販売台数データを基に、発売から1年・2年が経ち想定より売れたクルマ・売れていないクルマで注目の車両6台をピックアップ。その「現在地」を自動車評論家 渡辺陽一郎氏に分析してもらった。
発売後大ヒットしたRAV4やライズは記憶に新しいが、その後どうなったのか? 興味深いデータが揃った。
ハリアーに食われて落ち込んでいた!? RAV4がまた堅調に売れている理由は?
●ラインナップ
・トヨタ ライズ
・ホンダ フィット
・トヨタ カローラ
・トヨタ RAV4
・マツダ マツダ3
・マツダ CX-30
※本稿は2021年5月のものです
文/渡辺陽一郎氏 写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』 2021年6月10日号
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■想定より売れた!! トヨタ ライズ
2019年11月に発売され、2020年は絶好調に売れた。2020年1~6月は小型/普通車の登録台数1位、通年でもヤリスシリーズに続く2位だ。
コンパクトカーとSUVは人気のジャンル。その両方の特性を併せ持ち、価格は割安で、フロントマスクには悪路向けのSUVに似た野性味が伴う。
RAV4が注目されるなど、SUVが原点回帰を強める傾向にも沿っており、ライズは市場に受け入れられ大ヒットした。
現在は、2020年8月に内なるライバル、ヤリスクロスが発売され、こちらが登録台数を伸ばしたことが影響し、販売台数は落ち着いてきている。
2020年は絶好調だったライズ。発売当初は納車まで4~5カ月待ちになるなど、想定以上の人気を獲得
トヨタ ライズの売上推移
■想定より売れてない?? ホンダ フィット
2020年の登録台数は前年の1.3倍だが、1カ月平均は8184台で、1カ月当たり1万台の販売計画を下回る。
販売計画は生産終了までの平均値だから、コロナ禍の影響を考えても、発売された翌年の登録台数が販売計画の82%に留まるのは辛い。2021年1~3月の1カ月平均も決算期の3月を含んで6967台だ。
フィットは後席や荷室が広く、現行型は乗り心地、走行安定性、視界も向上させた。
2021年1~3月の1カ月平均が約1万台のヤリス(ヤリスクロスは除く)と比べても商品力は高い。
N-BOXの絶好調な売れゆきが、フィットの販売に悪影響を与えている。
充分売れているように見えるが、クルマの評価の高さ、目標を考えるともっと売れるべきクルマ。N-BOXの影響を受けているわけだ
ホンダ フィットの売上推移
■セダンはイマイチだけど トヨタ カローラ セダン/ツーリング
カローラスポーツから1年遅れ、2019年9月に発売されたセダンとツーリング。
セダンは1カ月の平均販売台数は1344台で、セダン市場ではクラウンの1848台に次いで多いのだが、セダンカテゴリー自体が輝きを失い、かつてベストセラーだったカローラの売れゆきまで下げてしまった。
ワゴンのツーリングは販売好調。
国内にはレヴォーグ、マツダ6あたりしか競合がなく、価格も手頃で、ちょうどいいサイズのツーリングが市場に受け入れられた。
新型カローラ3車種のうち、50%以上をツーリングが占めている。
ステーションワゴン市場は縮小してしまっているが、カローラツーリングは好調な売れゆきだ
トヨタ カローラセダン/ツーリングの売上推移
■想定より売れた!! トヨタ RAV4
現行の5代目は開発段階では国内販売を考えておらず、国内発売時はサイズが大きいことが懸念されていたが、SUVの人気の高まりもあり、予想以上の大ヒットを記録。
登録台数は2019年7月に8000台を超えた。トップクラスではないが、SUVのカテゴリーでは1位になった。
RAV4の外観は悪路向けのSUVを連想させ、後輪左右の駆動力配分を積極的に変化させる機能など、走行性能を向上させるメカニズムも搭載。
最近のSUVには都会的な車種が増えたこともあり、RAV4の個性が際立ったことが人気に火を付けた。
ただし、2020年に入ると需要が伸び悩んだ。2020年6月にはRAV4とプラットフォームが共通の現行ハリアーを発売。
RAV4は需要を奪われて売れゆきをさらに下げたのだが、それでも2021年には下降傾向が収まり、中堅水準で安定して売れ続けている。
ハリアーに比べて価格が割安なことも堅調の理由だ。
トヨタ RAV4。ワイルドな見た目、4WD性能の高さ、価格の手頃さが合わさり大ヒット。ハリアーの登場で多少落ちたが、今は堅調に売れ続けている
トヨタ RAV4の売上推移
■こんなもんでしょうか? マツダ マツダ3&CX-30
マツダ3は2020年における1カ月平均の登録台数が1601台、CX-30は2251台だった。
両車はプラットフォームなどが共通だから、ヤリス&ヤリスクロスのように登録台数を合計すると3852台だ。相応の数値になる。
2019年の発売時点では、1カ月平均の販売計画をマツダ3は2000台、CX-30は2500台としていた。が、発売の翌年には早くも販売計画を下回っている。
低迷の理由は、ほかのマツダ車と同じく、どれも似た商品に見えることだ。
特にCX-30は全高を1540mmに抑えたから、立体駐車場を利用しやすい反面、外観がマツダ3に似ている。
MX-30もほぼ同じサイズで、CX-3も近い。しかもこれらの車種はすべて後席と荷室が狭く需要を食い合った。
CX-30は車内をもう少し広げてファミリー層に対応する必要があった。
従って2021年2~3月のCX-30の登録台数は、2016年に登場したCX-5に抜かれた。
マツダのミドルサイズ以下はどれも似ているため、需要を食い合ってるのが低迷の要因だ
マツダ マツダ3&CX-30の売上推移
* * *
新型車が登場するにつれ、相対的に古いクルマの評価は下がっていく。
ベストカーは今後も新型車と人気車の比較を行っていくので、常に最新の評価をチェックしてほしい。
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