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アウトウニオンにサーブ、ネッカー、ランチア 1960年代の小さなファミリーカー 後編

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アウトウニオンにサーブ、ネッカー、ランチア 1960年代の小さなファミリーカー 後編

4台で最も運転が楽しいアッピア

1959年発売のランチア・アッピア・シリーズ3は、その気になれば130km/h近いスピードを出せる。120km/h程度での高速巡航も可能で、燃費は10.0km/Lから14.0km/Lの間だ。

【画像】1960年代の小さなファミリーカー アウトウニオンにサーブ、ネッカー、ランチア 全43枚

V型4気筒エンジンは、上から見ると正方形に近いブロックに、両バンクへ独立したヘッドが組まれている。アクセルペダルのレスポンスは鋭い。パワー感が落ち込む谷もなく、高回転域まで滑らかに回る。

味わい豊かなサウンドを放ち、変速をサボっても受け止められる充分なトルクがある。思わず、意欲的に運転したい気持ちにさせられる。

ランチアの中間ギアは、アルプス山脈の峠越えに丁度良さそうだ。シンプルな構造のステアリングは正確で、コーナリングはニュートラル。4台のなかで、最も運転が楽しいといえる。

タイトなコーナーを曲がると、適度にボディが外へ傾く。グリップ力に不足はない。ボディが歪んで、ドアがきしむようなこともない。乗り心地も良く、路面の凹凸を超えてもスムーズにいなしてくれる。

滑りやすいロータリー交差点では、軽くテールスライドさせることも容易。一方のネッカーは、ステアリングホイールの感触が曖昧。アンダーステアも強い。

それでも、戦前にフィアットが設計したプッシュロッド直列4気筒エンジンは、ランチアに迫る洗練度を備えている。発進時はたくましく、トップギアでも充分に加速させる余裕もある。

リジットアクスルで支えるリアタイヤは、挑発的な操作せずとも、グリップ力を超えてしまう。ブレーキも、アウトウニオンより感触は確かなものの、ランチアが採用する大きなドラムブレーキほど制動力は強くない。

基本的に安定したサーブとアウトウニオン

3気筒の2ストローク・エンジンを積むサーブ96は、コーナリングが軽快でフラット。ステアリングが重いアウトウニオンより、機敏に旋回していく。

サーブもアウトウニオン1000 Sもフロントドライブで、走りは基本的に安定している。最低地上高は高く、乗り心地は少々落ち着きに欠けるものの、人を乗せて重くなるほど改善するようだ。

今回の4台は、ともに0-97km/h加速時間が20秒前後。唯一、サーブが19秒代に乗せているが、スピード違反に怯える心配はないだろう。

そんな動的能力以上に強い印象を与えてくれるのが、明確な個性。どれもが、当時の生産国の色合いを良く表していると思う。グローバル化が進んだ21世紀の同等モデルでは、叶えることが難しい。見た目だけでなく、音や匂いですら、そう感じさせる。

順番に試乗してみると、陽気で活発な性格を持つフィアット1100のライセンス生産版、ネッカー・ヨーロッパに思わず心が奪われる。運転のしやすさへ軸がおかれた、幅広い訴求力を備えたコンパクト・ファミリーカーだ。

それと好対照なのがサーブ96。すべてが、ラテンとは違った考え方で作られている。ドアのガラスですら、開き方は個性的。過ごす時間が長くなるほど、良くわかり合える。96も、ドライバーを満たしてくれる。

クラス水準を遥かに超えたソリッドな品質

アウトウニオンは、フォルクスワーゲン・ビートルのオーナーなら理解できる、典型的なドイツ車だと思う。しかし、2ストローク・エンジンのパワー不足を、充分にカバーできていない。1960年代でも、旧時代のクルマに感じられたかもしれない。

直列3気筒2ストロークの白煙と目新しさに慣れてくると、小さなランチアが強く心に残っていることを意識する。心地良い、デザインやドライビングの印象を忘れられない。このクラスの水準を遥かに超えた、ソリッドな品質で仕上げてある。

あえて難しいことに挑もうとするランチアらしさが、小さなアッピアにも落とし込まれている。環境汚染や衝突安全性を優先することなく、ブランド・アイデンティティとしてスタイリングや技術を追求することが許された時代の、平和な小型車だ。

ランチアに限らず、1950年代のエンジニアは、時代の流行と税制を意識していれば充分といえた。歩行者がボンネットにぶつかることや、排気ガスが与える自然への影響を、強く意識する必要はなかった。

その結果、当時の英国車とは明らかに違う、今回の4台のような個性的なモデルが誕生したのだろう。家へ連れて帰るならどれにしようか、すぐに選ぶことは難しそうだ。

アウトウニオンにサーブ、ネッカー、ランチア 4台のスペック

アウトウニオン1000 S(1958~1963年/英国仕様)

英国価格:1240ポンド(新車時)/1万2000ポンド(約186円)以下(現在)
生産台数:17万1008台
全長:4216mm
全幅:1694mm
全高:1465mm
最高速度:128km/h
0-97km/h加速:23.0秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:895kg
パワートレイン:直列3気筒980cc自然吸気(2ストローク)
使用燃料:ガソリン
最高出力:50ps/4000rpm
最大トルク:8.4kg-m/2250rpm
ギアボックス:4速マニュアル

サーブ96(1960~1967年/英国仕様)

英国価格:1058ポンド(新車時)/1万2000ポンド(約186円)以下(現在)
生産台数:54万7221台
全長:4172mm
全幅:1580mm
全高:1454mm
最高速度:144km/h
0-97km/h加速:19.0秒
燃費:9.6km/L
CO2排出量:−
車両重量:816kg
パワートレイン:直列3気筒841cc自然吸気(2ストローク)
使用燃料:ガソリン
最高出力:55ps/5000rpm
最大トルク:8.2kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

ネッカー・ヨーロッパ(フィアット1100 D/1962~1966年/英国仕様)

英国価格:800ポンド(新車時)/5000ポンド(約77万円)以下(現在)
生産台数:40万8997台
全長:3912mm
全幅:1448mm
全高:1498mm
最高速度:128km/h
0-97km/h加速:21.0秒
燃費:10.3km/L
CO2排出量:−
車両重量:934kg
パワートレイン:直列4気筒1089cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:48ps/4800rpm
最大トルク:8.0kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

ランチア・アッピア・シリーズ3(1953~1963年/英国仕様)

英国価格:1587ポンド(新車時)/1万2000ポンド(約186円)以下(現在)
生産台数:9万8027台
全長:4020mm
全幅:1473mm
全高:1448mm
最高速度:132km/h
0-97km/h加速:23.7秒
燃費:12.7km/L
CO2排出量:−
車両重量:920kg
パワートレイン:V型4気筒1090cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:48ps/5000rpm
最大トルク:8.6kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

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