この記事をまとめると
■WEB CARTOP井上がメディア対抗ロードスター4時間耐久レースに参戦
突如「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」へ参戦の指令! 「国内Aライセンス」取得に若手編集部員が挑戦してみた
■初レースということもあり、わからないことだらけのまま実戦に挑んだ
■初参戦ながら表彰台に上がるという結果を手に入れた!
ついにやってきた栄光のメディア対抗ロードスターレース!
以前の記事で、「4耐にお前が出ろ」と突如言い渡され、レース本番前に国内Aライセンスを取る羽目になったボンクラ井上。今回はその本番である、9月9日に茨城県の筑波サーキットで開催された「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」の本戦リポートをお届けする。そもそも、ライセンス取得はまだこの企画の入口であり、こちらが本番なのだ。
さて、もうすっかり業界の内外で知れ渡っている「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」とはそもそもなんなのか? という人に向けて改めて説明したい。
このレースはその名のとおり、「メディア」が「ロードスター」を使って「4時間耐久レース」を走るという至ってシンプルなレースだ。ここでいうメディアは主に、自動車関連のニュースを扱う媒体のことで、ハードは問わない。なので、雑誌はもちろん、テレビやラジオなど、マツダ側から招待された一部メディアが参戦できるといったもの。ちなみに今回の開催で34回目という歴史の長いレースでもあるのだ。さらに言うと、「これに出たいから業界に入った!」なんて人もいるんだとか。
車両はそのとき販売されているロードスターのワンメイクカーを使用する。チューニングは工場出荷状態から一切されておらず、レースに必要なロールケージやフルバケットシートといったパーツが装着されている。レース前に新品のブレーキパッドやタイヤ、オイルなどのケミカル類だけが新たに用意される。そのほか改造は一切禁止(過去のレースはちょっとした改造もOKだったようだ)で、厳格に定められた車検もある。立派なJAF公式戦でもあるので、正真正銘のワンメイクレースというわけだ。
そしてこのレースの面白いところはもうひとつある。それが、燃費レースであるという点。1周2km強の筑波サーキットを、ドライバー交代などを含めて4時間ずっと走るのだが(完走時で150周前後になる)、使えるガソリンは「満タン+20リットル」と決まっている。「余裕じゃん」と思えるかもしれないが、レースでもあるので、平均時速100km/h出ないくらいの速度で周回しないと勝負にならない。さらに、ライバルチームに抜かれないように走らないといけないので、その分アクセルも踏む。つまり、燃費が非常に厳しいのだ。
ボンクラ井上がまだ普通の井上だったころ、何度かピットクルーとして手伝いに行っているのだが、残り数分でガス欠でリタイヤしている記憶があるし、そのようなチームが実際に続出する。
なお、ドライバーは編集長以上の役職者が必ず出なければならないなどの条件があるが、チームからの招待などがあれば誰でも走れる(ライセンスや装備は必須)。現役のGTドライバーやレジェンドレーサーなども多く出場しているのだ。
NDロードスターのインジェクター容量を元にした計算式や、回転数縛り、ヒール&トゥ禁止などなど、さまざまな作戦を用意して、クルマに携わる人たちの本気バトルが繰り広げられるというわけだ。
そんな小難しいレースに、ライセン取得からたった6日のボンクラが挑むのだ。
実戦は初めてなので何もわかりません!
