スムーズな減速から力強い減速まで簡単に行える
クルマの走行機能装備のひとつにパドルシフトがある。付いていても、使ったことがない……なんていう一般ユーザーも少なくないかもしれないが、まずはパドルシフトの「誤解」について説明したい。
パドルシフトはステアリング奥左右のスイッチで、一般的なクルマの場合、シフトダウン、シフトアップを行ってくれるものだ。また、三菱アウトランダーやマツダMX-30EVモデルといった電動車では、回生をコントロールするスイッチとしても使われている。しかし、F1マシンにも使われているパドルシフト=スポーティな走行をするためのアイテム……と思っている人もいるはず。
が、それもそうだが、それだけではない。シフトダウン側のパドルシフトを引くことで、クルマは下手にブレーキを踏むよりスムースに減速。交通量の多い東京の首都高速などで、前車との車間をうまくコントロールした、スマートなドライブも可能になる。当然、同乗者のブレーキングによる揺すられ感も減少し、快適で、それこそクルマ酔いしにくくなったりもするのである。
もちろん、力強い加速が必要なときにも、パドルシフトのシフトダウン側のスイッチが使えるし、より高いギヤで効率的かつ燃費のいい走りをするときには、右側のシフトアップ側のパドルを引けばいい。
まぁ、それだけのことなら、なくてもまったく困らない。だからパドルシフト未装備のクルマも多いのである。
タイヤやブレーキの摩耗も減らすことができる
しかし、パドルシフトの効能は、まだまだある。たとえば、ボク自身のクルマにもパドルシフトが装備されていて、高速走行中の車間を保つための減速などで駆使しているのだが、ブレーキを踏む必要がなくなる場面も多く、結果、ブレーキパッド、ブレーキローターの減りが激減。新車からもう6年目になるドイツ車だが、ブレーキ関係の交換がまだ不要の状態なのである。つまり、経済的。
さらに、自動車メーカーの開発者に聞いてみたところ、同じ減速度を得るために、強いブレーキを踏むより、パドルシフトを使うことで、タイヤの摩耗も軽減されるというのである。事実、自身のクルマも5年間、数万キロをタイヤ交換なしで過ごせたのである。そう、パドルシフトはクルマを維持する上での経済性につながる可能性もあるということだ。
ただし、ひとつ問題がある。それはACC(アダプティブクルーズコントロール)による、ブレーキを使わない減速では、減速Gをセンシングして、ブレーキランプが点灯する。スバルのアイサイトXやホンダのホンダセンシングエリートに至っては、メーター内のクルマの画像でも、ブレーキランプ(ウインカーも!!)が点灯するようになっていたりするのだから可愛い!? 強いブレーキをかけたときに、追突防止のため、自動でハザードランプが点灯するオートハザードランプを完備しているクルマもあるぐらいなのである(軽自動車でも)。
一方、一般的なパドルシフトの使い方による減速では、車速は落ちるものの、ブレーキランプは点灯しない。つまり、パドルシフトを何回も引くような急激な減速では、後続車にとっては、前車がブレーキランプなしで、突然減速し、車間が詰まってくることになり、最悪、追突の心配もあるわけだ。
これについては使い方で、後続車との距離が迫っているときには、「減速しますよ」という合図(マナー)として、ブレーキを踏んだほうが安全であることは言うまでもない。そして、後続車が迫っていない(存在しない)場合は、パドルシフトによる減速を駆使すればいい。使い方を間違えなければ、パドルシフトはキビキビした走り、スムースな走り、同乗者にとっての快適な走り、そしてブレーキやタイヤの負担を減らす経済性にも大きく貢献してくれる機能装備と言っていい。
自身のクルマにパドルシフトが付いていれば(ないかもしれないと思っていても、一度、確認を)、ぜひ、周囲に迷惑をかけない範囲で活用しまくっていただきたい。筆者自身、パドルシフトは、ACCや電子パーキングブレーキ、オートブレーキホールド機能、ブラインドスポットモニター、コネクテッド機能などとともに、これからの愛車、クルマに欠かせない装備だと思っているぐらいなのである。
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