2021年F1第9戦オーストリアGPの予選。ジョージ・ラッセルが好調な走りを見せて、ウイリアムズでの初のQ3進出を決めた。そのQ3ではマックス・フェルスタッペンがポールポジションを獲得したものの、戦略には不満があったようだ。オーストリアGPの予選の様子を無線とともに振り返る。
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【Q1】
Q1最初のアタックで、アルファタウリ・ホンダの2台はミディアムタイヤを装着した。しかしピエール・ガスリーは、ターン9手前でアウトラップのメルセデス2台に詰まった形となり、トラックリミットを超えてしまう。
ラッセル、ウイリアムズで予選9番手の快挙「ミディアムタイヤでQ3進出。久々にテンションが上がった!」F1第9戦
ガスリー:すごいトラフィックだ。ターン9で挙動を乱してしまった
ピエール・アムラン:タイム抹消だ。みんなクールダウンするから、ターン1までに前に出よう
2回目のアタックはクリーンエアで何とかタイムを出せたが、18番手が精一杯。2セット目はソフトに交換し、9番手タイムでQ2へと進んだ。
対照的にQ1から絶好調だったのが、ウイリアムズのジョージ・ラッセルだった。今季ここまで全レースで、Q2進出。今回も12番手でQ2に進んだ。
ジェームズ・アーウィン:トラフィックはクリアだ。FP3よりコンマ2秒速いぞ
しかし後述するように、ここで「コンマ2秒速いぞ」と担当エンジニアが言っているのは、ひょっとすると「速く走りすぎるな」ということだったのかもしれない。
角田裕毅:ターン6まで、パワーを失ってた
マティア・スピニ:わかった。チェックしてみよう。
ガスリー同様、最初に履いたミディアムで手こずった角田は、14番手でQ2進出。「パワーを失っていた」というのは回生エネルギーの出方がおかしく感じたのか。実際、セクター2の区間タイムロスが、前後のライバルたちに比べて大きい。
【Q2】
セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)がミディアムタイヤを履いて、真っ先に出て行った。たった1台の走行だったが、平凡なタイムに終わる。
ペレス:トウが足りなかったね
トラフィックを嫌って単独で走ったのだろうが、他者のスリップストリームが使えないことを嘆いていた。担当エンジニアの判断に、ちょっと不平を言ったようにも見える。ちなみに先行車の後ろについて空気抵抗を減らして直線速度を上げる、いわゆるスリップストリームは、F1では主にtowという単語を使う。本来は、ロープなどで引っ張る動作を意味する。
一方、ソフトで最初のアタックを終えたラッセルは、こんな奇妙な言葉を発した。
ラッセル:申し訳ない。ちょっと速すぎた?
アーウィン:いや、なんとかなるだろう
ウイリアムズ側の予選後の説明によれば、「ソフトタイヤのロングランペースはひどいことがわかっていたので、何としてもミディアムでQ3に進みたかった」とのこと。そのためソフトで自己ベストを出さないよう、ラッセルには「最終コーナーでスロットルを戻せ」と指示したとのことだ。
しかしドライバーたるもの、頭ではわかっていても、遅く走るのは決して簡単ではない。この時点でラッセルは総合9番手タイムで、下手をするとレーススタートは中古ソフトになってしまう。しかしその後ラッセルはミディアムに履き替えると、ソフトでの自己ベストをコンマ1秒更新し、見事にQ3進出を果たした。
ラッセル:話してくれ、話してくれってば
アーウィン:(笑い声を交えて)Q3に行ったよ
ラッセル:やったぜ、ボーイズ! 凄い! 正しい一発だった
Q2終盤、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)から怒りの無線が飛び込んできた。真っ先に最後のアタックに出て、かなりいいペースで自己ベストを縮めていく。しかし隊列の最後にいたセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)に最終コーナーで邪魔され、大きくタイムロス。14番手に終わった。
アロンソ:何てこった!XXX信じられない!
よほど汚い言葉を吐いたのだろう。Q3進出はほぼ確実の速さが合っただけに、アロンソの気持ちはわかる。ただし直後に言っていた「3、4番手も可能だった」は、ちょっと盛りすぎの感もある。
そして角田も、苦しみながらもQ3に進んだ。
角田:やったぞ、ありがとう。素晴らしいトラックポジションだった。みんな、愛してるよ!
I love you,guys!という表現に、角田の歓喜が伝わってくる。
【Q3】
アルファタウリ・ホンダの2台は、6、7番手のグリッドを獲得した。
アムラン:P6だ、ユウキはP7。コンマ1秒ちょっとの差だ。
ガスリー:みんな、よくやってくれた。
アムラン:よく挽回した。難しい週末だったけど、素晴らしい予選だった
スピニ:P7だ。おめでとう
角田:きみたちこそ、おめでとう。FP3は特に厳しかったけど、よく戻してくれた。本当にありがとう
スピニ:いい周回だったぞ
8番手のベッテルは、ちょっと悔しそう。
ベッテル:もし(1分)4秒480まで縮めてたら、順位は変わってた?
クリス・クローニン:いや、同じだ。(7番手の)角田は4秒273だから
そしてこの時点でも、Q2のことが頭から離れないようだった。
ベッテル:Q2はあんなことが起きてしまった……。でも僕のせいじゃない
クローニン:わかっている
そしてマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は3戦連続ポールを獲得したにもかかわらず、不満をぶちまけた。
フェルスタッペン:もう二度と、最初にコースに出さないでくれ
ジャンピエロ・ランビアーゼ:またポールポジションだ
フェルスタッペン:確かに1番だったけど……あとで話し合おう
最初にコースに出されたことでスリップも使えず、自身の走り自体にも納得がいかない。2番手ランド・ノリス(マクラーレン)に0.048秒まで迫られたことに、あからさまに危機感を抱いているようだった。
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