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いまやライバルに押され気味の「ステップワゴン」! 歴代モデルを見ると「独自のアイディア」満載だった

掲載 更新 29
いまやライバルに押され気味の「ステップワゴン」! 歴代モデルを見ると「独自のアイディア」満載だった

Mクラスミニバンのパイオニア

 1996年、日本のファミリーカーの概念を変えるクリエイティブな多人数乗用車が登場した。それは1994年登場のアダムスファミリーのCMでも盛り上がった初代「オデッセイ」、1995年登場の世界的ヒットとなったクロスオーバーSUV(そうした言い方は当時まだなかったが…)の「CR-V」に続く、ホンダのクリエイティブムーバー第三弾、かつ乗用車ベースの「ステップワゴン」である。

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初代 RF1/2型(1996~2001年)

 1996年と言えば、アトランタオリンピック開催、のちに東京モーターショーが開催されることになる東京ビッグサイトの開場、“アムラー”やルーズソックスの流行、さらには社会現象ともなった「たまごっち」の大ヒットなど、日本がバブル崩壊を乗り越えイケイケ状態だった時代だ。

 ちなみに、いま売れに売れているMクラス・ボックス型ファミリーミニバン御三家の日産セレナがFF化され、国産ミニバン初の両側スライドドアを備えたモデルが1999年、トヨタ・ノアは2001年のデビューだから、ステップワゴンがこのジャンルのパイオニアであることは間違いないところなのである。

 ここで日産セレナが「国産ミニバン初の両側スライドドアを備えたモデル」と聞いて、「あれ? 1996年デビューのステップワゴンじゃないの?」と、思った方がいるかもしれないが、じつは初代と2代目(2001年~)までは両側スライドドアは持っていなかった。そう、車体左側(歩道側)のみにリヤスライドドアが設けられ、車体右側はフロントドアだけだったのである

 その理由は「コストを抑えるためと、ホンダの走りのこだわりから、ボディ剛性確保のため」、それが当時の開発陣の口から出た答えだったと記憶している。ちなみにフリードには3列シートに加え、ラゲッジスペースをガレージ風にアレンジできる2列シートのフリード+があるが、すでに1996年時点で、ステップワゴンにも3列シート8人乗りと、2列シート5人乗りがあったのだ。このあたりも時代の先取りと言っていいだろう。

 ボックスタイプでありながら、どこか洗練された雰囲気が漂っていた初代ステップワゴンは、もちろんファミリー層、子育て世代にバカ受け。さらにデザイン関係、ファッション関係のオシャレ層にも流行した。クリエイティブムーバーはなるほど、クリエイティブな人たちにも受け入れられたのである。例えば2列目席の2:1分割回転対座シートを選択すれば、車内で打ち合わせなどもでき、多人数乗用車としてだけでなく、走るオフィス、クリエイティブ空間としても便利だったのである。

2代目 RF3/4/5/6/7/8型(2001~2005年)

 2001年、2代目となったステップワゴンだが、初代のキープコンセプトモデルとして登場。シートアレンジはさらに進化し、対座モード、レストランモード、フルフラットモード、カーゴモードを用意。

 もちろん初代に続き大ヒット継続中で、2003年にはこれまでの2Lエンジンに加え、2.4Lエンジンを追加。以来、人気のエアロ仕様となる「スパーダ」グレードも、このタイミングで加わった。ただし、両側スライドドアはまだ未採用である。

 その片側スライドドアについては、両側にするとコストやボディ剛性云々というホンダの言い分はわからないでもないが、片側だけだとドライバーが後席に荷物やコートを置きたいとき、グルリと車体を回り、左側リヤスライドドアまで歩いていく必要があるなど、一部では不満の声が出ていたのも事実である。

3代目 RG1/2/3/4型(2005~2009年)

 そこで2005年登場の3代目では、ステップワゴン初の両側スライドドアを用意するとともに、ボックス型のコンセプトから一転、低床、低全高、ワンステップフロア、ダウンサイジングのパッケージに転換(デビュー当時スパーダは廃止。2007年に再登場)。

 「ついにステップワゴンのスライドドアが貫通した」と話題にはなったが、低全高化、あるいは日産セレナ、トヨタ・ノアといった強豪ライバルが出現していたためか、人気は初代や2代目ほどの爆発的なものではなかったと記憶している。

4代目 RK1/2/3/4/5/6/7型(2009~2015年)

