10月8日、日本でも映画007シリーズ最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が封切りになった。映画の007シリーズのお約束といえばボンドカーだが、今作では1960年代のアストンマーチンDB5のほか、2代目ランクルプラドがボンドカーとして登場するのが注目だ。
007シリーズ最新作に登場する2代目トヨタランドクルーザープラド。劇中ではランドローバーのレンジローバースポーツSVRとカーチェイスを繰り広げる
ひとりの男のクルマにかけた半生……映画『タッカー』を観る!!
近年のボンドカーとしては定番のアストンマーチンのほか、一時007シリーズのスポンサーとなったBMWが主力だが、過去を振り返ると、実にさまざまなボンドカーが登場している。
また、かつてはボンドカーというと、「ジェームズ・ボンドが乗ったクルマ」を意味したが、近年は、007シリーズに登場したクルマは、すべて広義のボンドカー扱いになっている。そこで今回は、映画『007シリーズ』と同い年(1962年生まれ)のカーマニアである清水草一が、個人的にエモかったボンドカーのベスト3 +1を選出してみた。あくまで個人的な思いですが……。
文/清水草一
写真/トヨタ、BLBG、FavCars、© 2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.
[gallink]
■表版ボンドカーはまずロータスエスプリから!
007シリーズ第1作が本国イギリスで公開されたのは、1962年。奇しくも私も同じ年に、東京・新宿区の聖母病院で生まれました。特に映画通でも007通でもないですが、同い年の男子として、007シリーズはずいぶんと楽しませていただきました。
最近の映画で、クルマが重要な役割を果たすなんてほとんどないでしょ? でも60年代とか70年代は、いろんな映画のなかでクルマが大活躍してたんですよ! 007シリーズは、その流れを今でも受け継いでいる唯一の映画シリーズ。カーマニアとして応援しないわけにいかない!
ただ、007シリーズを熱心に見たのは、子供時代から青年時代くらいまでで、近年の作品は、機会があればサラッと見る程度になっている。やっぱりジェームズ・ボンドと言えばショーン・コネリー! そこは絶対に譲れない。
で、まずはボンドカー表版のベスト3をば。
■第3位/ロータスエスプリ
「007/私を愛したスパイ」で登場したロータスエスプリ。イタリア サルディーニャ島のワインディングを軽快なフットワークで駆け抜けるエスプリは見ていて爽快
シリーズ第10作『007/私を愛したスパイ』で登場しております。タイヤが引っ込んで潜水艇に変身するアレですね。
主演のボンド役はショーン・コネリーからロジャー・ムーアに代わっていたけれど、この映画でのエスプリの存在感は超ピカイチだった。
実を言えば、私がテレビ放映やレンタルビデオではなく、映画館で見た唯一の007シリーズがコレだ。エスプリが登場した時は、そのカッコよさに思わず息を飲みました! 思えばこの1年後、初代ソアラが登場するんだけど、あのデザインってどこかエスプリの直線的なラインに似てるよね。あの頃の日本人は、ああいうカタチを望んでいたのではないだろうか!?
その後ずいぶん経って、本物のエスプリに乗せてもらったら、そのあまりの遅さにビックリ。エスプリの初期モデル(映画に出たヤツもコレのはず)の4気筒2LのNAエンジンは、スペックこそ160psなれど、実際に乗ったイメージは、「猛烈に古臭くて非力」でした。とても160psもあるとは思えなかった。
でも、映画を見た頃はそんなこと知らないし、ボンドの大活躍に館内は大爆笑の渦だった。007映画って、基本的に笑っちゃうものだったんだよね!
