現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【ヒットの法則290】ボルボC30はスタイリングにこだわった新しいコンパクトの提案だった

ここから本文です

【ヒットの法則290】ボルボC30はスタイリングにこだわった新しいコンパクトの提案だった

掲載 更新 2
【ヒットの法則290】ボルボC30はスタイリングにこだわった新しいコンパクトの提案だった

2005年のパリサロンでボルボの3ドアハッチバッククーぺ「C30」が発表されている。S40をベースに開発されたモデルで、スタイリッシュなデザインで新しいライフスタイルを提案していた。このモデルは当時どう評価されたのか。日本上陸を前にスペイン・マヨルカ島で行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年3月号より)

全体的な軽快感が心地よい
世界的に見ると、本格SUVとしてデビューしたXC90にトップセールスの座が移り、基幹車種の交代といった大きな動きも出てきているボルボ。同社が、次なる成長株と期待するのがコンパクトクーペである。

【くるま問答】最近のクルマにテンパータイヤはない。パンク修理キットをどう使う? 最高速は?

2006年のデトロイトショーでコンセプトモデルを提示し、同年秋のパリサロンで生産型がデビューしたC30は、これまで実用車をファミリー層中心に供給していたボルボが若年ユーザーの取り込みに動いた久々のブランニューモデルだ。

シャシは、同じ2640mmのホイールベースが与えられたことからもわかるように、Cセグメント相当のS40/V50(セダン/ワゴン)と同じ小型プラットフォームを使うが、全長×全幅×全高が4252×1782×1447mmと、思い切ったショート、ワイド&ローフォルムとなったボディは、これまでのボルボとはひと味違う軽快な雰囲気だ。

形式としては3ドアハッチバックに分類されるのだろうが、張り出したショルダーラインはそのままに、ルーフラインなどテールエンド全体を軽やかに絞り込んでいる。しかも、リアゲートはウインドウ部分だけが開くガラスハッチ構造を採用。このC30の強力なアイコンとなりそうなリアビューは、過去にあったスポーツワゴン「P1800」や、2000年に発表した安全コンセプトカー「SCC」の流れを汲むものだ。

ハッチバックとなれば、より高い実用性を持つ5ドアの登場が期待されるところだが、ボルボの開発陣はこの問い掛けに対して即座に「ノー」と答えた。つまり、クーペ&カブリオレを示すCラインの末弟にあたるC30は、あくまでもスタイリングを重視したボルボ流解釈のコンパクトクーペなのである。

フェンダーやサイドシルを別色とする「ボディキット」を用意し、それらの組み合わせで好みの1台を作り上げられるあたりにも、そうしたスタイリングに対する強いこだわりが窺い知れる。

室内は2+2の4シーター。センターに寄せて設置されたリアシートはサイズが大きめで、クッションボリュームもしっかり取ってありボルボらしい生真面目さが感じられる。それに、長めのホイールベースを生かしてレッグルームも実用に耐える広さを確保している。とは言え3ドアのため、そこへのアクセスはフロントシートの肩にある電動スライドスイッチ操作と、バックレストの前倒しが不可欠。というわけで後席はあくまでも「添え物」だ。

メインとなるのはやはりフロントシート。乗員を取り囲むインパネ類はS40/V50とほぼ同じ形状だが、白黒モノトーンのシートにシルバーのパネルを用いたフローティングセンタースタック(背面が小物置き場になっている板状のセンターコンソール)から成るインテリアはシンプルな中にも「デザイン」を感じさせる北欧調でなかなか魅力的だ。

また、左右のドアミラーにカメラを設け、死角に入る後方の並走車を灯火式の警報で知らせるBLIS(ブラインドスポットインフォメーションシステム)の採用も、安全にこだわるボルボらしい部分だ。

搭載エンジンは本国では4気筒の1.6Lから豊富に用意されるが、今年後半と言われる日本導入では、おなじみの5気筒エンジン搭載モデルのみが入って来るはず。4気筒モデルには、ATの組み合わせが設定されていないからだ。

自然なフィールの熟成されたT5エンジン
今回マヨルカ島で試乗できたのは2.5Lターボエンジン搭載のT5。これはC30の中では最もスポーティなグレードで、トランスミッションは5速ATだった。

