自動運転はEVだけのものじゃない!
ホンダ・レジェンドが世界初となる「レベル3」の自動運転システムを搭載し型式認定を受け、市販化されたと話題になっている。レベル3は「一定の条件下で機械に運転を任せ、ドライバーはスマホを見たりナビ画面を操作したりできる」というもの。複合条件として、いつでもドライバーは運転操作に復帰できなければならないこととなっている。まだまだクルマにすべてを任せてドライバーは居眠りしていても大丈夫という段階ではない。
レーシングドライバーでも操れない! 運転が難しすぎる市販車3選
一方、北米では電気自動車(EV)テスラによる自動運転中の事故が頻発している。テスラのシステムは日本の運用基準で言えばレベル3の認可を得ておらず、完全に運転を任せていいとう領域には達していない。自動運転とEVは、同じ電気仕掛けという見方からかセットで考えられがちだが、実際はガソリンエンジン車でもハイブリッド車でもシステムの搭載は可能だ。電動ステアリングや電制スロットル(アクセル)、ブレーキバイワイヤー(電制ブレーキ)などが備わっていればセンサーとCPUの追加で自動運転化できるのだ。
2015年にホンダが栃木プルービンググラウンドで開催した「メディア・ミーティング」では興味深い体験をさせてもらった。当時のホンダ・アコードにこうした自動運転アイテムを追加装備し、完全自動運転車を完成させて体験試乗をさせてくれていたのだ。
コースは本田技術研究所・栃木プルービンググラウンド内のハンドリング路。ショートサーキットとワインディング路の要素を合わせた1周2km弱のコースだ。テストコースなだけに所々にバンプが設定され、また路面のミューも変化している。われわれプロドライバーでも高速で攻めるのは難しい。そこをアコードの完全自動運転車両が全開で走行する。ドライバーシートは完全無人で、体験試乗者は後席に乗せられた。何か異常が起こっても手も足も出せない状況だ。
ゴーサインが出ると、アコードはスルスルとコースイン。すぐにフル加速してコーナーを攻め始める。無人の運転席ではステアリングホイールが右左に自動で動き、車両をコントロールしている。スリッピーな路面ではアンダーを出しそうになるが、ステアリングの切り増しとスロットルコントロールで難なく切り抜ける。120km/h以上出る高速コーナーではバンプで車体が跳ね、タイヤからは派手なスキール音が聞こえてくる。「本当に大丈夫か!?」と身構えたが、アコードは熟練ドライバーのようなコントロールで見事にクリアしていった。
そんな体験試乗を何人も繰り返し安定して行っている。走行回数が増せばタイヤのグリップや内圧の変化による特性変化も起こっているはずだ。そうしたコンディション変化もフィードバック制御し、何事もないように、微塵もミスすることなく周回している。
GPSを使ってコース上の位置を定め、センサーで車両状況をモニターしていて常時フィードバックしている。高速で走らせるのは、じつはデータプログラムが簡単なのだという。テストコースでは対向車もいないし、歩行者も交通ルールも存在しない。ただタイヤのグリップの最大値を引き出して最速で走れればいい。タイヤがバーストしたりスピンしそうな状況では通常装備のVSA(ビークルスタビリティアシスタンス)が機能して車両を安定化させるので問題ないという。
手放し可能とかではなくいかにスムースな交通社会にできるかが鍵
このときの経験で、モータースポーツはタイムアタックなら完全に無人化できると確信した。しかし、レースとなるとそのままでは適合できない。前を走るクルマを追い抜き、後方から追い越しをかけてくるクルマをブロックするなどの駆け引きが必要になる。さらに搭載燃料による重量エフェクトとタイヤの摩耗、グリップ変化をレースディスタンスの中で使い切るように演算する必要もあるだろう。
アクシデントの際にいかに対応するか、ピットイン/アウトのタイミングや路面のデブリ対応など、プロのレーシングドライバーにとっても対応の難しい課題は多い。これらを克服していくことで、いつかは一般道でも役立つ自動運転システムに発展できるかもしれない。よく言うのだが、一般道を走るのはレースで走るよりはるかに難しく、恐ろしい。歩行者とクルマが共存する市街地など、できれば運転したくないと思ってしまうほど。
つまりレースで使える自動運転のプログラムより、一般道、市街地で安全に走れる自動運転システムを構築するのはケタ違いに難しいことなのだ。
そこで提案したいのは「カーtoカー」の通信。クルマ同士が通信で繋がっていれば、交差点の通行や進路変更、事故回避などで極めて有効に作用すると考えられるのだ。プロドライバーはつねに2~3台先のクルマの状況を観察して事前察知に務めているが、クルマ同士が繋がることで予見性ははるかに高められる。さらに言えば、歩行者やドライバーの持つ携帯電話から通信をフィードバックすることで急な歩行者の飛び出しや夜間、雨天など視界が悪い状況にも対応できるようになる。
レベル3とか、手放し運転とか見た目の「自動化」にこだわる前に、クルマ同士、歩行者との通信を可能にして安全な交通環境の確立を優先させてもらいたいと思うのだ。
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みんなのコメント
レーシングドライバーもピンきりだからなぁ