■第2位/アストンマーチンDB5
『ゴールドフィンガー』で登場したアストンマーチンDB5。6代目ボンドのダニエル・クレイグになってから再三ボンドカーとして登場、最新作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』でも再登場する
第3作の『ゴールドフィンガー』で登場した、ボンドカー第1号がこれだ。特殊装備としては、フロントウィンカーからせり出す機関銃、可変ナンバープレート、ナビゲーションシステム、伸縮式スピンナー(ギリシャ戦車のように隣のクルマのタイヤを切り裂く)、格納式防弾装甲、煙幕発生装置、テールライトから出てくるオイル散布装置、助手席射出装置(シフトノブのフタを開いたところにあるボタンを押すと、サンルーフが開いて助手席の敵をシートごと車外に放り出す)などなど。
ボンドカーと言えばDB5にトドメを刺す! それにしてもまぁ、よくもこれだけ特殊装備を詰め込んだもんだ。こんなに積んだらクルマがメッチャ重くなっただろうに……。
私はこれを初めてテレビ放映で見た時、アストンマーチンなんて車名はサッパリ知らなかった。そんなクルマ、見たことも聞いたこともなかった! ただ、そのあまりのカッコよさと無敵ぶりにいたく心を奪われ、最後、壁にぶつかって大破した時は、ボンドの体はどうでもよくて、とにかく「クルマがもったいない!」と思いました。
その後、歳月は流れ、21世紀に入ってようやく私は、実物のアストンマーチンに乗ることができた。DB7ヴァンテージボランテ。アストンマーチン再建を目指して、新開発の6L V12(フォードV6がベースで、420ps)を搭載したモデルである。その感想は……。
「オープンボディということもあってボディは相当ゆるく、足が若干バタつく。ジャガーXKRコンバーチブルのボディを、さらに一段ユルくしたように感じるのは、足回りをジャガーより固めてあって、ボディが負けてるからだろう。アクセル全開をブチくれると、6Lの排気量がものを言ってけっこう速い。ただ、エンジンの音やフィーリングは驚くほど普通である。完全には調教しきれていない荒さのような部分に、少量生産の手作り感が漂う」
こんな感じで、どこがいいのか全然理解不能でした。エンジンにかぎっても、当時のアストンV12は、フェラーリ12気筒と比べたら月とスッポン。現在のアストンマーチンは超絶スバラシイですが、なにせ70年代からこっち、どん底期が続いたので、21世紀初頭でもこんなもんだったんです。
じゃDB5って、どんな感じなんだろう。仮に乗れたとしても、今や希少な美術品なので、全開ブチくれるなんて絶対不可能だけど。
■第1位/トヨタ2000GT
『007は二度死ぬ』に登場したトヨタ2000GTボンドカー仕様。現在は愛知県のトヨタ博物館に収蔵されている
第5作『007は二度死ぬ』に登場しています。やっぱり日本人がボンドカーのナンバー1を選ぶならこれだよね! なにしろ映画の舞台が日本だし! 私は確か中学生の頃、家族団らんのなか、テレビ放映でこの映画を見ました。公開されたのは67年なので、たぶんその8年後くらいだったと思います。
クーペの2000GTじゃ、身長188cmのショーン・コネリーが乗れないので、屋根をブッタ切って急遽オープンにしたというのは有名なエピソードだが、日本が舞台なだけに、映画のすべてがインパクト絶大! その微妙に……じゃなく、かなりズレたステレオタイプな日本観にずっこけながらも、すべてがメチャメチャ面白かった! ボンドガールの浜美枝と若林映子も超キレイで色っぽかった!
なお、2000GTの特殊装備はテレビ電話くらいでした。ちなみに運転したのはボンドガールの若林映子で、ボンドは助手席。乗り込んだのはホテルニューオータニのクルマ寄せ!
でも、本当のことを言うと、個人的には2000GTよりもそれを襲撃する悪役たちが乗る、黒塗りの2代目クラウンがものすごく印象的だった! つまり裏1位はソレ!
1962年発売の2代目トヨペット クラウン。1964年にはワイドボディに日本初のV型8気筒エンジンを搭載したVIPセダン、クラウンエイトをラインナップしセンチュリーの元祖となる
クラウンに乗った悪い奴らたちは、ホテルニューオータニのクルマ寄せで、マシンガンをぶっ放してボンドを襲撃。そこに颯爽と救出に現れたのがアキ(若林映子)の2000GT! クラウンとのバトルが始まって、いきなり箱根みたいなところへワープ! と思ったら、2ローターの大型ヘリ(CH-47)が現れ、吊り下げた巨大磁石でクラウンを吸い付けて吊り上げ、そのまま海にドボンと捨てた!
あの黒塗りのクラウンの不格好な姿が、中学生だった私の目に強く焼き付いたのでした。『西部警察』でも、ガゼールやガルウイングZより、ぶつかって炎上するセドグロが好き! という人種がいるが、ちょっとそれに近い。あのクラウンを東京湾から引き揚げて、トヨタ博物館に!
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みんなのコメント
お得意の無責任の妄想、嘘の記事でも書いてろ。
どちらもスクラップになるが、あの連れ去られたヴェスパーを追いかける為に暗闇を疾走するDBSと、慰めの報酬の冒頭で、最初はサイレント風にトンネル内の走行シーンが部分部分がクローズアップされそこからいきなりエンジン音が轟き、追っ手のアルファから逃げ切るDBSはマジで最高のシーン。戦闘機の空中戦みたいで素晴らしかった。