日進月歩、技術開発競争、新商品への入れ替えなどで目まぐるしい進化を続けるクルマ業界。約6~8年でフルモデルチェンジが行われるのが一般的なこの世界で、小改良は重ねつつも10年以上ずっとフルモデルチェンジされず現在も発売されているクルマがわずかながら生き残っている。
実はクルマにおいて「勤続10年」というのは並大抵のことではない。そんな選ばれし「古参兵」たちは今いったいどれだけ残っているのか?
長期活躍するクルマを応援!! いぶし銀の魅力あふれる「勤続10年車」たち
ここでは、そんな発売から10年以上という大台に乗った「勤続10年車」を紹介。今も現役な老兵たちの顔ぶれを見ていこう。
※本稿は2022年3月のものです
文/永田恵一、ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年4月26日号
■勤続10年(2012年発売)
●マツダ MAZDA6(今でも魅力度:★★★★☆)
マツダ MAZDA6
先代CX-5に続く、SKYACTIV第2弾の3代目アテンザとして登場。毎年行われる改良の効果もありそれほど古さは感じず、特に2.2Lディーゼルターボ+MTはいまだ魅力的なモデル。
●日産 シーマ(今でも魅力度:★★★★☆)
フーガハイブリッドをストレッチしたショーファーカー。いまだリアシートは魅力的で、ショーファーカーとしての格式を持つと考えれば価格も納得がいく。
●光岡 ビュート(今でも魅力度:★★★★★)
日産マーチをベースにした人気パイクカー、ビュートは現行モデルで勤続10年となる。すべて手作業で作られるそのクラシックなボディデザインがいつ見ても魅力的だ。
●三菱 ミラージュ(今でも魅力度:★★★☆☆)
タイ生産となる小さめのコンパクトカー。登場時は低燃費をアピールしたが、現在は強い魅力がないわりに安いわけでもないなど、選択肢に挙がらないというのが率直なところだ。
●トヨタ カローラアクシオ/フィールダー(今でも魅力度:★★★☆☆)
現行型から当時のヴィッツベースであるカローラアクシオ&フィールダーは今や珍しい5ナンバーサイズ。ビジネスユースだけでなく一般向けも継続販売中だ。
●日産 キャラバン(今でも魅力度:★★★★☆)
「打倒ハイエース」を目指す現行キャラバンも登場から10年が経過。10人乗りワゴンは5ナンバー幅で、長さも5ナンバーとなる仕様とスーパーロング長を基本にワイドボディも設定。
■勤続11年(2011年発売)
2011年といえば東日本大震災が発生した年。『がんばろう日本』をスローガンに一丸となって復興を目指した。この年に誕生したクルマで現在も発売されているのはCT200hのみと、唯一の勤続11年車だったのだが……?
●レクサス CT200h(今でも魅力度:★★★☆☆)
レクサス CT200h
先代プリウスベースのプレミアムハッチバック。登場時は魅力を感じたが現在は古さが目立つ。今後はUXを実質的な後継車に今年10月で生産終了となる。
■勤続12年(2010年発売)
2012年といえばNHKで『龍馬伝』放送、尖閣諸島問題、ドラマ『フリーター、家を買う』放送もちょうどこの年の出来事である。そんな今から12年前に登場し、今も生き残っている勤続12年車もわずか2台のみとなっている。
●三菱 RVR(今でも魅力度:★★★☆☆)
三菱 RVR
かつて2列シートミニバンだったRVRは、現行の三代目モデルで初代アウトランダーを小型化したコンパクトSUVとして復活。登場時からパッとせず、仕上がりは堅実なのだが、買いたくなる魅力が薄れてきたのも事実だ。
●日産 マーチ(今でも魅力度:★★★★☆)
タイ生産の現行マーチが登場時こそ燃費のよさに感心したが、それ以外はクルマとしての魅力は薄い。ただMTのNISMOは面白いクルマなので買う価値あり!
