この記事をまとめると
■チゼタ・モロダーV16Tはランボルギーニ出身エンジニアと世界的作曲家により生み出された
「二度見」確実の「異形っぷり」! 日本車じゃ絶対あり得ない海外のぶっ飛びデザインカー7選
■ガンディーニデザインのボディに6リッターV16エンジンをミッドシップに横置き搭載する
■経営難による倒産などにより、累計生産台数は15台とされている
自らの名を掲げるスポーツカー製作の夢追い人がここにもひとり
今回は、さまざまな運命に翻弄された一台のスーパースポーツを紹介しようと思う。それは1988年に第一号車が完成したチゼタV16T。いや、正確にはこのとき、チゼタ・モロダーV16Tというネーミングを与えられたイタリアン・スーパースポーツカーだ。
チゼタ・モロダーという社名は、同社を設立したふたりの人物、ランボルギーニ出身のエンジニアであり、またメカニックのクラウディオ・ザンポッリのイニシャル、C.Z.のイタリア語読み、「チゼタ」と、作曲家として世界的な成功を収めていたジョルジョ・モロダーのファミリーネームである「モロダー」を組み合わせたものである。
ザンポッリはランボルギーニを退職後、長らくアメリカのカリフォルニア州で同社の正規ディーラーを経営していたが、自らの名を掲げるスーパースポーツを作り上げるために、その成功をステップに再びモデナへと戻り、モロダー氏からの資金提供を受けニューモデルの開発をスタートさせることになったのだ。
スーパースポーツカーメーカーが数多く存在するモデナやその周辺には、小規模な台数のモデルを生産するためにも、フレキシブルに対応してくれる企業が数多く存在する。クロームモリブデン鋼で組み上げられたスペースフレームなどは、それら企業の協力によって成し遂げられた典型的な例で、さらにスーパースポーツの核ともいえるエンジンの調達には、ランボルギーニ出身のエンジニアによってモデナに設立されていた、テクノスティーレ社がそれに協力した。
クルマとして異様なディテールを持つ稀代のスーパーカー
デザインはもちろん、ランボルギーニのミウラやカウンタックでお馴染みのマルッチェロ・ガンディーニ。これだけのチームが組織されれば、後発メーカーとしても十分なインパクトを持つスーパースポーツカーを誕生させることができる。そして、実際に完成したファーストモデルのチゼタ・モロダーV16Tは、間違いなく斬新で刺激的なデザインとメカニズムを持つモデルに仕上げられていたのである。
まずはそのデザインを改めて鑑賞することにしよう。強いウエッジシェイプを持つそのスタイルは、一説にはランボルギーニ・ディアブロの後継車として提案されていたものとも噂されるが、たしかにその空気の壁を切り裂くかの如きシルエットや、リヤホイールアーチなどのディテールは、ガンディーニならではのフィニッシュである。
フロントのリトラクタブルライトは上下2段式。リヤフェンダー上にはエンジンルームに効率的にエアを導入するためのスリットが存在するが、それが水平方向に並ぶのはファーストモデルのみのデザインとなっている。
リヤミッドに搭載されるエンジンは、T(=Transverse)の文字から想像できるように、横置きされる6リッターのV型16気筒DOHC。これは、ランボルギーニ・ウラッコP300用のV型8気筒エンジンを2基接続したものと噂され、組み合わされる5速MTはその中央部分から縦置き搭載される仕組みだ。つまり、それでパワートレインは「T」の文字が構成されるということになる。もちろん、シンプルにエンジンの搭載方法がトランスバース(横置き)だと考えることも可能だが。注目の最高出力は、このプロトタイプでは560馬力を主張していたが、後の生産型では520馬力にデチューンされた。
チゼタ・モロダーV16Tは、1989年のジュネーブ・ショーでワールドプレミアされ大きな話題となるが、デリバリーの遅れからチゼタ・モロダー社の経営は徐々に厳しくなり始める。結局、モロダー氏はこのプロジェクトから撤退し、モロダーの名前が消えたチゼタ社は、苦難の中8台のプロダクションモデルを製作した後に倒産。ザンポッリはここから8年という歳月を経て、再びカリフォルニアへと戻り、ここでチゼタ・アウトモビリUSA社を設立。V16Tの生産を再開するものの、ここでも商標権違反や輸入関税法違反など、さまざまなトラブルに翻弄されてしまう。
結果的に、これまでチゼタが生産したV16Tは15台とされているが、その中にはオープン仕様も存在する。チゼタ復活の日は訪れるのか。できればニューモデルの誕生とともに、その日を待ちたいというのが正直な気持ちだ。
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みんなのコメント
どうもクライスラーが絡むとロクな結果にならない。
もし今の時代ならV16じゃ無くてV12だったろうが、それでも売れたように思う。