6月24日にアメリカ・コロラド州で行われた第96回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(PPIHC)に新型の電動マシン『I.D.R パイクスピーク』を投入したフォルクスワーゲンが、2013年にセバスチャン・ローブが打ち立てたレコードタイムを16秒短縮する新記録を樹立した。
PPIHCは海抜2862メートルのスタート地点から19.9kmの道のり、156のコーナーを経て4302メートルの山頂を目指すヒルクライム競技。山のふもとから山頂まで一気に駆け上がることから“雲へ向かうレース(レース・トゥ・ザ・クラウド)”の愛称で親しまれている。
【動画】フォルクスワーゲン、パイクスピーク向け電気自動車のテストをコロラドで実施
今年で96回目の開催となった伝統的イベントに向けてフォルクスワーゲンが開発したI.D.R パイクスピークは、2基のエレクトリックモーターを搭載し、最高出力680馬力、0-60マイル(0-96/h)加速ではF1を凌ぐ2.25秒をマークするというモンスターマシンだ。
フォルクスワーゲンがパイクスピーク参戦をアナウンスし、プロジェクトをスタートさせたのは2017年10月18日。フォルクスワーゲンは、それからわずか250日で新型EVプロトタイプを作り上げて本戦に臨んだ。
当初は2016年に『eO PP100』が記録したEV部門のレコードタイム、8分57秒118を破ることを目標に掲げていたI.D.R パイクスピークは、ロマン・デュマのドライブで7分57秒148という驚異的なタイムでフィニッシュ。
これによりデュマとフォルクスワーゲンはEV部門のレコードを1分近く縮めただけでなく、2013年にローブが『プジョー208 T16 パイクスピーク』で記録した大会レコードである8分13秒878を16.73秒も上回ってみせた。
■デュマ「I.D.R パイクスピークはもっとも驚きを与えられた1台」
マシンをドライブしたデュマは「自分たちの期待以上の結果を出せた。信じられないよ!」と喜びを爆発させた。
「テスト走行を始めた時から、大会レコードを塗り替えられるかもしれないと思っていた。ただ、それにはマシンに搭載されたテクノロジーから僕のドライビングまで、すべてのものが完璧に噛み合わなくてはならなかった。当日の天候も含めてね」
「アタックではすべてが噛み合って最高のフィーリングだった。パイクスピークの新レコードという結果が花を添えてくれたよ。未だにフォルクスワーゲンと僕が、このタイムを記録したという事実を信じられない」
「I.D.R パイクスピークはこれまでドライブしてきたマシンのなかで、もっとも驚きを与えられた1台だ。電気駆動ということは(内燃機関搭載マシンと)いろんなものが違っているから、プロジェクトを進めながら学ぶ必要があった」
「チームは細心の注意を払いながら仕事にあたっていたけど、同時にリラックスした雰囲気でもあった。望んでいた以上の結果を手にしたし、チームスピリットも素晴らしかったんだ。彼らの一員になれたことを誇りに思う」
フォルクスワーゲン・モータースポーツ代表のスベン・スミーツは「I.D.R パイクスピークは、フォルクスワーゲン・モータースポーツが製作してきたマシンのなかでもっとも革新的かつ複雑な車両だった。今日はフォルクスワーゲンとプロジェクトに携わったひとりひとりにとって最高の日になった」と述べている。
「パイクスピークのプロジェクトに関わった従業員全員が、限界を押し上げ、献身的な姿勢で取り組んでくれた。彼らがいなければ、課題をクリアする新たなソリューションを生み出すことは不可能だったよ」
フォルクスワーゲンの取締役員であるフランク・ウェルシュ博士も「100年以上続く歴史的イベントであるパイクスピークで、I.D.R パイクスピークが成し遂げたことは電動モビリティ界にとって大きな意味があることだ」とコメントしている。
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