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トランプ関税は「脅し」なのか? メキシコ25%関税発動でトヨタ・日産・ホンダに迫るサプライチェーン危機、日本企業が警戒すべき戦略的リスクとは

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トランプ関税は「脅し」なのか? メキシコ25%関税発動でトヨタ・日産・ホンダに迫るサプライチェーン危機、日本企業が警戒すべき戦略的リスクとは

トランプ再選で関税懸念

 トランプが圧勝した米国大統領選挙から1か月が経ち、政権の発足まであと1か月となった。

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 正直なところ、日本企業の関係者の間では、バイデン大統領の方針を引き継ぐハリス氏の勝利を期待する声が多かった。しかし、トランプ氏が勝利したことで、現在はどのように対応すべきかを模索している状況だ。

 企業が直面する地政学的リスクについて研究やコンサルティングを行っている筆者(和田大樹、外交・安全保障研究者)として、企業関係者が最も強く抱いている懸念はやはり

「関税」

だと感じている。

報復関税と貿易摩擦、企業への影響

 トランプ氏は政権1期目の2018年以降、米国の対中貿易赤字を解消するため、

「計3700億ドル」(約57兆2250億円)

相当の中国製品に最大25%の関税を課す制裁措置を4回実施した。

 これに対し、中国は米国製品、特に農産物や液化天然ガスに報復関税を導入し、両国の間で貿易摩擦が激化した。この影響は日本企業にも大きな波紋を呼んだ。

 また、トランプ氏は選挙戦の最中にも、中国からのすべての輸入品に60%の関税を課す意向を示し、他の諸外国からの製品には10%から20%の関税を導入するとも主張した。

 具体的な関税率は異なるが、大統領選後には就任初日から中国製品に10%の追加関税を、カナダとメキシコからの全輸入品には

「25%」

の関税を課す方針を発表している。

メキシコ製品25%関税の影響

 現時点では、トランプ氏は日本からの輸入品に対する関税引き上げなど、直接日本をターゲットにした措置を発表していない。しかし、日本企業のなかには中国で製品を作り、それを米国へ輸出している企業もあり、こうした企業は

「中国製品」

として10%の追加関税を受けることになる。

 また、メキシコで製品を作り、それを米国に輸出している日本企業は25%の関税に直面することになる。

・トヨタ自動車
・日産自動車
・ホンダ

などの大手自動車メーカーはメキシコで新車を製造し、その多くを米国へ輸出しているため、米国への輸出においてはサプライチェーンの変革が起こる可能性がある。いずれにせよ、日本企業は今後4年間、予測が難しいトランプ関税の動向を注視しながらビジネスを続けていく必要がある。

 実際、筆者の周りの日本企業関係者のなかでは、トランプ関税の標的になるリスクを回避するために、米国内でのビジネス強化を図ったり、米国向けの輸出依存を減らしたり、第三国市場へのシフトを進めたりするなど、リスク分散に取り組む動きが見られる。

トランプ流関税戦略の実態

 日本企業は、トランプ関税の「もうひとつの側面」にも注意を払う必要がある。ひとつは実際に発動される関税そのもので、もうひとつは

「脅しとしての関税」

だ。トランプ氏は「米国第一主義」を掲げ、同盟国や貿易相手国から最大限の利益や譲歩を引き出すことを目的としている。そのため、他国の負担による影響を最小限に抑え、米国の経済的繁栄と安全・平和を維持し、それをさらに発展させようとしている。

 トランプ氏が主に使用する手段は関税だ。1期目の政権では、米中貿易赤字を是正するため、安価な中国製品から米国企業を守るための武器として関税を導入した。しかし、関税は中国に対して譲歩や妥協を引き出す目的もあったと考えられる。

 例えば、トランプ氏は以前、メキシコから輸入される自動車に200%の関税を課す意向を示したが、これはメキシコで自動車を生産し、それを米国に輸出する中国の自動車メーカーを意識したもので、高関税をちらつかせて中国を

「政治的に牽制する狙い」

があったと見られる。また、中国が台湾に侵攻すれば、最大200%の関税を掛けると示唆したことも、その一環だろう。

トランプ関税の実現可能性と影響

 トランプ氏の関税政策は、米国と対立する国々だけを対象にしているわけではない。

 例えば、トランプ氏はNATO加盟国や日本などの同盟国が、GDP比で防衛費を3%に満たしていないことに強い不満を抱いており、米国がその分を肩代わりしているとしている。このため、同盟国を安全保障の

「フリーライダー」

と見なしている。今後、トランプ氏は防衛や安全保障に関する議論のなかで、同盟国に防衛費の増額を要求する可能性が高い。その際、脅しの手段として高関税を示唆するなどし、譲歩を引き出そうとすることが予想される。同盟国との首脳会談前に、関税をちらつかせて防衛費の増額を実行させる戦略を練っているかもしれない。

 企業目線で見ると、脅しのトランプ関税の実現可能性はそれほど高くないということになる。これまでにトランプ氏は、中国製品に60%の関税、メキシコからの輸入車に200%の関税を示唆してきたが、現時点ではこれらの数字はあくまで脅しに過ぎない。

 トランプ関税は単なる関税であるだけでなく、諸外国から譲歩や利益を引き出すための手段でもあるため、企業関係者はトランプ氏が示唆した関税率をそのまま受け入れるのではなく、その背後にある政治や安全保障の意図を理解し、冷静に実現可能性を判断することが重要だ。

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みんなのコメント

3件
  • ked********
    脅しと言うのはここぞという時に使うもので、乱発するものではないと思います

    実際この記事でも
    >米国向けの輸出依存を減らしたり、第三国市場へのシフトを進めたりするなど、>リスク分散に取り組む動きが見られる

    脅しが実現しようがしまいが、リスクがあるなら皆逃げてしまうわけで
    却って損をするだけです
  • rob********
    脅しです。
    実際に全てに「関税」をかけて損をするのは「国民」ですから。得をするのは「米国政府」です。
    これで米国の就業者が喜ぶかと言えば、それは無いでしょう。単純に物価が騰がるだけなのですから。そもそも今の米国民の不満は「物価高」なのです。
    中国からの安い商品が米国産業に圧力をかけてる訳じゃない。中国製EVの米国での新車販売シェアは0.3%しかありません。3%では無いのです。
    これに振り回されるような企業は失敗しかしません。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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