優等生がいきなり豹変!? ジキルとハイドないい意味でヤバかったクルマとは
自動車ライターという仕事柄、これまでに沢山の新型車を試乗してきたが、いい意味で強烈な印象を残してくれたヤバいクルマがある。それはスターレットやミラージュ、シビックなどのいわゆるホットハッチから、FC3S型RX-7や70スープラなどが登場した’80年代にもヤバいクルマは沢山あった。だが、ここでは’90年代以降にデビューした度肝を抜く高性能ぶりが際立った3モデルに加えて、素晴らしいクルマだったけどクセが強すぎた2モデルを紹介しよう。
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アンダーステアとは無縁のコーナリングマシン
「ホンダ・インテグラタイプR/DC2型/1995年発売」
とにかく衝撃的だったのがDC2型インテグラタイプRだ。ホンダのタイプRとしてはNSXに続いての登場となった初代インテグラタイプRは、それまでのVTECエンジン搭載モデルとはまったくの別物で、これほど気持ちよく曲がるFF車は初めてであり、アンダーステアとは無縁であった。エンジンはとにかく気持ちよく吹き上がり、運転していてとにかく飽きることなく、あまりの楽しさに一晩中都心を走り回ったことを覚えている。
ある意味で暴力的になるB18C型96spec.Rエンジン(最高出力200ps/8000rpm、最大トルク18.5kg-m/7500rpm)を搭載。8000rpmまで一気に吹き上がるエンジンと、ハイスピード時に性能を発揮するサスペンションはただただコーナーを攻めるだけで楽しく、ホンダがタイプRに注ぎ込んだ本気の賜であった。
コーナリング時の横Gすらも気持ちよかった!
「マツダRX-7タイプRZ/FD3S型/1992年発売」
続いてはマツダのFD3S型RX-7タイプRZだ。このクルマの印象は2シーターのスパルタンさと、試乗中に出血したことが忘れられない思い出になっている。試乗から帰ってきて気が付いたのだが、臀部の皮がめくれてしまい少量だが出血していのだ。理由は強烈な横Gで少し身体が浮いたときにできたのだろう。
こんな経験は後にも先にも初めてで、とにかく切れ味が鋭すぎるハンドリングが素晴らしかった。ただ、誤解されたくないのは攻めた走りを追求したワケでなく、レカロ社と共同開発したフルバケットシートが標準装備されていたのだが、それでも身体を支えきれないほど鋭い運動性能を持ち合わせていた。
第二世代のエボとして生まれ変わりAYCも初搭載
「三菱ランサーエボリューションIV/CN9A型/1996年発売」
第一世代のランエボ(I~III)から大幅に進化したランエボIVも強烈なインパクトを残したくれたモデルだ。筆者はランエボIIIのオーナーであったのだが、その進化ぶりには自分の愛車との違いに嫉妬したほど。また、プロドライバーによるテスト走行で高速周回路を走らせても、パワフルさを失うことがない冷却性能の高さも誇っていたし、ランサーのモデルチェンジにともないランエボIIIから内外装を大きく刷新。
エンジン搭載位置の変更やAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)の採用によって、リヤの駆動力が大幅に高められるなど、ランエボがあることを前提に作られたモデルであったことからその進化の幅に驚きを隠せなかった。
本気で走らないと叱責されるじゃじゃ馬
「ホンダS2000/AP1型/1999年発売」
ここからはじゃじゃ馬ぶりも強烈だったモデルをお届けしよう。それがホンダのFRオープン2シーターモデルのS2000だ。なかでも初期モデルのAP1型は、2Lながら最高出力250psを8300rpmで発揮(レブリミットは9000rpm)するF20C型エンジンを搭載。クルマとしての性能はどこもかしこも素晴らしいと評価できるものであったが、とにかく運転手の怠慢な運転を許容してくれないクルマだった。
筆者は当時、E46型M3と初代ロードスターを所有していたのだが、この両車の良いところをひとつにしたようなS2000に過大な期待を寄せてしまったことが間違いだったのか、残念ながら人馬一体になれなかった。それは筆者の運転スキルの問題もあったのかもしれないが、S2000はアクセルの踏み方やステアリングの切り方まで指示してくるような、ドライバーよりクルマのほうが上位な印象。市街地では大人しい優等生だったが、ワインディングを走らせると「このヘタレ! アクセルは床まで踏めよ!」とか「なんでシフトアップするんだよ」、「違うだろう、曲がるときはこうステアリングを切れよ」と叱られているようなクルマであった。
エンジンレスポンスからスタビリティまで乗用車のソレではなく、レーシングカーを走らせているようであり、ヘタな操作に対して終始怒られているような強迫観念に駆られて運転させられていた。
しかしAP2型の最終仕様で2.2L化されたタイプSを試乗してみると「これは欲しい!」となるのだから面白い。初期型の気難しさは感じさせず、自分の好きなように走れる万能性は素晴らしく、ホンダのFRスポーツは安泰だと感じた。エアロは少々派手に感じたものの、現在でもこのタイプSを見かけると、オーナーの方が羨ましく思えるほどだ。
悪魔的なミッドシップ軽カースポーツ
「オートザムAZ-1/PG6SA型/1992年発売」
最後はオートザムAZ-1。この愛らしいデザインのミドシップ軽カースポーツは、さまざまなメディアで指摘されているとおり、高速走行に技量が求められるクルマだった。雨の日の首都高は怖くて流れに乗るのが精一杯だったし、普通に走らせる場面では問題はないのだが、道路の微妙なアンジュレーション(波打を打ったようなうねりのある路面)でも挙動が変化し、時間がない撮影中の移動などで神経をすり減らしながら走らせたことを覚えている。
見た目は可愛いのにガルウィングドアを持ち、720kgの軽量ボディでパワフルなF6A型インタークーラーターボエンジンは自主規制いっぱいの最高出力64psを発揮(64psでは収まってなかったとの都市伝説も語られているが……)。要求される技量はやはり当時のスーパーカー級と言えるほどで、おそらくチューニング次第では2Lターボ車もカモれる実力の持ち主だった。
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