■バイクが日常生活に溶け込んでいた時代
1975年から連載が始まった『750ライダー』(石井いさみ著)は、バイク青春漫画の元祖とも言える作品です。1981年スタートの『あいつとララバイ』(楠みちはる著)、さらにバイク漫画ではありませんが、1982年の『AKIRA』(大友克洋著)にも印象的なバイクが登場します。そして1983年に連載開始の『バリバリ伝説』(しげの秀一著)が、それまでの表現を一変したのだと、きら先生は話します。
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きら先生「下積みの頃、関西限定の中古バイク雑誌で自分のバイク体験を描いたのが最初のバイク漫画でした。描いているうちに忘れていた思い出も蘇って、最終的には単行本を出せることになりました。じつはオフロードレース、エンデューロの体験話も読み切りで描いていて、キンドルなど電子書籍では読めるんです。
80年代は漫画の表現方法に革新的な変化があった時代です。とくに、しげの先生のバイクの擬音語が凄かったんです。それまでバイクといえば“ブォ~”とか“バア~ン!”というような表現しかありませんでしたが、『バリバリ伝説』には2ストのレーサーサウンドそのものとしか言いようがない、独特なカタカナが使われていて臨場感が凄かったですね。一時期はそれを真似してよく落書きしていました。
でも、いざ自分でバイクの漫画を描くとなると、どうしてもその真似事でしかなかったんです。バイク漫画はレースがテーマであることが多かったので、そうではない、自分だけの表現を見つけないといけないと思いました。
『赤灯えれじい』は、小道具としてスクーターを描いていたんですが、それを通して見えてきたのが“バイクのある日常を描くこと”でした。
バイク乗りの大半は、実際はレースよりもツーリングや通学、通勤など日常にバイクを使っていますし、それも十分楽しいバイクライフですよね。そういうものを描こうとしてできたのが『ケッチン』(2009年から2013年まで週刊ヤングマガジンで連載)でした」
主人公はヤマハSRを愛車とする、それまでのバイク=速く走るためのの乗り物、という図式からかけ離れた、現実味のある乗り物として描かれたのです。
学生時代からオフロードバイクにハマり、現在でもエンデューロレースに時間を見つけては参戦しているきら先生は、2014年に自身の趣味の世界を描いた『凸凹DEKOBOKO』を発表しました。JNCCという現在日本で最大人気を誇るクロスカントリーレースに青春をかける若者を描いた作品です。
きら先生「レースを描いたのは初めてでしたが、難しかったですね。あらためて、しげの先生は稀有な存在だと思いました。
エンデューロは自分自身が楽しんでいる世界なので、リアリティのある作品にしました。別世界の出来事というより、地に足の着いた世界を見て欲しいと思ったんです。
ただ、実際にやっている人には“あるある”と思える表現も、そうじゃない人からはルールや世界観が少し分かり難かったかもしれませんね」
2020年1月よりテレビドラマとなって放送されている『ハイポジ』は、バイク漫画ではありませんが、青春時代をバイクとともに過ごしたきら先生の想いが込められています。
きら先生「自分が楽しく過ごせなかった高校時代を、漫画で描くことで浄化したというか、冴えない高校生活を送ったことが、いまに繋がりました。
ドラマ化のお話も不意に来たのですが、最終的には漫画の中で使わせていただいた中村あゆみさんともお会いすることも出来て、漫画家冥利につきました。
この作品ももう少し長く連載できていれば、ぜひ80年代のバイクや車のことを描きたかったです。今後機会があれば、車やバイクに絞った80年代のこともどこかで描いてみたいですね。
当時は“不良とバイクと恋愛”という不変のテーマがあって、彼女をタンデムシートに乗せて海岸を走るのが夢の最たるもので、わかりやすいアイテムとしてバイクがありました。いまでも若い人達の基本的なノリ、考えていることは変わらないかな、とも思います。
バイクは危険でもあるけど、それとは引き換えに広がる世界もたくさんあります。バイクに乗ることで大人になる、責任が生じる、人生が豊かになるし、鍛えられるものが多々あります。
ただ危険だからと言ってフタをするのではなく、若いうちから責任やリスクを負う大切さをバイクは教えてくれるんだと思います。僕は漫画というエンタメの中でそれを描きたいですね」
※ ※ ※
自身のバイク青春時代が作品のバックボーンにあるきら先生は、「エンデューロはこれからも細く、長く続けていきたい」また、漫画の世界にもバイクと似たところがあり、「ずっとバイクに乗っていたい。ずっと漫画を描いていたいです」と言います。
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