この記事をまとめると
■インドネシアではさまざまな公共交通機関が存在する
アジアで目立った動きがない日本&欧州メーカーの「EV商用車」! 中・韓の動きを「静観」して見えるのは嵐の前の静けさか?
■乗り合いタクシーとなる「アンコット」はインドネシアで主要な移動手段のひとつだ
■インドネシアにおける公共交通機関の進化はスピード感がある
インドネシアの公共交通は多種多様
インドネシアの首都ジャカルタでは、鉄道以外にも多種多様な公共交通機関が存在する。
まずは一部で一般道路を走るものの、大半は専用道路を走り、鉄道のような改札を通過して鉄道のようなプラットホームで乗降するBRT(バス高速輸送システム)、日本各地を走る一般的な路線バスのような存在となるメトロトランスなどの路線バス、「オジェック」と呼ばれるバイクタクシー、日本では一般的に三輪ならば「トゥクトゥク」と呼ばれてしまいがちだが、ジャカルタでは「バジャイ」と呼ばれる三輪タクシー、そしてもちろん、日本でも広く使われているようなタクシーもある。さらに、乗り合いタクシーとなる「アンコット」という乗り物もある。
アンコットとはインドネシア語での「Angkutan(交通)」と「Kota(都市)」をかけあわせた造語となる。筆者がジャカルタを訪れ始めた10数年前では、ダイハツ・グランマックスベースに車体中部から後部を客席エリアに架装された車両が多かったが、最近ではスズキ・キャリイなどグランマックス以外もよく目にするようになった。
従来タイプのアンコットでは、冷房はなく、扉のない乗降口というスタイルが一般的であったが、現地事情通によると、安全上の理由があるのか、ここ最近になって乗降口に扉がつき、走行時には扉を閉めることとなったとのことであった。
2022年になると、公共バス事業者となる「トランスジャカルタ社」と提携した事業者車両では、エアコンのついた「ラグジュアリーアンコット」の運行サービスが始まったと現地メディアが報じており、2024年7月にジャカルタ市内を訪れたときに、実際にエアコン付きアンコットを見かけることができた。
アンコットにはもともと「停留所」というものはなく、道端で乗車意思を示すとドライバーがアンコットを寄せてきて乗車することになる。降車するときも降りる意思を示すとその場所に停まってもらえる。料金は降車時に支払うことになるが、その料金は筆者の経験した限りでは、はっきりしたものは決まっておらず、「時価」のような感じだった。なんとなくコースも決まっているようで、その意味では最近はすっかり見かけなくなって久しいが、日本でのタクシーの相乗りに似ているような印象を受けた。
しかし、トランスジャカルタ系のIC決済システム「JakLingko」を導入してからは、しっかりとルートが決まっているなど運行管理が行き届き、もちろんキャッシュレス決済ができる(ほかのアンコットでもICカードは使えるようだ/つまり明朗会計となっている)。しかも、降車は必ずしも停留所ではなくてもよいとのことである。
筆者のようなツーリストとしては、旧態依然としたアンコットのほうが親しみがわくのだが、日々利用する現地の人にとっては、利便性が高まることについては歓迎すべきことであり、社会が成長していくなかでさまざまなものが進化するのも当然の話である。
インドネシアの公共交通機関はスピード感がある
そんなアンコットだが、2024年7月にジャカルタ市近郊で開催されたGIIAS(ガイキンド・インドネシア国際オートショー)会場内に「ついに出たか」となる、BEV(バッテリー電気自動車)タイプの最新アンコット車両が展示されていた。
その車両は、すでにインドネシア国内で商用車として販売されているDFSK(東風小康汽車)製車両がベースとなっていた。ジャカルタ近郊のボゴール市交通局がすでに市内で営業運行を開始させており、その車両が展示されていた。事情通によると「まだ試験運行のような状況であり、市内で5台しか運行されていないようです」とのことであった。
すでにジャカルタ市内では一般路線バスレベルでもBEVバスの導入が進んでおり、BRT方式のトランスジャカルタでも導入間近となっている。タクシーでも中国BYDオート(比亜迪汽車)の車両の導入が進んでいる。
営業が制限されているバジャイは、いまでもICカード決済ができないなど、その意味では存続自体を危惧する声もあるが、同型車両のBEVがすでにインドで走っているところを筆者は確認している。二輪車のBEV化も昨今のガソリンの高値安定傾向を見ても進んでいくに違いない。
「庶民の足」の津々浦々まで電動化を進めようとするインドネシア政府と各地方自治体。街の景観を含め、これから数年ぶりにジャカルタを訪れるということになる人にとっては、公共輸送機関の近代化(BEV化も含む)や電子マネーなどの普及などなど、その変貌ぶりに驚くことは間違いないだろう。
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