乗り味はS40/V50と共通の明確な接地感をベースとしながら、よりハンドリングを軽快にした感じ。ただし、いたずらに足まわりを締め上げるようなことはしておらず、乗り心地は当たりがマイルドな上にフラット感もあり快適だ。ステアフィールも、打てば響くような敏感さではなく、切った分だけ自然にノーズが入る。軽さとロー&ワイドのパッケージにより、ライントレース性が上がったことから全体の軽快感が増している、そんな趣きだ。

サスペンションは標準仕様と、そこから20mmのローダウンとなったスポーツサスペンション仕様の2つが用意され、共に17インチタイヤの組み合わせだったが、乗り味のバランスは標準仕様がベストだった。ただし、これだとホイールアーチの隙間がやや大きく、ルックス重視のC30としてはやや迫力に欠ける。

一方のスポーツサスペンション仕様は、ルックスは良いが、乗り心地は硬さが強調される傾向が目立った。今回は試せなかったが、オプション設定の18インチタイヤの方が相性は良いと思われた。日本導入モデルの仕様は現在検討中とのことだが、ユーザー側が選べるようになっているとありがたい。

パワーフィールはすでに他のボルボでもおなじみの5気筒エンジンのもの。刺激が強いタイプではないが、フラットで厚みのあるトルクを発生しており、軽量コンパクトなC30では、けっこう迫力のある加速を味わわせた。それに、音や振動などマナー面の改良も確認できた。この5気筒エンジンはすでに完熟期に入ったと思っていたのだが、ブランニューモデルへの搭載にあたりさらに進化させている点は評価して良い。

組み合わされる5速ATのギアリングも適切で、シフトフィールも滑らか。ただ、C30の性格を考えると、パドルシフトなどボルボがまだ持っていないシステムの導入があっても良かったように思う。

このC30は、クーペ系の需要が限られる日本では爆発的に売れるタイプのクルマではないだろうが、ボルボという堅実なブランドイメージがうまく作用すれば、子育て期の終わったエンプティネスターズからは一定の評価を得る可能性もある。なにしろ、まさにその時期が近い僕自身が「こんなボルボも良いかも」と思ったくらいだから。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2007年3月号より)



ボルボ C30 T5 主要諸元
●全長×全幅×全高:4252×1782×1447mm
●ホイールベース:2640mm
●エンジン:直5DOHCターボ
●排気量:2521cc
●最高出力:220ps/5000rpm
●最大トルク:320Nm/4500-4800rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:FF
●0→100km/h加速:7.1秒
●最高速度:235km/h
※欧州仕様

[ アルバム : ボルボ C30 はオリジナルサイトでご覧ください ]

