必要のない質問を受けました。こちらは、免許を返納する意思を固めたから訪れているのですが。
善意もあってそのように質問されたのは理解できますが、ぞんざいに扱われたので、その日は母だけでなく私も心身ともに疲れきってしまいました」
※ ※ ※
女性は、運転免許を手放した親はこれからタクシー移動が主になるだろう、と話しています。移動手段として、タクシーのほかに便利なものはあるのでしょうか。
JAFは、運転免許を返納した後に利便性の高い移動手段として、次のようなものを挙げています。
「路線バスや地下鉄などが、一定期間無料で乗り降りできるシルバーパスを満70歳以上の高齢者に発行している地域もあります。
地域によっては『コミュニティバス』と呼ばれる循環バスを走らせている自治体もありますので、お住まいの市区町村窓口で確認してみましょう。
『セニアカー』と呼ばれる電動クルマいすも販売されています。セニアカーは運転免許証を必要としないため、免許を返納した後でも運転することができます。最高速度は6km/hと早歩き程度で、歩行者と同じ扱いとされています」
※ ※ ※
地域によっては運転経歴証明書による特典も用意されており、それによって割安にタクシーなどを利用することも可能です。
一例を挙げると、警視庁が管轄する東京都内においては、65歳以上の人を対象に、特定のタクシー会社の乗車料金が10%割引されるなどの特典があります。
しかし、このような特典を用意したとしても、クルマを手放した高齢者にとって移動に制限がかかるという事実は変わりません。
一念発起して運転免許の自主返納をおこなった高齢者が、不当な扱いを受けることのないよう、自主返納を受け付ける現場の対応から、返納後の移動手段の確保にいたるまで、さまざまな場面で手厚い対応をおこなうことが求められています。
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