東京オートサロンに行く前に「GT300」のおさらい
SUPER GT(以下、スーパーGT)は、2024年1月12日から14日の3日間、幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催される東京オートサロン2024に出展します。そのブースの目玉となるのは、参戦3メーカーのGT車両の展示です。そこで、実車を見に行く前にスーパーGTがどんなカテゴリーのレースなのか、栃木県モビリティリゾートもてぎで開催された最終戦の模様を交えながら解説しましょう。今回は「GT300」クラスの紹介です。
スーパーGT2023年シーズンの年間王者は36号車「auトムスGRスープラ」に輝く! 3号車「ニテラモチュールZ」は雨に嫌われました
予選ではランキング2位のmuta Racing GR86 GTがポール獲得
トヨタと日産、そしてホンダの国内三大メーカーが鎬を削っているGT500クラスが注目されることの多いSUPER GTシリーズだが、下位クラスのGT300はGT500と同等の激しいバトルに加えて、マシンバラエティの豊富さではGT500を遥かに上まわっていることが大きな特徴となっている。
具体的に競技車両を見ていくと、1:GT300規定、2:GT300マザーシャシー(MC)規定、そして3:FIA-GT3の三者に大別できる。2023シーズンはGT300規定がトヨタ「GRスープラ」とスバル「BRZ GT300」、トヨタ「GR86GT」、レクサス「LC500h」の4車種8台、GT300マザーシャシーがトヨタ「86 MC」の1車種1台、そしてFIA-GT3は日産「GT-R NISMO GT3」、ホンダ「NSX GT3」、レクサス「RC F GT3」、「メルセデスAMG GT3」、BMW「M4 GT3」、ランボルギーニ「ウラカンGT3」、アウディ「R8 LMS」の7車種17台が年間エントリーのリストに名を連ねた。
成績的にはFIA-GT3勢が優勢で最終戦を迎えるまでの7戦で5勝と圧倒的だったが。残り2戦で2勝を挙げたGT300規定の52号車 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)がポイントリーダーとして最終戦を迎えることになった。
逆転チャンピオンの権利を持っていたのもやはりGT300既定の2号車 muta Racing GR86 GT(堤 優威/平良 響)のみ。これはFIA-GT3勢が星の取り合いをしてポイントが分散したことに対し、ランキングのトップ2は取りこぼしが少なく、多くのラウンドで着実にポイントを重ねてきたことが要因だ。
ただし両車のポイント差は20ポイントもあって2号車 muta Racing GR86 GTが逆転チャンピオンを獲得するには予選でポールポジションを奪って1ポイントを稼ぎ、決勝でも優勝して20ポイントを加算したうえで、ポイントリーダーの52号車 埼玉トヨペットGB GR Supra GTがノーポイントとなる必要があり、ハードルは高い。しかし走り始めの公式練習から2号車 muta Racing GR86 GTは速く、公式予選でもポールを奪っている。
確実に完走を果たした埼玉トヨペットGB GR Supra GTが王者に
明けて日曜日の決勝レース。逆転チャンピオンを手にするためには優勝が必須となった2号車 muta Racing GR86 GTは、慎重さの中にもアグレッシブなスタートダッシュを決めてトップをキープ。2位以降も88号車 JLOC ランボルギーニ GT3(小暮卓史/元嶋佑弥)、65号車 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗)、61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)、18号車 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出 峻)、31号車 apr LC500h GT(小高一斗/根本悠生)、52号車 埼玉トヨペットGB GR Supra GTと上位陣はグリッド順に続いていく。
7番手でオープニングラップを終えた52号車 埼玉トヨペットGB GR Supra GTは、この順位のままレースを走り切れば自力でチャンピオンを手に入れることができるが、後方からは6号車 DOBOT Audi R8 LMS(片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン)が急追をみせており、決して楽観できる状況ではなかった。
5周目を迎えたあたりから雨粒が落ち始め、10周目を迎えるころにはホームストレートを中心に雨脚が強まって路面コンディションがハーフウェットとなっていった。その影響からかトップを逃げる2号車 muta Racing GR86 GTに比べて88号車 JLOC ランボルギーニ GT3のペースが上まわり、テールtoノーズのバトルを数周に渡って繰り広げたのち、14周目の3コーナーで88号車 JLOC ランボルギーニ GT3がトップに立った。
GT300クラスではタイヤ交換が戦略の一つとなっている。前輪2本交換だったり後輪2本交換、あるいはサーキットによっては右側の前後だったり左側の前後だったりとさまざまで、もちろん一般的な4輪交換もあればタイヤ無交換だってある。ピットインのタイムロスを削るためで、わずか数秒、せいぜい十数秒だが、それがレース結果を左右するのだ。それだけシビアな戦いが展開されている証左だが、今回も様々な作戦がみられた。
上位陣に限ってもトップの88号車 JLOC ランボルギーニ GT3と65号車 LEON PYRAMID AMGは後輪2本のみの交換、2号車 muta Racing GR86 GTと52号車 埼玉トヨペットGB GR Supra GTはタイヤ無交換だった。
全車がピットインを終えた段階でのオーダーは、88号車 JLOC ランボルギーニ GT3が引き続きトップを快走し、65号車 LEON PYRAMID AMGがこれに続く。その後方3番手には2号車 muta Racing GR86 GTがつけ、ピットインを遅らせて順位を上げてきた56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/名取鉄平)を挟んで52号車 埼玉トヨペットGB GR Supra GTが5番手につけている。
その後方からは6号車 DOBOT Audi R8 LMSが追い上げてきており、52号車 埼玉トヨペットGB GR Supra GTと56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rをかわして4番手まで進出していく。
レースも大詰めとなったところで再び雨粒が落ちてくる。これをみて3番手の2号車 muta Racing GR86 GTは急遽、レインに交換する作戦をとった。逆転タイトルを狙うには優勝しかない彼らにとって一か八かの作戦だったが、期待したほどには雨脚は強くない。また、GT500クラスのマシンがグラベルストップしたことでフルコースコーションが出されたこともありピットインでのタイムロスをリカバーすることは叶わず9位でチェッカーとなった。
トップチェッカーは88号車 JLOC ランボルギーニ GT3。元嶋にとってはこれがSUPER GTでの初優勝で、GT500でシリーズチャンピオンの経験もあるベテランの小暮にとってもGT300では初優勝となった。2位には65号車 LEON PYRAMID AMG、3位には6号車 DOBOT Audi R8 LMSが入って表彰台を獲得。7位入賞で4ポイントを上乗せした52号車 埼玉トヨペットGB GR Supra GTが嬉しい初戴冠となった。吉田と河合、そしてチームの笑顔が弾けた。
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