現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > サイドウォールが路面に食い込む トヨタGRダカール・ハイラックス T1+マシンへ同乗

ここから本文です

サイドウォールが路面に食い込む トヨタGRダカール・ハイラックス T1+マシンへ同乗

掲載 2
サイドウォールが路面に食い込む トヨタGRダカール・ハイラックス T1+マシンへ同乗

ダカールラリーの優勝マシンを体験

昨晩の夕食会では、2022年のダカールラリーで総合優勝を掴み取ったドライバー、ナッサー・アル・アティヤ氏と冗談交じりに会話を交わした。フランス語を交えて、コ・ドライバーのマシュー・ボーメル氏とともに。

【画像】2022年の王者 トヨタGRダカール・ハイラックス T1+ ワイルドなマシンは他にも 全100枚

一夜明けて、いま筆者の身体が固定されているのは、ボーメルも座ったことのある助手席。運転席のアル・アティヤの右足は、アクセルペダルを完全に踏み倒している。目前に、きついヘアピンカーブが迫る。

減速する様子がないドライバーの横顔を見る。思わず、フランス語で「クソッ」と叫びそうになった。

次の瞬間、トヨタGRダカール・ハイラックス T1+は急激に向きを変え、真っ赤な砂埃に包まれた。コーナーを立ち上がり、再び加速が始まる。

勇ましい走りは、外から眺めていれば、素晴らしい光景かもしれない。だが、車内での体験は別物。F1マシンの車載映像のように、周囲を流れる景色の速さを理解することができない。乗っているのは、車重2tのピックアップトラックだ。

今回筆者が招かれたのは、スペイン・バルセロナ郊外に広がるモントセラト山脈の麓。200ヘクタールという広大な敷地の、もと牧場だ。ロックダウン中に開発が進められ、現在はリゾートホテルのような建物付きのラリーコースが敷設されている。

オフロードを思い切り走りたいドライバーにとっては、夢のような場所かもしれない。そこに用意されていたのが、GRダカール・ハイラックス T1+。ダカールラリーの優勝マシンがどれほど有能なのか、確かめさせてもらうことができた。

ジャンプの着地を滑らかにこなす

果たしてその実態は、凄まじいポテンシャルだった。ボウラー・ブルドッグですら、生やさしいと表現したくなるほど。

先程通過したヘアピンは、このコースでは見せ場の1つ。ハイラックス T1+の能力が顕となるセクションといえる。

さらに、第2コーナーの先に大きなジャンピングスポットがあり、ここが1番のハイライト。ピックアップトラックが、2m近い高さまで勢いよく空中に飛び出す。サスペンションを縮め着地すると、その直後に下り坂のきつい右コーナーが待っている。

ハードコアにスイッチ類が並んだコクピットで、初体験といえるような時間が過ぎる。2周目からは、先ほど巻き上げた砂埃が残るなかを突き進む。正直いって、筆者が求める以上の興奮の連続といえる。

高速で走るハイラックス T1+が、ジャンプの着地も滑らかにこなすことへ感嘆する。減衰力は、強烈な負荷がかることを前提に、綿密に調整されているのだろう。

このマシンは、基本的にディーラーで購入できるハイラックスとは別物。スタイリングは似せてあるが、ボディパネルはすべてカーボンファンバー製だという。専用のチューブラー・フレーム構造の上に、被せられている。

また、今回助手席に座らせてもらったクルマは、開発用のプロトタイプ。ランドクルーザー譲りの3.5L V6ツインターボではなく、5.0L V8自然吸気が搭載されている。2021年のダカールラリーを走った、ハイラックスのユニットだそうだ。

サイドウォールが不規則な地形に食い込む

だとしても、能力の高さは変わらない。エンジンは、チューブラー・フレーム・シャシーの中央、低い位置に押し込められている。

サスペンションは、前後ともにダブルウイッシュボーン式。2022年の本番仕様とは異なり、ダンパーはタイヤ1本につき2本が組まれている。この構造は、夜の限られた時間でのメンテナンスには手間だという理由で、最終的には軽量な1本へ変更された。

タイヤは大きい。2022年のT1+クラスの規定として、最大許容直径が32インチから37インチへ拡大されている。

ドライバーのアル・アティヤは、運転中は無口。というべきか、エンジンとストレートカット・ギアの6速シーケンシャルMTが発するノイズが大きく、会話は難しい。クルマから降りた後で、アップグレードが革新的な変化をもたらしたと教えてくれた。

