オーストラリア大陸を代表する人気ツーリングカー選手権、VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーが立ち上げた全10戦のeスポーツ・シリーズ『Supercars All Star Eseries』の開幕戦が実施され、現実世界で連覇中のディフェンディングチャンピオン、スコット・マクローリンがフィリップアイランド、モンツァと貫禄の連勝劇を飾った。
ほんの数夜前に北米インディカー・シリーズで“仮想レースデビュー”し、その『Indycar iRacing Challenge』でいきなりのデビューウインを飾ったマクローリンは、同じくiRacingのプラットフォームを採用したVASC公式ヴァーチャル戦のラウンド1でも3戦中2勝を挙げ、現実世界と同じくライバル勢を打ちのめす速さを披露した。
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今回の『Supercars All Star Eseries』開幕戦に設定されたのは、惜しまれつつも2020年のVASCカレンダーから外れていたフィリップアイランドと、イタリアが誇る世界最高峰の高速サーキット、モンツァの2カ所。前者でのダブルヘッダーを経て、一行は“スーパーカー初走行”となるモンツァでのレースに挑んだ。
シリーズレギュラー勢がエントリーした9ラップ・スプリントのレース1は、Erebus Motorsportのアントン・デ・パスカーレ(ホールデン・コモドアZB)がポールシッターでのグリーンフラッグとなり、背後には2016年王者のSVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)と、DJR Team Penskeのエース、マクローリン(フォード・マスタング)が並んで1コーナーへと向かっていった。
するとセカンドロウから好発進を決めたマクローリンが1コーナーで軽い接触を伴いながらマスタングのノーズをねじ込むと、後続のバトルにも助けられ早々に首位浮上に成功。一方、このコンタクトで失速したパスカーレは4番手に後退し、代わってマクローリンのチームメイトであるファビアン・クルサード(フォード・マスタング)が2番手に上がり、DJR Team Penske勢が早くもワン・ツー体制を築く。
その後、王者マクローリンはチームメイトに対してもセーフティマージンを築きはじめ、9ラップのスプリント勝負ではまったくオーダーが変わる気配はなし。仮想バーバー・モータースポーツパークでのレースを制した先の週末と同じく『Supercars All Star Eseries』初代勝者の称号を得ることとなった。
2位のクルサードに続き、3位表彰台にはTickford Racingのキャメロン・ウォーターズ(フォード・マスタング)、4位にアンドレ・ハイムガートナー(フォード・マスタング)が入り、現実シリーズでの戦力を反映するかのように駿馬マスタング勢がトップ4を独占するリザルトに。
ホールデン最上位は5位のジェイク・コステッキ(ホールデン・コモドアZB/Matt Stone Racing)となりSVGは6位、パスカーレは8位に終わった。
■レース2は劇的な決着となったものの……?
ふたたびフィリップアイランドで行われた夜のレース2は、リバースグリッドの全16ラップに加えてピットストップが義務付けられると、接触バトルと戦略違いが交錯する混沌とした展開に。
序盤はTickford Racingのジャック・ルブローク(フォード・マスタング)が後方で多発したインシデントにも助けられ隊列を率いると、周囲の接触やスピンをかいくぐったマクローリンとパスカーレが早めのピットストップ戦略で上位に浮上してくる。
その3台に挟まれる形でWalkinshaw Andretti Unitedのブライス・フルウッド、チャズ・モスタート(ホールデン・コモドアZB)の2台を含む上位勢がファイナルラップへ向かうと、2番手のパスカーレが首位ルブロークにアタックを仕掛け、2台は最終セクターで接触を繰り返しながらのバトルを展開。
最終コーナーでマスタングのリヤを突いたパスカーレのホールデンは、ワイドランになったルブロークのマスタングをかわしてホームストレートを立ち上がり、トップチェッカーを受ける劇的な決着となった。
しかし、この『Supercars All Star Eseries』でドライビング・スタンダード・オブザーバーを務めるクレイグ・ベアードは、レース終盤の接触に対して30秒加算のペナルティを課しルブロークが勝利を奪還。2位モスタート、3位マクローリンに表彰台が転がり込んだ。
そしてこの夜、最後のレースがモンツァのグランプリサーキットへ移ると、19周の決勝を前に雪辱を期すパスカーレが2度目のポールポジションを獲得。しかし前戦ペナルティによりグリッドダウンとなり、フロントロウを確保していた王者マクローリンが視界良好のポジションを得た。
すると先頭2台が並んで1コーナーシケインに突入した背後でマルチクラッシュが発生し、MSRのコステッキをはじめパスカーレ、フルウッドらをランオフに押しやる肉弾戦が勃発。
さらに、隊列が接触バトルを展開しながらクルヴァ・グランデまで進んだところで、ほぼ全車がダメージを負っていることを受けセーフティカー(SC)が発動される事態となった。
このSCピリオド中に多くのドライバーがピットへと向かったため、リスタートではウォーターズのマスタングが首位に立ち、マクローリン、モスタートは揃ってシケインでスピンを喫したものの、大きなポジションダウンを喫することなく隊列復帰することができた。
一方、この晩に最速ドライバーのひとりであることを証明してきたパスカーレは、アスカリシケインでTeam Sydneyのクリス・ピザー(ホールデン・コモドアZB) にヒットされ、ここで波乱万丈の1日を終えることとなった。
その後、徐々に先頭とのギャップを削り取っていった2番手マクローリンは、1コーナーシケインに狙いを定め、教科書通りのオーバーテイクを披露。首位浮上以降、終盤は燃料のマネジメントに徹しながらトップチェッカーをくぐり、わずか1リッターのガソリン残量でこの日2勝目をマーク。2位ウォーターズ、3位モスタートの表彰台となった。
続く第2戦は4月15日開催で同じフォーマットと開催時間を採用。VASCヴァーチャル・パドックの一行はイギリス・シルバーストンとスペイン・バルセロナのF1トラックへと“移動”する。豪州のツーリングカーが国際サーキットでどのようなレースを繰り広げるかに注目が集まる。
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