 2009年デビューの4代目は3代目の反省(?)か、低床はそのままに全高を45mm高め、Mクラスボックス型らしいスタイリングで登場。

 3列目席は床下格納でき、大容量ワゴンとしても使えるパッケージが“わかる人”には好評だった。2010年には国産ミニバン販売台数No.1の座を記録したほどである。ただし、2.4Lエンジンは廃止。ファミリーミニバンとして適切な2Lのみの設定となっていた。

5代目 RP1/2/3/4/5型(2015年~)

 そしていよいよ2015年、現行型となる5代目ステップワゴンが登場。ホンダ車初採用の1.5Lダウンサイジングターボエンジンの搭載もニュースだったが、それ以上に話題沸騰だったのがバックドアだ。

 それは左右非対称の「わくわくゲート」と呼ばれる、縦開き、さらに横開きも可能な、サブドアを備えたものだ。すごいのは、5:5分割の3列目席=マジックシートが床下にすっきりと格納でき、バックドアの横開きのサブドアから人やペットが乗降可能な点だ(バックドア内側にもオープナーがある)。つまり、第五のドアが誕生したというわけだ。

 その使い勝手の良さは、愛犬と暮らすボクとしても大満足。一般的にバックドアを跳ね上げるには車体後方に約1mほどのスペースが必要だが、6:4分割の6部分となる横開きのサブドアなら、車体後方に必要なスペースは、3段階のストッパーによって約400/640/760mmで済むので超便利。バンパー一体の縦長のバックドア全体を大きく上に跳ね上げることも当然可能で、その場合は車体後方に約1200mmのスペースを要する。

 2017年には待望の「SPORT HYBRID i-MMD」モデルを追加。走りの面ではクラストップレベルの実力と快適性を備えていた。

 と、5代目の魅力的な部分をいろいろ挙げたが、どうやら左右非対称のバックドアはとくに女性にはウケないようだ(バンパー一体による衝突時の修理コストを含め)。

 今ではわくわくゲートなしの一般的なバックドアを持つタイプも用意されてはいるが、2020年1-12月期の新車販売台数では、同クラスのヴォクシー10位(69517台)、セレナ11位(68648台)、ノア16位(45434台)に続く、20位(34441台)に沈んでいる。

走りを重視するユーザーに選んでほしい

 私が「このクラスでどれを買うか」と聞かれたら、ステップワゴンかセレナを走りの好みで選びたいところだが、仮にステップワゴンに躊躇するユーザーがいるとしたら、ノア&ヴォクシー、セレナでは可能な、しかしステップワゴンにはない2列目キャプテンシートの左右スライド機構が挙げられるかもしれない。

 この選び方であればキャプテンシートとベンチシートで悩む必要がなくなり、2列目キャプテンシート仕様を選択したとしても、子育て世代の場合はシートの中寄スライドによってベンチシート化でき、子供をケアしやすくなる(大型犬などのペットを2列目席に乗せたい場合も有効)。また、セレナのプロパイロットのような先進運転支援機能の飛び道具(うたい文句)がないのも、ライバルにリードされる一因かもしれない。

 とはいえ、モデューロXといったスポーティバージョンも揃え、日本のMクラスボックス型ミニバン=多人数乗用車のパイオニアであるステップワゴンは、今も標準車、スパーダともに走りの良さではピカイチの存在だ(特にHVモデル)。賛否の分かれる(?)わくわくゲートも、個人的には日常からアウトドアまで大活躍必至の使い勝手で、楽しさも抜群だと思う。初代ステップワゴンから受け継がれるクリエイティブさは、最新のステップワゴンにも脈々と受け継がれているのである。

文:Auto Messe Web 『Auto Messe Web編集部 吉澤』
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みんなのコメント

29件
  • 売れたのは価格の安さ。
    他のホンダ車と共通した部品を惜しみなく使い、
    それをユーザーはネガに捉えることなく
    一時代を築くほどに支持された。

    しかし、ホンダ名物の過去の否定が始まり
    次第に合理的なクルマからトヨタや日産と
    ケンカするためのクルマへと変わっていく。

    その結果、独自のシンプルさから
    ボクもトヨタっぽくなりたいオラオラ路線へと
    切り替わり、とうとう豪華グレードでは
    アルファードに手が届く価格にまでなってしまった。

    結局、その頃のユーザーが時代の流れ、
    生活スタイルの変化、そして予算オーバーが
    今のN-BOX人気とステップワゴンやオデッセイの
    衰退の正体なのでは?
  • NボックスやNバン系のデザインでステップワゴンを作ろうって発想はホンダには無いのかな。
    走行性能に関しては昔からクラストップの出来なのに3代目と現行は明らかに見た目で損してる。
    2代目までと4代目のシンプルな箱型デザインを見ると、昔はやれば出来てたのにって思ってしまう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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