サスペンションのストローク量が長くなったことで、まとまりのある、ニュートラルな操縦特性を得たという。コーナーでの姿勢制御が容易になり、高速化にも繋がったようだ。タイヤの直径が大きくなることで、加熱量は小さくなり、不具合も減らせる。

肉厚なタイヤは、アル・アティヤの激しいコーナリングで威力を発揮していた。ブレーキングを可能な限り遅らせ、その直後にテールがスライドし始める。タイヤのサイドウォールが不規則な地形に食い込み、摩擦でスピードが一気に落ちていく。

アル・アティヤの無駄のない動きに驚く

物理ブレーキを使う時間は、極わずか。ステアリングホイールを回す時間も一瞬。減速し、きっかけを与え、コーナーの頂点を過ぎる前にアクセルペダルを傾け始める。ハイラックス T1+が充分旋回するまで挙動を確かめながら、加速できる瞬間を待つ。

フロントが外側にスライドし始めたら、長いハンドブレーキ・レバーを引き上げ、テールを振り出させるのだろう。予想通りフロントノーズの向きが変われば、若干のオーバーステアを保ったまま、一気にエンジンを吹かし始める。

助手席の筆者は激しいボディの動きに翻弄されるが、アル・アティヤの無駄のない動きにも驚かされる。明らかに安定しないオフロードで、ピックアップトラックを巧みに制御していく。

外から見ていたら、その獰猛な走りから、ドライバーの冷静な操作を想像できないだろう。車重1t程度のハッチバックのラリーマシンと同じように、道幅いっぱいを使ってドリフトするのだと話していた。

レーシングカーであり、ブルドーザーのようでもあるハイラックス T1+だが、ボディサイズや車重を手懐けられれば可能なようだ。確かに、高速で流れるように疾走する。

今までの概念が通用しないような体験だった。全開に近い走りだったのか、アル・アティヤに聞いてみる。優しく微笑みながら、60%から70%くらいですね、と答えてくれた。

「特に攻めてはいません。いい感じのリズムだったと思いますよ」。トヨタの技術者は、素晴らしい身のこなしを大きなハイラックスへ与えたらしい。

トヨタGRダカール・ハイラックス T1+(2022年仕様)のスペック

英国価格:−
全長:4810mm
全幅:2300mm
全高:1890mm
最高速度:168km/h(FIA規定)
0-100km/h加速:12.0秒
燃費:−
CO2排出量:−
乾燥重量:2000kg(FIA規定)
パワートレイン:V型6気筒3444ccツイン・ターボチャージャー(試乗車はV8自然吸気)
使用燃料:ガソリン
最高出力:405ps
最大トルク:67.2kg-m
ギアボックス:6速シーケンシャル・マニュアル