■勤続13年(2009年発売)
13年前……皆さん、13年前って何をしていたか覚えていますか? ノンアルコールビール『キリンフリー』発売、桜島噴火などがあった年ですが……。クルマの話に戻すと勤続13年車はどれも根強い人気を誇る3台も残っているぞ。
●日産 フーガ(今でも魅力度:★★★☆☆)
日産 フーガ
セドリック&グロリアの後継車で、現行で2代目となる。初代と同様スポーティかつグレードによっては絶妙な緩さをバランスした乗り味は魅力。ただ放置期間の長さもあり古さは否めない。
●日産 NV200バネット(今でも魅力度:★★★★☆)
OEM時代も含めると5代目モデルとなるコンパクト1BOX。現行モデルはフロントノーズを置くFF車に移行しており、1BOXカーとしては乗用車的に運転できる。
●トヨタ ランドクルーザープラド(今でも魅力度:★★★★★)
2002年登場の先代モデルのキャリーオーバーながら、一部改良もあり魅力はいまだ色褪せていない。またプラドは本格SUVながら「あらゆる局面で何とかなる」というのも売れている大きな理由だ。
■勤続14年(2008年発売)
さてさて次は勤続14年! iPhone3G発売、北京夏季五輪開幕、「あなたとは違うんです」……もうこれだけで急に昔の話っぽく感じられるのだから時の流れとは残酷である。そしてこの時代の生き残りはZ34のみだ。
●日産 フェアレディZ(今でも魅力度:★★★★★)
日産 フェアレディZ
型式名を継続したためベテラン社員扱いになったが、れっきとしたデビュー前モデルだ。ゆえに「今でも魅力度」は当然、満点。国内唯一の400ps級エンジン+3ペダルMTに期待。
■勤続15年(2007年発売)
とっくに干支は一巡している15年前の2007年。「どげんかせんといかん」が流行語大賞になるなか、GT-Rは世界のスーパーカーに立ち向かえるクルマとしてデビュー。毎年進化しているから勤続15年とかそんなの関係ねえ!
●日産 GT-R(R35)(今でも魅力度:★★★★★)
日産 GT-R(R35)
ニュルのラップタイムや0-100km/h加速といった絶対的な速さだけでなく、「マルチパフォーマンス」というコンセプトを持つスーパーカー。新車はいつ買えなくなるかわからないだけに、欲しいなら即買いオススメ。
●三菱 デリカD:5(今でも魅力度:★★★★★)
デリカD:5は「軸足はミニバンながら、悪路走破性はSUV並」というライバル不在のモデルで、登場から10年以上が経っても販売は堅調だ。2019年の超ビッグマイチェンでは欲しかった要素がほぼ盛り込まれいまだ魅力的な存在。
■勤続18年(2004年発売)
2004年、勤続18年車というかほぼ20年前のことだが、この年はニンテンドーDS、PSPが発売、ヨン様ブームが同年の出来事だ。領収書の宛名には『上様』ではなく『ヨン様』と書くのが流行ったというのは本当なのでしょうか??
●トヨタ ハイエースワゴン(今でも魅力度:★★★★☆)
トヨタ ハイエースワゴン
商用バンベースの1BOXワゴンで、カタログモデルは10人乗りのミドルボディとスーパーロングボディのグランドキャビンを設定。グランドキャビンは10人+荷物も積載性抜群。
■商用車の「勤続10年車」たち
●日産 キャラバン・マイクロバス(勤続10年)
日産 キャラバン・マイクロバス
キャラバンはハイエースよりはるかに商用バン比率が高い。改良も頻繁で、最近行われたマイチェンではATが5速から7速化、三菱製ディーゼルエンジンへの変更、自動ブレーキの性能向上などが施された。
●三菱 ミニキャブMiEV(勤続11年)
ミニキャブMiEVは16.0kWhのバッテリーを搭載するEV軽1BOXバンである。現在販売中断中だが今秋から販売再開予定で、軽乗用EVの相乗効果などによる値下げも期待したい。
●トヨタ タウンエースバン・トラック(勤続14年)
日産バネットに相当するタウンエースは、現行型からインドネシアにあるダイハツ工場生産となった。キャブオーバーFRでキャンピングカーのベース車になるなど面白いモデルだ。
●日産 ADバン(勤続16年)
現行型は2018年に絶版となったウイングロードベースの商用ライトバンである。販売台数ではプロボックスとは大差がついているが、それほど劣ってはないだけに浮上を期待したいモデルだ。
●トヨタ ハイエースコミューター(勤続18年)
2004年に登場したハイエースファミリーのひとり、コミューターも勤続18年目を迎える。座席数を14人乗りとしており一部幼稚園バスなどで今も利用されている。
●トヨタ ハイエースバン(勤続18年)
メインとなる商用バン登場から18年が経ちながら、いまだ月平均5000台程度が売れているというロングセラーモデルだ。それだけにすべての要素が完成されており、ここまで来たら日本自動車界の最長勤続を目指してほしい!
