2024年9月1日(現地時間)に行われたF1世界選手権第16戦イタリアGPは、マクラーレン大本命という下馬評をよそにフェラーリのシャルル・ルクレールが優勝、モンツァサーキットは熱狂の渦に包まれた。どうしてこんな番狂わせが起きたのか、F1にタイヤを供給するピレリが分析する。
速さでライバルに圧倒的な差をつけていたマクラーレンの誤算
イタリアGPは気温34度、路面温度52度とうだるような暑さの中でスタートしたが、レースの波乱のひとつの要因は、このコンディションにもあった。
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スタートでは、20名のドライバーのうち14名がミディアムタイヤを選択。レッドブルの2名、アストンマーティンのランス・ストロール、アルピーヌのエステバン・オコン、RBの角田裕毅、ザウバーのバルテリ・ボッタスはハードタイヤを選択したが、これは逆転を狙ってのギャンブル的要素が強かった。
もうひとつの波乱の要因は、フロントロウを独占したマクラーレンのふたりが序盤から競り合ってしまったこと。ポールシッターのランド・ノリスに対し、オスカー・ピアストリが第2シケインで並びかけて首位を強奪。そのアクションでノリスはルクレールにもかわされて3番手に落ちてしまう。
圧倒的な速さで優勝候補の大本命とされたマクラーレンだが、2番手にルクレールを挟んだことで、チームメイト同士でタイヤ交換のタイミングや戦略も含めて互いに牽制しながらレースは進行していくことになる。マクラーレンはチームオーダーを出さない方針で、ドライバーはフェラーリ勢の動きも気になるが、同じマシンに乗るチームメイトの戦略にも注意しなけばならない状況になった。
2台でピットストップのタイミングを変えたフェラーリの巧みな戦略
波乱の要因の3つめは、高温もあってか、ミディアムタイヤのタレが予想以上に大きかったこと。レース前から1ストップが最速と予想されていたが、ほぼすべてのチームがレース用にハードタイヤを2セット残していたため、必要に応じて2ストップに変更できる柔軟性を持っていた。
その余裕が迷いにつながった部分もあったように思われるし、新たに舗装し直された路面でのタイヤのパフォーマンスを完全に評価する十分なデータがなく、レース中のドライバーの感覚とタイヤ管理能力に頼らざるを得ない部分もあった。
そんな中、1回目のタイヤ交換は予想よりもやや早く、14周目にマクラーレンのノリス、15周目にフェラーリのルクレール、16周目にマクラーレンのピアストリ、19周目にフェラーリのカルロス・サインツがミディアムタイヤからハードタイヤに交換している。
ポイントはトップを走るマクレーラン勢がフェラーリ勢よりも早く2回目のタイヤ交換に動いたこと。マクラーレンとしては、ルクレールが15周目にミディアムタイヤからハードタイヤに交換した時、残り周回数が38周もあることから「ルクレールは2ストップ」と判断したのだろう。早めにフレッシュなタイヤに交換して、万が一フェラーリ勢(とくにサインツ)が2回目のタイヤ交換を行わなくても、コース上で追い上げてオーバーテイクする戦略に出た。
一方、マクラーレン勢の2ストップ戦略を見たフェラーリは、そのままストップせずにマクラーレン勢の前で走り切る戦略を選択した。ハードタイヤはまだ機能していたし、同じ2ストップ戦略ではマクラーレンに勝てないからだ。
この戦略は見事に成功し、ブロック役に回ったサインツはマクラーレン勢の追い上げに飲み込まれたが、ルクレールはピアストリに2秒664の差をつけたままトップでゴールした。
レッドブルは失速。グリップの不足が課題か
ちなみに、ダニエル・リカルド(RB)はユーズドのハードタイヤで42周を走っており、ハードタイヤの持ちが良かったことを示している。左フロントのグレイニングが大きかったが、ハードとミディアムの両方で左リアはそれほど顕著ではなかった。
なお、これまで圧倒的な走りを見せていたレッドブルの失速は深刻で、予選でマックス・フェルスタッペンは7番手、セルジオ・ペレスは8番手。決勝ではフェルスタッペンが6位、ペレスは8位とふるわなかった。ライバルたちの進化も大きいのだろうが、ドライバーはグリップ不足を訴えており。次戦のアゼルバイジャンGP(9月13~15日)までにどう立て直すか注目される。
2024年F1第16戦イタリアGP決勝 結果
1位 16 C.ルクレール(フェラーリ) 53周
2位 81 O.ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)+2.664s
3位 4 L.ノリス(マクラーレン・メルセデス)+6.153s
4位 55 C.サインツ(フェラーリ )+15.521s
5位 44 L.ハミルトン(メルセデス) +22.820s
6位1 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダRBPT))+37.932s
7位63 G.ラッセル(メルセデス)+39.715s
8位11 S.ペレス(レッドブル・ホンダRBPT)+54.148s
9位 23 A.アルボン(ウイリアムズ・メルセデス)+67.456s
10位20 K.マグヌッセン(ハース・フェラーリ)+68.302s
──────────────
13位 3 D.リカルド(RB・ホンダRBPT)+93.452s
リタイア 22 角田裕毅(RB・ホンダRBPT)
ファステストラップ 4 L.ノリス(マクラーレン・メルセデス)
[ アルバム : F1第16戦イタリアGP決勝 フェラーリの勝因 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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