こんな記事も読まれています

トヨタが「新型モデル」世界初公開! クロスオーバー&SUV 2台同時に! 25年半ばまでに発売!? 「bZ3C」と「bZ3X」中国で登場
トヨタが「新型モデル」世界初公開! クロスオーバー&SUV 2台同時に! 25年半ばまでに発売!? 「bZ3C」と「bZ3X」中国で登場
くるまのニュース
フォーミュラEの改良型マシン『GEN3 EVO』が初公開。4輪駆動化と超高速充電対応で2025年デビュー
フォーミュラEの改良型マシン『GEN3 EVO』が初公開。4輪駆動化と超高速充電対応で2025年デビュー
AUTOSPORT web
フォルクスワーゲンが次世代大型電動SUV『ID.CODE』を発表
フォルクスワーゲンが次世代大型電動SUV『ID.CODE』を発表
レスポンス
最近、スズキのデザインが尖ってきたワケ「キーワードはGSX-R DNAとプラットフォーム」
最近、スズキのデザインが尖ってきたワケ「キーワードはGSX-R DNAとプラットフォーム」
モーサイ
鉄道はあれど重い荷物にはバスのほうがラクだが……運休!? 空港行きの高速バスで2024年問題を痛感した!
鉄道はあれど重い荷物にはバスのほうがラクだが……運休!? 空港行きの高速バスで2024年問題を痛感した!
WEB CARTOP
全長5m超えのトヨタ「大型バン」登場! 斬新“観音ドア&縦4灯テール”採用!? 特許庁が「新ハイエース」公表、反響は?
全長5m超えのトヨタ「大型バン」登場! 斬新“観音ドア&縦4灯テール”採用!? 特許庁が「新ハイエース」公表、反響は?
くるまのニュース
これ全部ベスパ!? 1万5000台による大パレードが行われたベスパワールドデイズ2024
これ全部ベスパ!? 1万5000台による大パレードが行われたベスパワールドデイズ2024
バイクのニュース
[カーオーディオ 逸品探究]実力ブランド「モレル」の最新ハイエンド機『イレイト カーボン』の魅力に迫る!
[カーオーディオ 逸品探究]実力ブランド「モレル」の最新ハイエンド機『イレイト カーボン』の魅力に迫る!
レスポンス
7代目フォルクスワーゲン パサートは中身の濃い変更が行われていた【10年ひと昔の新車】
7代目フォルクスワーゲン パサートは中身の濃い変更が行われていた【10年ひと昔の新車】
Webモーターマガジン
決算期3月は乗用車全セグメントで前年実績割れ!SUVマーケットはどうなっている?(24年3月の軽自動車を含むSUV車販売登録ランキングTOP20)
決算期3月は乗用車全セグメントで前年実績割れ!SUVマーケットはどうなっている?(24年3月の軽自動車を含むSUV車販売登録ランキングTOP20)
カー・アンド・ドライバー
ホンダが新型「5ドアスポーツクーペ」を世界初公開! 流麗デザイン×斬新ハンドル採用! 25年内に登場予定の新型「GT コンセプト」 北京で初披露
ホンダが新型「5ドアスポーツクーペ」を世界初公開! 流麗デザイン×斬新ハンドル採用! 25年内に登場予定の新型「GT コンセプト」 北京で初披露
くるまのニュース
グーグルマップの“2台使い”が最適解!? GWの高速道路で大渋滞!「そのまま乗り続けるか次のICで降りるべきか」問題をどう乗り切る?
グーグルマップの“2台使い”が最適解!? GWの高速道路で大渋滞!「そのまま乗り続けるか次のICで降りるべきか」問題をどう乗り切る?
VAGUE
トヨタ新型「“SUV”ミニバン」発表! タフ顔&高級内装がカッコイイ! アンダー400万円の“充実装備”が嬉しい「GX O」印に登場
トヨタ新型「“SUV”ミニバン」発表! タフ顔&高級内装がカッコイイ! アンダー400万円の“充実装備”が嬉しい「GX O」印に登場
くるまのニュース
うおおおお!!  マツダ6の後継が中国で爆誕!?  新型セダン[EZ6]超絶カッコいいやん!!  丸テールに内装もハンパない【北京ショー】
うおおおお!!  マツダ6の後継が中国で爆誕!?  新型セダン[EZ6]超絶カッコいいやん!!  丸テールに内装もハンパない【北京ショー】
ベストカーWeb
FIAスライエム会長が批判にコメント「世論の法廷で有罪判決を受けたかのよう」会員からの支持も強調
FIAスライエム会長が批判にコメント「世論の法廷で有罪判決を受けたかのよう」会員からの支持も強調
AUTOSPORT web
レッドブル育成ハジャルが3日目最速。宮田莉朋は午後3番手/FIA F2バルセロナテスト最終日
レッドブル育成ハジャルが3日目最速。宮田莉朋は午後3番手/FIA F2バルセロナテスト最終日
AUTOSPORT web
ついに[レガシィ]の名が消える…… 2025年春にメイン市場の北米で生産終了! でもアウトバックは生き残る!
ついに[レガシィ]の名が消える…… 2025年春にメイン市場の北米で生産終了! でもアウトバックは生き残る!
ベストカーWeb
スズキ「アヴェニス125」【1分で読める 国内メーカーのバイク紹介 2024年現行モデル】
スズキ「アヴェニス125」【1分で読める 国内メーカーのバイク紹介 2024年現行モデル】
webオートバイ

みんなのコメント

2件
  • V40の生産が終了した今、XC20かC40辺りを新規開発してくれたら日本市場としてはありがたい。
  • 懐かしぃ〜、with ipodに乗ってました。
    嫌味のない独創的なデザインでしたね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

299.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

19.8128.0万円

中古車を検索
C30の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

299.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

19.8128.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村