●トヨタ プロボックス(勤続20年)
商用ライトバンとしての荷室の広さだけでなく前席の使い勝手のよさなど、実にソツないモデル。2014年のマイチェンでフルモデルチェンジ級の改良が施されている。
■輸入車の「勤続10年車」たち
●ルノー カングー(勤続15年)
ルノー カングー
カングーの2代目は初代同様、商用バンベースのためガンガン使える点や愛されキャラを理由に、日本国内での販売における大きな柱となった。本国では3代目モデルに移行し、日本にも今年後半に導入される。
●フィアット 500(勤続15年)
日本車ならスバル360のような存在のフィアット500は2代目モデルで絶版となった後、30年のブランクを経て復活。FFながら2代目モデルのエクステリアを忠実に再現し、2気筒のツインエアは楽しい一台だ。
■かつての「勤続10年車」たち
今では販売が終わり後進に道を譲った先輩のようなクルマたち。そのなかでもとびきり長期間勤め上げたモデルも振り返ろう。
●トヨタ 二代目プレミオ・アリオン(勤続14年)
トヨタ 二代目プレミオ・アリオン
コロナ&カリーナの血を引くプレミオ&アリオンの2代目モデルは、豊富なシートアレンジなど初代モデルから正常進化した実に堅実なモデルだった。2代目プレミオ&アリオンは根強い需要によりなかなか絶版にならず、14年間販売された。
●ホンダ 初代NSX(勤続15年)
初代NSXは「人に優しい快適なスポーツカー」というコンセプトで開発され、ポルシェやフェラーリにも相当の影響を与えた。初代NSXが15年間生産されたのは、NAエンジンのみだったことなど、基本設計の素晴らしさの象徴でもある。
●スズキ 三代目ジムニー(勤続20年)
3代目ジムニーは軽自動車の規格が現在のものになった1998年に登場。現行型4代目モデルまで継承されるラダーフレーム構造、四輪リジッドサスペンションなどを使いながら、悪路走破性はもちろん、オンロードでの快適性も大きく向上した。
●三菱 初代デボネア(勤続22年)
歴代ショーファーカーユースをメインに通算33年間生産されたデボネアの初代モデルは22年間生産され、「走るシーラカンス」というニックネームがついたほどだった。また初代デボネアは古いアメ車のようなスタイルにより、絶版後のほうが人気だった。
●トヨタ 40系ランドクルーザー(勤続24年)
FJクルーザーがオマージュしたランクル40系は、70系がその役割を引き継いだスパルタンなオフローダーである。ランクル40は1期から4期に大別され、現存台数もそれなりにあるため、純正パーツの再販が近々開始される見込みだ。
●日産 七代目セドリック・グロリア(Y31型)(勤続27年)
Y31型セドリック&グロリアはクラウンから離れたことで成功を収めた。個人向けのハードトップは4年でY32型に移行したが、セダンはY31型のまま改良を繰り返し、最後はタクシー用となるLPG仕様のみとなりながら27年間生産された。
●トヨタ 初代センチュリー(勤続30年)
現在実質的に日本唯一のショーファーカーとなるセンチュリーの初代モデルも、手作りで生産される点など、現行モデルと変わらない思想で30年間生産された。なお、日本車唯一になるであろうV12を搭載した2代目モデルも20年生産された。
■まとめ
少し生々しい話かもしれないが、実際の職場などを見ても(理由はともあれ)数カ月で去る人もいれば、一方で長期間勤め上げてきた人もいる。
今回取り上げたクルマたちは後者に当たるが、やはり古参兵独特の貫禄、確固たる意志のようなものが見えてくるクルマたちばかり。なかには日本記録も視野に入るクルマもチラホラ。こうなったらぜひ勤続20年、いや30年くらい目指してほしい!
【番外コラム】「ネクスト勤続10年車」と「勤続1年車」
●2023年に10年目を迎える「ネクスト勤続10年車」
・日産 現行スカイラインGT…来年勤続10年目を迎える2013年発売のクルマだが、この年に登場したモデルはほぼフルモデルチェンジをしていた。そのため、生き残りは現行スカイラインGTのみとなる。
●逆に超短命だった「勤続1年車」
・ホンダ S500(勤続4カ月)…勤続10年と長く続けられている幸運なモデルがあるなか、一年かそこらで消えてしまったクルマも存在する。筆頭はホンダS500で、後継であるS600がすぐに登場したためなんと4カ月しか生産していないのだ。
次に短いのは日産バイオレットリベルタの1年など。まるで桜のように早く散っていったモデルも存在するのだ。
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