今回の「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」には全部で21チーム参戦する。我々CARトップチームは第1回大会から出続けている貴重な皆勤賞チームでもあるのだ。ただし、1位になったことは1度もなく、最高は2位止まりとのこと。
このレースは、4人以上のドライバー登録が必要なのにも関わらず、別記事に記載のとおり、筆者はルールをよく見ずに3人で参戦手続きをしたせいで、「あとひとりの枠はお前が走れ」となって、急遽ドライバーになったというのが事の顛末なのだが、なんとなくレースを見てたりしてるだけの知ったか小僧なので、いざ道具を揃えて、ライセンスを持ってピットに来ても「何すればいいんですか?」とまるで木偶の坊。
車検や装備チェックを済ませた車両を使って、初歩中の初歩である「乗り方」や「降り方」を練習することに。スーパーGTやル・マン、ニュル24時間耐久のピットシーンでよく見る”アレ”とまったく同じことだ。緊張感を持ってやりながらも、同じことをやっていることに少し感動を覚えたのはナイショだ。
あの映像を見ていつも、筆者は何度も言うようにボンクラなので、「ベルトなんて自分で締めればいいじゃん」とか舐めたことを思っていたのだが、ヘルメットにHANSをしていると、まぁベルトの位置だのなんだのがわからないのなんの。そりゃ手伝って貰わなきゃ一生スタートできないわけだ。「百聞は一見にしかずとはこのことか!」と、この瞬間妙に納得した。
その後、筑波サーキット自体は何度か走ったことはあるものの、ロードスターで走ったことない筆者は、練習走行を1度させてもらうことに。クルマに慣れることはもちろんだが、一応本番を想定しての燃費走行なども行いつつ、目標タイムが出せるようテクニックがないながらもなんとか調整。ひとまず”なんとかなる”くらいの感覚は掴むことはできた(はず)。
さて、なんやかんやでバタバタしてたらいよいよ午後4時から始まる「第34回メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」のスタートが迫ってきた。勘のいい人ならわかると思うが、なんとこのレース、ナイトセクションがある。「ど素人にはいろいろキツすぎるだろ!」と思ったのもここだけの話。
ちなみに今回の参加ドライバーは以下だ(出走順)。 ・石田貴臣(WEB CARTOP&CARトップ編集部の局長)
・中谷明彦(お馴染みのレーシングドライバー)※最終スティントも担当
・井上悠大(国内Aライセンス取って6日目のボンクラ)
・松本玲二(サマーソングでお馴染みのTUBEのドラマーでスーパー耐久などに参戦歴あり)
グリッドは9番手と可もなく不可もない真ん中ちょい上(予選の結果)。ただ、ここから上がるのか落ちるのかなんとも言えない。それに、スタートしてすぐに順位を上げようが下げようが、結果は4時間後までわからないから、周回ごとに一喜一憂していてもあまり意味がない。「最後まで結果はお楽しみ」、これが耐久レースの醍醐味だ。
そして迎えた午後4時、ローリングスタートから4時間にも及ぶ耐久レースの火蓋が切って落とされた。筆者はだいたい1時間半~2時間後の出番ということなので、ピットのモニターで順位を確認しつつ、たまにホームストレートを見ることにした。スタート後、レースは順調に進んでいたのだが、スタートから1時間ほどしてあることに気づく。待て待て。なんと99号車の「CARトップ/WEB CARTOPロードスター」が、なんとなんと1位にいるではないか! それも2位とのギャップを週を重ねるごとにつけている。これはマズイ! 非常にマズイ!
何がマズイかって、いまの段階でステアリングを握るのは、何度このレースに出ているかわからないほどのベテランのボス石田、続くドライバーはあの中谷さんだ。順位がここから一気に落ちるとは思えない。むしろギャップを広げる可能性が高い。
ということは、3人目のドライバーである私、井上は、初レース+ナイトセクションという状況に、さらに1位でバトンを受けるという大役が待っていることになる。これはさすがに責任が重すぎるのではないだろうか? 多分29年の人生で歩んできたなかで1番責任が重い気さえする。正直「冗談じゃない」と思った。しかし、せっかくなら勝ちたいので、抜かれてもらいたくもないし、抜かれる気もない(気だけ)。ただ、安全策をとってここは筆者の名前だけ貸して、F1ドライバーにでも乗ってもらいたいとも思った。
そんな複雑な気分のまま、無事に(!?)1位のまま、中谷さんがステアリングを握る99号車のロードスターがピットに入ってきた。いよいよ本番のレースを走る瞬間が訪れた。
最初のレースはまさかのハッピーエンドに!?
いよいよ本番のステアリングを握ることになり、お馴染みの筑波サーキット、それも真っ暗な夜のスティントへ向けて出発した。
今回の出走にあたって、レース前に何度も走ってきた先輩たちから受け継いだ技は以下だ。 ・回転は6000以下、できれば5500でシフトアップ
・ヒール&トゥは禁止
・燃費は6.5km/Lくらいを目指す
・タイムは1分15~18秒くらいで周回
・レースだから自分のラインで走れ。抜かれないようブロックしてもいい
言ってることはとても単純。単純だが、これがまた難しい。踏み散らかせば燃費が悪化するし、のんびり走ればレースにならない。このレースではインカムを使って通話ができるのだが、ピットからは案の定、聞きたくもないセリフが飛んでくる。
「2位とのギャップが20秒」「15秒」「8秒」「5秒」と、周を重ねるごとに追い上げられているのだ。実際、5周ないし6周くらい走ったところで呆気なくぶち抜かれてしまった! 「ほら見たことか」と、自分を責めたが逆に追う立場になったので、先人たちの苦労を無駄にして申し訳ないが、少し気が楽になったのも事実。
と、気合いを入れ直した矢先アクシデント発生! 1台が最終コーナーでコースアウトしてしまい、黄旗からのセーフティカーが入ってきた。お馴染みの「追い越し禁止」のやつだ。
しかし、これはいいぞ、かなりいい。なんせ、追い越し禁止で80km/hほどの速度で、前走車を抜かさないようにドライブするだけなので、何も恐れるものはない。それにもう自分のスティントの折り返しを過ぎている。少し味気ないが、これで順位が大幅に下落せずにバトンを次に繋げる。2位で申し訳ないが。
ただ、ここで奇跡が起こる。なんと1位だったクルマがピットに入ったのだ(ピットクローズされていなかった)。つまり、何もしてないのにまた1位に返り咲いたことになる!