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

46台の輸入EVが丸の内に集結!「JAIA カーボンニュートラル促進イベント」リポート
46台の輸入EVが丸の内に集結!「JAIA カーボンニュートラル促進イベント」リポート
LE VOLANT CARSMEET WEB
【プロカメラマン】が大量画像で記録!「腐っていたKLXが終に熟成!四国MSBR撮影後の修理と詰めの改良!」(最終回)  
【プロカメラマン】が大量画像で記録!「腐っていたKLXが終に熟成!四国MSBR撮影後の修理と詰めの改良!」(最終回)  
モーサイ
「運転席の横に“クルマが踊っている”スイッチがありますが、押したら滑りますか?」 謎のスイッチの意味は? 知らない「使い方」とは
「運転席の横に“クルマが踊っている”スイッチがありますが、押したら滑りますか?」 謎のスイッチの意味は? 知らない「使い方」とは
くるまのニュース
ホンダが全固体電池のパイロットラインを初公開。一連の生産工程を再現しながら徹底検証
ホンダが全固体電池のパイロットラインを初公開。一連の生産工程を再現しながら徹底検証
Webモーターマガジン
ランボルギーニ、WEC参戦“休止”を発表。ハイパーカー、LMGT3共に撤退……IMSAとテメラリオGT3開発に専念か
ランボルギーニ、WEC参戦“休止”を発表。ハイパーカー、LMGT3共に撤退……IMSAとテメラリオGT3開発に専念か
motorsport.com 日本版
EVの充電がプラグを接続するだけに! Terra Chargeがプラグアンドチャージ対応EV充電器を2025年度から設置開始
EVの充電がプラグを接続するだけに! Terra Chargeがプラグアンドチャージ対応EV充電器を2025年度から設置開始
THE EV TIMES
世界最高峰のラリーストが日本に集結した! ラリージャパンのオープニングは2台同時走行のSSバトル!!
世界最高峰のラリーストが日本に集結した! ラリージャパンのオープニングは2台同時走行のSSバトル!!
WEB CARTOP
マツダが「超凄いロードスター」公開! 2Lで200馬力×幌仕様で登場!? こだわり“リアスポイラー”にも注目!? 限定で明かされた内容とは
マツダが「超凄いロードスター」公開! 2Lで200馬力×幌仕様で登場!? こだわり“リアスポイラー”にも注目!? 限定で明かされた内容とは
くるまのニュース
スタイリッシュでカッコイイ! アキュラ「ADX」世界初公開  1.5リッターVTECターボを搭載する全長4.7mの高級コンパクトSUV
スタイリッシュでカッコイイ! アキュラ「ADX」世界初公開 1.5リッターVTECターボを搭載する全長4.7mの高級コンパクトSUV
VAGUE
2億年前の石材を使ったベントレー!? 「テクスチャー表現」に匠のワザ光る4台
2億年前の石材を使ったベントレー!? 「テクスチャー表現」に匠のワザ光る4台
レスポンス
SS12は“安全上の問題”でキャンセルに。SS11を終えた時点でトヨタ勝田貴元は総合3番手|WRCラリージャパンDAY3午前
SS12は“安全上の問題”でキャンセルに。SS11を終えた時点でトヨタ勝田貴元は総合3番手|WRCラリージャパンDAY3午前
motorsport.com 日本版
トヨタ大逆転か、ヒョンデ初の3冠か。勝田貴元が握る、タイトル防衛のカギ【ラリージャパンの見どころ】
トヨタ大逆転か、ヒョンデ初の3冠か。勝田貴元が握る、タイトル防衛のカギ【ラリージャパンの見どころ】
AUTOSPORT web
フェラーリ、予想通りタイヤのウォームアップに苦労。ルクレール「レースペースは良い。逆よりマシだ」
フェラーリ、予想通りタイヤのウォームアップに苦労。ルクレール「レースペースは良い。逆よりマシだ」
motorsport.com 日本版
スズキ「ジムニー」の“スライドドア仕様”を初公開!? アウトドア最強の「本格オフロード」モデル実車登場! めちゃゴツ顔の「エブニイ SPIEGEL」に反響続々!
スズキ「ジムニー」の“スライドドア仕様”を初公開!? アウトドア最強の「本格オフロード」モデル実車登場! めちゃゴツ顔の「エブニイ SPIEGEL」に反響続々!
くるまのニュース
「昔あったなぁ」装備 「燃料コック」操作したことありますか?
「昔あったなぁ」装備 「燃料コック」操作したことありますか?
バイクのニュース
アルファロメオ、日本初導入となる『ジュリア』左ハンドル車のカスタマイズプログラムを実施
アルファロメオ、日本初導入となる『ジュリア』左ハンドル車のカスタマイズプログラムを実施
AUTOSPORT web
フェラーリ代表、選手権争いに向け「自分たちの潜在能力に自信を持っている」ラスベガスでは好結果を残せると確信
フェラーリ代表、選手権争いに向け「自分たちの潜在能力に自信を持っている」ラスベガスでは好結果を残せると確信
AUTOSPORT web
【1970年代国産GTカーに思いを馳せて】光岡自動車からM55の市販バージョンが登場!
【1970年代国産GTカーに思いを馳せて】光岡自動車からM55の市販バージョンが登場!
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

2件
  • 楽しそうだな。いっぺん乗せてもらいたいもんだ。
  • トロフィートラック。

    そしてこれらのマシン。

    足の長さで何でも踏み潰す豪快な走破性能。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

407.2477.2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

89.0690.0万円

中古車を検索
ハイラックスの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

407.2477.2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

89.0690.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村