有名企業が次々にテキサスへ
執筆:Kumiko Kato(加藤久美子)
【画像】日本の名車がテキサスを走る【取材したスティーブさんのハコスカ】 全24枚
米国トヨタの本社は長らくカリフォルニア州トーランスにあったが、2017年に北米における製造・販売・金融などの本社機能をテキサス州ダラス北部のプレイノに移転している。
トーランスはロサンゼルス空港(LAX)にも近くお隣のガーデナ市と同様、日系企業や日本人駐在員が多く住むエリアでもある。
1959年に設立されたホンダの米国法人「アメリカン・ホンダ・モーター」は1963年にガーデナへオフィスを移転。
1990年にはトーランスの地に全部門を移転して現在に至っている。
自動車系企業の引っ越しで、最近の大きな話題といえばテスラだ。
テスラはまず、CEOであるイーロン・マスク氏本人が2020年5月に「本社と将来のプログラムを即刻テキサス/ネバダに移す」ことをほのめかし、2021年10月には本社をテキサス州オースティンに移すと発表した。
なお、テスラにおいてはカリフォルニアから完全に撤退することはなく、フリーモント(カリフォルニア州アラメダ郡)の組み立て工場や技術者はシリコンバレーに残るとのことだ。
この他、ヒューレット・パッカードやオラクルなどアメリカを代表する企業もカリフォルニアからテキサスへの引っ越しを明らかにしてきた。
理由は企業活動に関わる税金によるものでテキサスには州法人税も個人の所得税もない。
また、現在のところ最低賃金や固定費などが西海岸の大都市より低いことも大企業にとっては魅力的だ。
アメリカのほぼ真ん中に位置しており、交通の便が良いという地理的利点もある。
旧車好きもテキサスへ?
テスラの場合は、さらにもう1つ大きな理由があった。
カリフォルニア州フリーモントにあるテスラの工場に対する新型コロナウイルス対策である。
カリフォルニア州自体も国のガイドラインよりも厳しい規制を敷いているが、工場のあるアラメダ郡は州や国とは異なる新型コロナ対策を採用しており、テスラはフリーモントの工場を一時的に閉鎖せざるを得なくなった。
これもテキサスに引っ越す要因の1つとなった。
引っ越しているのは大企業ばかりではない。
クルマ好き、日本の旧車好きアメリカ人も続々とカリフォルニア州からテキサスに引っ越している。
その代表的人物といえば日本にもたくさんのファンがいるクルマ系人気ユーチューバー「スティーブ的視点 Steve’s POV」を運営するスティーブさんだ。
スティーブさんは日本企業で働いていた時期が長く、日本語も堪能。日本車が大好きで、数多くの旧車をアメリカで所有している。
筆者が2019年11月にアメリカでスティーブさんを取材したとき、彼はカリフォルニアに住んでいた。
その後2020年にテキサスへ引っ越している。
スティーブさんがテキサスに引っ越した理由はどんなことだろうか?
また、実際に引っ越して1年以上経過した今、カリフォルニアとテキサスではどんなことが違っているのか? 聞いてみた。
古いクルマを所有できる自由を求めて
「わたしがカリフォルニアを出たのは治安が悪化の一途をたどっていたこと、そして物価がグングン上昇していること。何しろガソリンもかなり高くなっています。クルマの登録費用や税金も高額です」
「また、車検ではないですが、カリフォルニアには全米一(世界一?)厳しいといわれる『スモッグテスト』(排ガス規制)があります」
「その規制がどんどん厳しくなって1980年代、90年代の日本車では対応するのが難しくなってきました。そこで古いクルマを所有できる自由があり、物価の安いテキサスに引っ越したいと考えたのです」
日本の旧車といえば「25年ルール」(FMVSS)をクリアしていれば同時に排ガスに関する「21年ルール」(EPA)も同時にクリアできるのでどんなクルマでもアメリカに輸入できるのではなかったのだろうか?
「はい。25年ルールでアメリカに輸入することは可能です。しかし、『輸入』と『登録』は違います」
「州によって異なっており、排ガス規制が特に厳しいカリフォルニアでは輸入できても登録(カリフォルニア州のナンバーがつく)できるとは限りません」
「他の州で登録してカリフォルニアに住めばいいじゃないか? と思われる方もいるかもしれませんが、それは非常に困難です。見つかれば違反キップ切られて罰金を納めないといけません。最悪、クルマを没収されて壊されます」
自動車の保険料もカリフォルニアは高いのだという。それはなぜか?
「街の治安が悪くなると盗難や事故も増えてきます。そうすると保険料も高くなるんですよ」
「テキサスがめちゃくちゃ安いわけではなくカリフォルニアより少し安い程度ですが」
「あと、車両登録費もテキサスはかなり安いです。フェラーリの登録費がカリフォルニアでは800ドルに対してテキサスは75ドルです」
「また、ハコスカやRX7などの日本の名車旧車に関しても同じでテキサスでは排気量に関係なくすべてのクルマの登録費用が100ドル以下です」
ガソリンのオクタン価も違う?
スティーブさんいわく、この1年でバイデン政権に代わって倍くらいに高くなったとのことである。
また、旧車好き、ハイパフォーマンスカーにとってとても重要なことがある。
それはガソリンのオクタン価が違うことだ。
カリフォルニアのガソリン価格は全米一高額だ。
原油価格の上昇で世界的にガソリンの小売価格もあがっているが、カリフォルニアでは1ガロン(3.87L)あたり5~6ドルのところもある。
リッターあたり160円超となり、日本のガソリン価格とほとんど変わりがない。
かつて「水より安い」といわれた時代もあったのだが……。
そして、ガソリンが高いことに加えてオクタン価問題も重要だ。
「カリフォルニアはオクタン価が91までですが、テキサスは93まで販売されます。ハイパフォーマンスカーのエンジンにはオクタン価が高い方がいいでしょう」
「旧車=悪者」の風潮が……
日本の旧車や古いスポーツカー、ハイパフォーマンスカーなど趣味性の高いクルマを所有するのはカリフォルニアではどんどん厳しくなっている。
これには、クルマに対するそもそもの考え方の違いがあるという。
「カリフォルニアではクルマ(ガソリン、ディーゼル車)はダメなモノという認識です。地球温暖化に対して悪いものであり、環境汚染の原因となる。クルマが悪者にされる州といえるでしょう」
これに対してテキサスはカリフォルニアでは所有しにくいディーゼル車に対してもガソリン車と同じです。
リベラル勢が強いカリフォルニア、保守派が強いテキサスという違いも大きいでしょうね。
テキサスでは、クルマとはそういうもの。排ガスを出すしディーゼル車は黒煙をだす。そんな認識です。
続々とテキサスに引っ越すクルマ好きが増えている印象だが、もちろんカリフォルニアに住み続ける旧車ファンも大勢いる。
複数の日本車旧車を所有するオーナーいわく、「カリフォルニアは旧車に厳しく排ガス規制も厳格で税金も高い。州としてはEVに行かせたいんでしょうね。物価も高く今は一軒家も買えないほど高騰しましたが、やはりカリフォルニアは気候が最高」
「旧車オーナーでカリフォルニアに住んでいる人たちはカリフォルニアの気候に魅力を感じて頑張って暮らしている感じです」
たしかに自然環境ばかりはお金を出して得られるものではない。
カリフォルニアの青い海と青い空、澄んだ空気は最高だ。
しかし、考えてみればこの「青い空」、「澄んだ空気」も1970年代から続く、カリフォルニア独自の厳しい排ガス規制によるところが大きいのかもしれないが。
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