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『A』から『B』へのジャンプアップ。トヨタ/GRスープラ今季投入の新型エンジン『RI4BG』の狙いとその実力

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『A』から『B』へのジャンプアップ。トヨタ/GRスープラ今季投入の新型エンジン『RI4BG』の狙いとその実力

 トヨタ、ニッサン、ホンダのGT500参戦3車種中、この2024年に向け唯一ベースモデルの改変がなかったTCD/TRD陣営だが、それでいながら開発陣が「実質的に新車です」と断言するほど大きなアップデートが施されているのが24年仕様TOYOTA GR Supra GT500でもある。となれば気になるのはその中身。いくつかある変更点のうち、最大の注目点と言えるのが型式の更新を受けたエンジンだ。

 車体側、エンジン側ともに厳しい開発制限が設けられている現行GT500規定だが、導入10年の節目を終えて今季は双方ともに開発の凍結部分が一旦解除され、ホモロゲーション登録の新たなサイクルを迎える。

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 ここでエンジンブロックやヘッドといった、従来より開発凍結の対象とされている大型鋳物類を刷新したトヨタ/GR陣営は、規定が導入された2014年のデビュー時より名称のみならず"基本骨格不変"のまま戦い続けてきた『RI4AG』から、新たに『RI4BG』の呼称を採用した。

 燃料流量リストリクターを採用した2リッター直列4気筒直噴ターボによる開発競争が続いているNRE(ニッポン・レース・エンジン)規定だが、本来は「省燃費=速い」の図式を成立させる熱効率競争を促すべく、スーパーフォーミュラ(SF)との共用を想定し同じタイミングの2014年から両カテゴリーに導入されている。そのため従来のトヨタ製ユニットはその基本理念どおり10,000rpm(毎分回転数)以上を許容するフォーミュラ向け設計思想の流れを汲み、9,000rpm以下を常用するGTでも競合他社に比べ「常用回転域が高速寄り」という特徴を有していた。

 クラス違いの集団内で混走することで瞬発的な蹴り出しを求められ、セミ耐久的要素を持つ長距離レースを戦うことでより高い燃費性能も要求されるGTでは、その特性により従来から苦労する面があったことは否めず。さらに昨季よりハイオクガソリンとは気化特性の異なるカーボンニュートラル・フューエル(CNF)『GTA R100』が導入されたこととも併せて、ライバルが採用するシングルスロットルではなく4連マルチスロットルを継続。これにより重量の面でもビハインドを背負うなど、根本的な見直しは不可避の状況となっていた。

 そのため2024年に向けて掲げたテーマは「シングルスロットル化、CNFの使いこなし、中間加速の向上」の3点で、そのすべてがエンジン中回転域の改善に繋がることに。このNRE規定では燃焼室のボア径が88±2mmの範囲に定められているが、その基本諸元にも初めて手を入れ「従来の+側から小さくする方向」つまりロングストローク側へと舵を切った。

 そのうえで従来のハイオクより気化しにくいというCNFの特性を考慮し、昨季を通じて理解を高めた油水温の運用温度アップで揮発性を高めるサポートをすると同時に、ボア×ストロークの変更で燃焼室内へ流入する吸気の流動性も変化。シングルスロットルの適合を見据えた大掛かりな改変の結果、ついに「GTへの最適化」を果たすこととなった。

 また将来的な性能向上を見据えて熱応力解析によるブロックの強化を果たしたうえ、本来ならロングストローク化により重くなる傾向にありながらも、ヘッドを含めエンジン本体から軽くすることにも成功。シングルスロットルの適用分と、補器のダクトやシュラウドを含む最適化によりラジエーターを含む熱交換器類(最大上限容積と厚みが決まっているインタークーラーはタテヨコ比を見直し)のサイズダウンも実現し、これらを併せてフロント側だけでも「フタ桁単位」の軽量化を達成したという。

 開発領域の狭い規定も併せて、毎年数グラム単位で"チリツモ"の開発成果を積み上げている現代のレーシングカーにあって、にわかには信じ難いレベルの"ジャンプアップ"を果たしたGR Supraは、こうした「徹底的な軽量化による運動性能向上」を果たし、結果的に競技規則の改変による実質5mmの車高アップによる悪影響も最小限に留めることとなった。

 さらにマルチスロットル前提で設計されていたエンジンから、シングルスロットル適合を前提とした諸元に変更されたことで、改善テーマのひとつだったドライバビリティ(運転応答性)の面でも長足の進化を遂げることに。各チームのドライバーからは「ドラビリはもう充分。あとはパワーがほしい」と、昨季までとはまるで異なるフィードバックも得た。

 これは中間域のトルク特性が太ったことで、トップエンドのパワー"感"に変化が出たからこその言葉にも聞こえるが、車体側の回頭性アップとブレーキングスタビリティ向上とも併せ、その副産物として「ほとんどアンチラグを必要としない」状況にも持ち込めているという。

 図らずも新型モデルを投入したライバルを含め『フロント側の軽量化』という流れが開発トレンドになっているようにも見える24年のGT500クラス。その成果と答え合わせは、久しぶりに"晴れの国"となったこの週末で明らかになりそうだ。

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