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F1のドライバー冷却キットはどんなモノ? 単純そうに見えるけど「複雑な挑戦だった」

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F1のドライバー冷却キットはどんなモノ? 単純そうに見えるけど「複雑な挑戦だった」

 F1は2025年シーズンに向けて、過酷なコンディション下でドライバーを冷却するシステムの導入を承認。そのシステムの詳細が明らかとなった。

 昨年のカタールGPでは酷暑の中、体調を崩すドライバーが多く出たことを受けて、FIAはドライバーの冷却について検討を進めてきた。そして数ヵ月にわたる研究とテストを経て、2024年11月、F1委員会はドライバー冷却キット導入の計画を承認した。

■F1に導入されるドライバー冷却キットはどんなモノ? 初年度の2025年はクールスーツだけど……チームに独自開発許される

 新たにヒートハザード規定が導入され、FIAの公式気象レーダーが30.5℃を超える気温を予測した場合、またはレースディレクターが事前に宣言した場合に適用される。この場合、チームはドライバーに冷却システムを装備させる義務が生じる。

 今回motorsport.comの取材で、アメリカのチルアウト・モータースポーツ社が製作した冷却システムがどのように機能するのか、その目的、開発、技術的背景の詳細を明らかになった。

 チルアウト・モータースポーツは医療、軍事、海事、航空、自動車といった、レース以外の分野にも関与しているが、フォーミュラEの充電中のバッテリー温度を管理する技術や、WECやNASCARなどさまざまなカテゴリーでドライバーの冷却を改善するソリューションを開発するなど、モータースポーツでの実績は十分だ。

 新システムの開発は、チルアウト・モータースポーツがFIAから同社のシステムをF1に適用できないか打診を受けた昨年初頭から始まった。

 サイファー・プロ・マイクロ・クーラーと呼ばれるその技術は、F1の要求に適応するために再設計され、小型化する必要があった。

 冷却システムはコンプレッサーや熱交換ユニットが入ったボックスと、ドライバーがスーツの下に着用する耐火シャツで構成される。

 シャツには、ドライバーの胸と背中を包むように配置された、長さ合計約48メートルのチューブがついている。これらのチューブがボックスに接続され、流体(空気、水または塩化ナトリウム、塩化カリウム、プロピレングリコールの混合溶液)が流れてドライバーを冷却する。

 チルアウト創業者のチャールズ・クレインの説明によれば、安全上の理由からFIAからの要求が厳しかった難燃性シャツの認証が最も難しかったという。

「FIAが我々に接触してくる前に、我々はすでにFIAの承認が得られるようなクーリングシャツの開発に着手していたんだ」

「我々はそのプロジェクトに3年間取り組んできた。FIAのルールは非常に厳しいので、本当にチャレンジングなプロジェクトだ。単にFIAの承認を得たモノを作りたかったわけではなく、実際に機能性が高く、軽量で、ドライバーが着用したいと思うようなものを作りたかったんだ」

「以前は素材を2層にせずにシャツを製造する方法がなかったからだ。つまり基本的には2枚のシャツの間にチューブを挟んでいたんだ」

 チューブは機能的である必要があるが、FIAが求める耐火性を満たさなければならなかった。適切な伝導性、柔軟性、耐久性を保証するために4つの異なる素材を使用しているという。

「何百種類もの素材を何年もかけてテストした結果、伝導性でありながら難燃性で、あらゆる温度で曲げられるチューブの配合を考え出すことができた」

「簡単なことのように聞こえるが、チューブは冷えると硬くなり、熱くなると柔らかくなりすぎるんだ。火がつけば溶けてしまう」

「チューブをTシャツに縫い付けただけのように見える。しかし、これらのチューブを機能させ、さらに軽量で快適、伝導性、そしてもちろんFIAにとって最も重要な安全性を持たせることは、複雑な挑戦だった」

 F1チームにとってこれは全く新しいシステムである。特に現在のマシンは、冷却装置用の追加スペースを考慮して開発されておらず、システムの適切な設置場所を見つけるために、想像力を働かせる必要があった。

 チルアウト・モータースポーツにとっても、液体を冷却するために必要な計器類を収めたボックスを再設計することよりも、むしろそれを車内のどこに配置するかということが問題だった。

 ボックス内のエレメントは他のカテゴリーでも使用されているようなモノだが、チームの要求に合わせてカーボンファイバー構造に。実際、チームごとに要求が異なるため、ボックスの位置を決めるだけでも多大な協力が必要だった。

「冷却システムは我々にとっては非常に簡単だ」

 そうクレインは説明する。

「冷却システムで唯一難しいのは、シャシーに取り付けることだ。チームはこれまでこのシステムを導入したことがなかったからだ」

「このクルマにはどこにもスペースがないんだ。ペダルボックスの後ろ、サイドポンツーンの中、シートの後ろ……どこでもいいから、マシンに載せて適切なテストができるように、一時的にスペースを確保しようとしているんだ」

 少なくとも初年度は、各チームがそれぞれのニーズに合わせたソリューションを用意することになる。それがレギュレーション上システムの搭載位置がある程度自由である理由だ。

 またこのシステムが使用される場合、FIAは車両の最低重量を5kg引き上げることを保証している。

 システム自体の重量は2kg弱と軽量なものの、2026年までマシンの電気構成を変更しないことが決定されたため、外部バッテリーパックを介してシステムを駆動することになるためだ。

 2026年以降の次世代マシンでは、最初からこのシステムが搭載されることが前提となり、マシンから電力を供給できるため、この条件は変更されることになるだろう。

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