グループCカーで田園地帯を駆け抜ける気分
パガーニ・ウアイラ BCロードスターのV型12気筒エンジンを目覚めさせる。不機嫌そうにひと吠えし、ゴロゴロとノイズを立てる。BCロードスターの場合、リアディフューザー部分に排気口が追加してあり、そこへまず排気ガスが導かれる。
【画像】実は繊細で従順 パガーニ・ウアイラ BCロードスター 競合するスーパーカーと比較 全110枚
基本的にはストレートパイプ状態。アイドリング時は控えめだが、ドライブへレバーを倒すと一気にボリュームが増す。カーボンセラミック・ディスクを固定するブレーキペダルを緩めると、周囲を支配するほどの存在感だと確信する。
速度を高めると、道幅いっぱいのワイドなマシンは、ドライバーを中心に小さく感じられてくる。だがしばらくは、視線の位置にあるフロントフェンダーのルーバーや、頭より上にあるサイドミラーへ意識が奪われる。
1990年代のグループCカーで、英国の田園地帯を駆け抜けているような気分になる。タダゴトではない。
視覚的にインテリアは豪華絢爛だが、機械的な扱いにくさはない。クルマの少ない郊外の道を運転するのが楽しい。少し速めのペース程度では、理解しやすく明瞭。スタイル優先のスポーツカーとは別次元の、清々しさがある。
金属から削り出され、機構が丸出しになったシフト・リンケージは芸術品のよう。それでいて、メーターパネルは前衛的でハイテク感が漂う。パガーニだけのミックスだ。
タッチモニターやスイッチ類は、先代のパガーニ・ゾンダからのキャリーオーバー。少々古びても見える。
操舵性や乗り心地は秀逸 主役はV12エンジン
一旦クルマを停めて、レザー・ストラップを緩め、大きなクラムシェル・リッドを開く。手動で4段階に調整できるダンパーが組まれた、ダブルウイッシュボーン・サスペンションを確かめる。
今日の設定はレース向きのようだが、彼らの技術ならではといえる緻密な姿勢制御を実現しており、ソフトさも残っている。ミドシップ・スーパーカーの多くは、低めのスプリングレートで実現させている。
鮮明で生々しい感触が、ステアリングホイールへ伝わる。1250kgのウアイラは、コミュニケーションが取りやすく流暢に操縦できる。舌を巻くほど。
電動油圧式パワーステアリングが組まれ、軽く鋭く反応する。手のひらへ僅かにフィードバックが伝わる一方で、ワダチに進路が左右されることはない。繊細だが過敏ではない。日常的な条件でも、運転しやすいかもしれない。
ステアリングフィールだけでなく、乗り心地も秀逸。1日中、ウアイラに乗っていたいと思わせる。1600kmのグランドツアーも、さほど苦ではないだろう。これでGT3マシンと同等の速さでサーキットを走れるのだから、理解に苦しむ。
やはりBCロードスターの主役は、0.3mmという極薄のアルミニウム製カバーを備えたV型12気筒エンジン。今回の試乗は、このユニットが第3世代のC10へも採用されるという事実がきっかけだった。
メルセデスAMG製の6.0Lツインターボは、たった2000rpmから106.8kg-mという怒涛の最大トルクを発揮する。ウアイラの軽いシャシーには、いささか過剰といっていい。
極めてドラマチックなサウンド
乗り慣れていくほど、アクセルペダルを自由に扱えるようになる。金属製のペダルがカチカチと音を立てる。何という中毒性のある快感なのだろう。
試乗日は快晴で、路面はほぼドライ。BCロードスターは、セミスリックのようなタイヤを履いている。すべての音響を解き放つ、絶好の条件が揃っている。
インテークが、シューッと鳴らしながら空気を吸う。ターボからは甲高い回転音が放たれる。タイヤが瞬間的に身悶えるほど、圧倒的なパワーが生成される。
レース・モードを選択すると、アクセルレスポンスは一層シャープになり、エグゾーストのフラップが開く。トラクション・コントロールの介入が抑えられ、右足の力加減でウアイラを操れることが見えてくる。
先代のゾンダが鑑賞させてくれた、F1マシンのように鳥肌の立つサウンドまでは奏でない。それでも、6500rpmくらいまでの響きは極めてドラマチックだ。
AMGらしい、ヘビメタのような唸りとグズりが中回転域で増強される。パガーニの場合はより滑らかで、強制的に吸気されるインダクションの悲鳴もオーバーラップする。1度体験すれば、2度と忘れられない音響といっていい。
気を失う勢いのトップエンドの刺激は欠けている。フェラーリが296 GTBのV6ツインターボ・エンジンで果たした成果を考えると、AMGとパガーニも更なる興奮を引き出せるのではないかと思う。第3世代のC10で。
公道でも見事に鮮明で従順な性格
Xトラック社製の7速シーケンシャル・マニュアルは、高精度でスムーズにギアを変える。だが、荒削り感もなくはない。重さはかさむものの、デュアルクラッチATを採用する時が来たように感じた。
第3世代のパガーニは、ロードスターなら若干残っているものの、クーペはすでに完売だという。恐らく、実際に市街地で目にする機会はほぼないだろう。インターネット上なら、走る様子を楽しめるはずだが。
少なくとも、かつてないスタイリングをまとい、目が奪われるディティールで仕立てられる。落ち着きがあり機敏に身をこなし、ミドシップとは思えない穏やかなマナーを備えるに違いない。
802psという最高出力を秘めていながら、ウアイラ BCロードスターは荒れた英国の公道で、見事に鮮明で従順な性格を披露してくれた。多少湿っていても、それは変わらないと思う。
チタンとカーボンが多用された、V型12気筒エンジンのハイパワー・スーパーカーというだけではない。繊細で親しみを持てる、望外に優れたドライバーズカーでもある。
新しいパガーニは、このウアイラ以上に洗練されていて、より度肝を抜かされるクルマになるはず。それを実際に体験できるのは、幸運で裕福な極少数のオーナーに限られるのだけれど。
パガーニ・ウアイラ BCロードスター(欧州仕様)のスペック
英国価格:450万ポンド(約7億4250万円)
全長:4605mm(標準ウアイラ)
全幅:2036mm(標準ウアイラ)
全高:1169mm(標準ウアイラ)
最高速度:370km/h
0-100km/h加速:2.9秒(予想)
燃費:−
CO2排出量:−
乾燥重量:1250kg
パワートレイン:V型12気筒5980ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:802ps/5900rpm
最大トルク:106.8kg-m/2000-5600rpm
ギアボックス:7速シーケンシャル・マニュアル
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