こうなればもうこっちのものだ。セーフティカーが退いてからあと2周か3周抜かれなければ、「1位で出てって1位で帰ってくる図」が出来上がる。あれ? 完璧じゃないか!?
そして思惑通り、もうすぐピットインという頃合いでセーフティカーがいなくなった。あとは走り好き小僧の意地でとにかく踏みちぎって逃げた。セーフティカーランのおかげもあって、燃費が稼げたのも大きい。なのでその分とまではいかないが、可能な限り踏みっぱなしで逃げた。
その後無事にピットイン。TUBEの松本さんへとドライバー交代と給油を行い、ボンクラ井上、真夏の大冒険が無事に幕を閉じた。クラッシュせずに、順位も大きく交代せずに済み、ひとまず肩の荷が降りた。さあ、ここからは”ガス欠せずに”何位でフィニッシュするかだ。後半の2名に期待だ!
松本さんに交代してからもレースはその後順調に進み、いよいよ中谷さんへ最後のドライバー交代を行う。この時点での順位は、ずっと1位キープとまではいかず、8位ほどに下落。こうなれば、ガソリンに気をつけつつあとは追い上げるだけだ。
しばらく経ったところで、残りのガソリン残量や時間を考慮して、ピットからは「もっと踏んでいい」と、中谷さんに指示が飛ぶ。そして、残り時間が減るにつれて、なんと99号車の順位もじわじわと上がっていく。チームによってはこのタイミングでピットに入るチームなどもいたせいで、最後まで順位がわからないが、順位が上がっているのは間違いない。
そして残り3周ないし2周あたりで、ついに99号車は4位の位置につけ、3位とのクルマとテールトゥノーズ! 一瞬の隙があれば表彰台だ。
しかし、今回のレースは中谷さんの猛追も虚しく、結果は4位でフィニッシュ(暫定)となった。しかし、昨年のガス欠風景しか見ていなかった井上にとって、無事に完走しただけでも素晴らしいこと。
ただこのレース、なんと6位まで表彰が受けられるという。ボンクラ井上、何もしてないのに初戦でいきなり4位で表彰台に上がるという贅沢すぎる貴重な経験をさせてもらった。さらには、「スタートから1時間経過時点での1位に送られる」という特別賞、「BRIDE賞」というのも頂いた。
「レースに勝つとこの景色が見られるのか!」と、まさか自分がこんな場所に上がる人生がやってくるとは1ミリも考えていなかったので、なんとも不思議な気分だ。テレビでよく見る「シャンパンファイト(中身はスパークリングジュース)」なんていう機会も頂き、いきなり忘れられない経験ばかりを、この「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」で経験させてもらえた。あまりにもデキ過ぎているデビュー戦だったので、なんだか申し訳ない気持ちが出てきたのと、「シャンパンファイトって難しいなオイ!」という感想が浮かんだ。事実、シャンパンファイトの動画を見たら、非常にマヌケであった。
最後にひとつ。「4位でフィニッシュ(暫定)」という書き方をあえてしたのは、レース後の審議により、なんと我々の99号車は3位に繰り上げという結果になったからだ。細かい内容は割愛するが、最終スティントの中谷さんとの駆け引きのなかで、3位のクルマとアクシデントがあったようで、それが結果に反映され、順位が入れ替わったとのこと。
なので、表彰台では4位であったが、なんとなんと、デビュー戦で3位という実績を残す形となったのだ。チームの人たちのおかげなので、もはや数合わせで名前だけ貸したくらいにしか思ってないが、「お前が走れ」から始まった「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」は、初戦から美味しい思いばかりさせてもらった。
装備もライセンスもあるので、次回以降の開催はぜひもっと腕を磨いて、「俺が何かした」という実績を少しでも残せるような走りをしたいといまから模索中だ。走れるかどうかは別だが。それと、さすがに4人以上というレギュレーションなのはもう覚えたので、”脱ボンクラ”ということでひとつお願いしたい。
また、このような企画を34年も続けて頂いているマツダをはじめ、協賛企業の皆さまにはこの場を借りてお礼をしたい。ありがとうございました!
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