今ではダウンサイザーからの支持も厚い軽自動車の売れ筋は、N BOXに代表されるスーパーハイト系が約45%、ハイト系ワゴンが約35%で、軽自動車全体の約80%を占めている。つまり、スーパーハイト系とハイト系ワゴンが突出して売れているということだ。
スーパーハイト系はかなり高めの全高と、リアに両側スライドドアを備えているのが特徴で、その大空間、後席の広さ、乗降性の良さから、主に子育て世代や、プチバンと呼ばれるだけあって、ミニバンからのダウサイジングの受け皿としても人気である。一方、ハイト系ワゴンは高めの全高とヒンジドアを備えた、スーパーハイト系に比べれば重心が低く、より乗用車感覚で乗れるカテゴリーとなる。
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そのハイト系ワゴンの注目の新型車が、ホンダN WGN。初期受注で意外なのは、標準車はNA約90%、ターボ約10%の受注比率であるのに対して、より大人っぽく高級感あるカスタムはNA約55%、ターボ約45%と、圧倒的に“高価でもある”ターボ比率が多いこと。ちなみに、ニューシンプルをテーマとする新型N WGNの標準車とカスタムのイメージの違いは、標準車が「高原のリゾートホテル」。カスタムは「海辺の別荘」である。
ここではそのカスタムターボの試乗リポートをお届けするが、最初に言ってしまえば、下手なコンパクトカーを圧倒する内外装の質感、走りの良さ、快適度を持ち合わせ、本当に驚きを隠せない・・・のである。
先代N WGNのカスタムターボと言えば、かなりやんちゃな仕様だった。ホンダらしい元気さが度を越している、とも表現できる、過激なパワー感、操縦安定性最優先の硬めで、後席では突き上げ感アリの乗り心地など、ある意味、ホットハッチ的かつマニアックなハイト系ワゴンでもあったのだ。
が、新型N WGNのカスタムターボはずいぶん大人っぽく変身。その走りの良さの根源は、開発陣がそっと明かしてくれたベンチマーク車にある。それは同クラスのライバルでも、車格上のフィットRSでもなく、何と世界のコンパクトカーの基準ともなるVWポロ。それも最新モデルよりコンパクトで、操縦性にホンダが考える良さが詰まった先代モデルなのである。
新型N WGNの魅力は、ドアの開閉感、前後シートの高級車にも迫るかけ心地の良さから、収納の豊富さやアイデア、2段ラックモードを基本とするラゲッジ回りの使い勝手など多岐に亘るが、やはり最大の注目点は、軽自動車らしからぬ走りの質の高さと言っていい。
何しろ、Nシリーズ第二世代のプラットフォーム、NAとターボを用意するエンジン、CVTは基本的にN BOX譲りながら、新型N WGNではジェイドRSやヴェゼルRSに使われるCVTのブレーキングによって減速制御を行うステップダウンシフト、リニアな加速感をもたらすGデザインシフト、新制御ロジックを注入したパワーステアリング、独自のチューニングで安定方向に振られたアジャイルハンドリングアシスト、走行フリクションを低減するサイドフォースキャンセリングスプリング採用のフロントサスペンション、チルト機構に加え採用されたホンダ軽初のテレスコピックステアリング、ブレーキのコントロール性を高めるリンク式ペダルなど、上級車さながらのホンダの最新技術をふんだんに投入しているのだ。
CVTのセレクターは、先代のLレンジを改め、Sレンジを採用。より使いやすい(低すぎない)レンジとしている。
車両本体価格が166.32万円に達するカスタムL・ターボで走りだせば、まずは出足からのエンジンのスムーズさ、ステアリングの自然ですっきりとしたリニアな操舵感に唸らせられることになる。うれしいのは、N BOXのターボエンジンにある、約2000回転で発生するゴロゴロした振動がほぼ、解消されていること(個体差あり)。これまで、N BOXのターボに乗るたびに気になっていて、各所の試乗リポートで指摘してきたのだが、やっと改善に向けて手が入ったというわけだ。
動力性能はターボが約1500回転と低めの回転数から効き、分厚いトルクが出てくるため、実に走りやすい。そこからアクセルを深々と踏み込めば、先代よりジェントルに、しかし硬質なサウンドを放ちながら気持ちよく回転を上げ、NAエンジンが苦しげになる登坂路や高速道路の合流といった場面、もちろん高速走行でも、ストレスなき余裕たっぷりの加速力を発揮。
新型N WGN全グレードに標準装備される先進安全支援機能=ホンダセンシングは、夜間の歩行者検知機能を高め、横断自転車をも検知できるようになっているとともに、ACC(アダプティブクルーズコントロール)がホンダ軽初の渋滞追従型、0~135km/h対応になっているのだが、自動減速からの60~80km/h、80~100km/hの再加速性能も文句なし。それこそステップワゴンのACCより再加速性能に優れている印象なのである。
先代のウイークポイントだった乗り心地も劇的に改善され、終始フラットで心地良い乗り心地を示してくれる。後席の段差などによる強い突き上げ感ももはやないに等しい。
それでいて、カーブでの姿勢変化、ロールは最小限。ストローク感たっぷりの乗り味を示すN BOXのカスタムターボと比較すれば、圧倒的な安定感と言える。合わせて、クルージング中の静かさ、特にロードノイズの遮断は見事というしかないほどだ。新型N WGNカスタムターボよりカーブでグラグラし、クルージング中に騒々しく感じるコンパクトカーをボクは何台も知っている・・・。
新型N WGN全グレードに備わるCVTのダウンシフト制御も優秀だった。これは約40km/h以上で作動するもので、ブレーキングによってギアが落ちるような減速制御を行ってくれるのだ。坂道、山道、コーナー脱出後の再加速、高速旋回で特に威力を発揮し、ブレーキを2回踏めば、2段ギアが落ちるような賢い減速も制御可能だから、安心感、走りやすさに直結する。もちろん、カスタムターボならパドルシフトを操ることもできる。
高速直進安定性も見事だ。ステアリングのセンター付近の締まり感もあって、制限速度上限でもビシッと直進。基本的な乗り心地、体重でサポートする、シートの上級車さながらのかけ心地の良さ、ACCの性能の高さもあって、長距離、長時間のドライブもストレスフリーのはずである(強風時の高速横風安定性については、ハイトな車高だけにそれなりにあおられる)。
そんな、まさに下克上的な走行性能を発揮する新型N BOXカスタムターボだが、実燃費も文句なく、高速70%、市街地30%、エアコン使用、ECON ONで17.6km/Lを記録。同行程のNAの20.6km/Lとはいかないものの、ハイブリッドカーに迫る数値なのである。
高速道路などまず走らない・・・というなら、標準車、カスタムともにトルキーでスムーズなNAエンジンで不足はないが、高速走行、長距離ドライブをする機会が多いというなら、あるいは一家に一台のファーストカーとして使うのであれば、新型N WGNのカスタムターボは、下手なコンパクトカーをしのぐ、走りやすく、使いやすく、快適で、先進安全支援機能も充実した賢者の選択肢になりうると思えた。
ちなみに、カスタムLターボ ホンダセンシングの価格は、標準車の一番人気のLホンダセンシング(NA)の32万4000円高、Lターボホンダセンシングの16万2000円高、N-BOXカスタムG・L ターボの23万2200円安となる・・・(2019年9月現在)。
ホンダN WGN
https://www.honda.co.jp/N-WGN/
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。
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