鹿やイノシシ、野生の鳥など、野生鳥獣の肉を使って食べる料理「ジビエ料理」というものをご存知でしょうか。
脂肪も少なく、栄養も豊富でヘルシーなことからジビエ料理が昨今人気を集めていますが、料理の材料となる野生鳥獣を自身で狩って、調達したのち安全に食べられるように調理をする人もいるようです。
しかし、野生の動物を狩りに行くときに、野山などに入っていく必要があるわけですが、その移動手段としてバイクを使っている人がいました!
しかも……クロスカブ! そう、ハンターカブならぬ、カブハンターがいたのです。
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その人とは、クロスカブに乗って趣味の一貫で狩猟やキノコ狩りをしているトモさん。
トモさんは「東京でとって食べる生活」というサイトを運営しており、ブログの内容は、捕獲したアライグマやカラス、タヌキを調理したり、毒のあるマムシグサという雑草をスイートポテト風にしちゃったりなど、毒のある食材でも勇敢に食べるという少し変わった活動をしている人です。
かといって、無闇やたらに野生鳥獣を捕まえているわけではありません。アライグマは、2016年度の農作物に対する被害額が約3億3千万円(農林水産省の調査)という特定外来生物ですが、その駆除依頼を受けて被害を抑えるなど、害獣を狩ることで役に立っている一面もあります。
また、ときには猟師仲間からもらった食材を調理するなど、ITエンジニアという仕事の傍ら、狩猟免許を取得してキノコ狩りや野生鳥獣を狩っているトモさん。
そんなある意味、変人レベルの(いい意味で)トモさんからクロスカブに乗っている理由、今まで積んだ荷物の中で一番重かったものなど、話を伺いました。
ホンダ クロスカブ110に乗っているハンター仲間もいる
──様々な食べ物を紹介しているブログ「東京でとって食べる生活」を始めたきっかけなんでしょうか?
始めたきっかけは、過去にゲーム系統の記事を上げていたブログを運営していたことがあり、今度は別の趣味を題材にしたブログをやりたいなと思いつつも中々踏み出せずにいたんです。
そんなとき、狩猟をテーマにしたブログ記事を読んだことから、自分も狩りをテーマにしたブログをやってみたいと思い始め、「東京でとって食べる生活」というブログを開設しました。
──狩猟に行くときもクロスカブ110に乗って目的地まで向かっているそうですが、数あるバイクの中でなぜクロスカブ110を選んだのですか?
まず、大前提としてバイクは狩猟をするために使う移動手段なので、リヤキャリヤのスペースが広くなければいけません。
となると、どうしてもバイクの選択肢が狭まってしまうのですが、リヤキャリヤの広さや燃費の問題、デザインなどを検討した結果、最終的にクロスカブ110に行き着きました。
ホンダ PS250も見た目のカッコよさで検討していましたが、250ccクラスだと車体がデカくて動きづらいので、選ぶのはやめました。
──狩猟のシーンで活躍したのは、どんなときですか?
急な斜面でもスイスイと登れたり、リヤキャリヤも広いですから食材などの荷物も載せられたり、燃費がいいため長距離運転でき、舗装されていない道路でも走れる場面などで、クロスカブが活躍しましたね。
ですが、ひとつだけ納得いかない所がありまして……排気量が小さいので125cc以下は通れない道路(二輪の自動車・原動機付自転車通行止め)には入れないため、わざわざ遠回りをしないといけないのは不便だなと思いました。
──他に気に入っている所はどこでしょうか?
やっぱり見た目ですかね。
駐車場に停めていた(自分の)クロスカブを子供が見て「かっこいいバイク!」とほめられたことがあって、そのときは本当に嬉しかったです。
子供から見てもかっこいいバイクなんだなと思いましたね。
ハンター仲間にもクロスカブ110が人気!
──トモさんのようにバイクに乗って狩猟をしている人は他にもいるのでしょうか?
クルマに乗っている人の方が多いですが、中にはバイクに乗っている人もいますね。
しかも、なぜか周りの猟師仲間もクロスカブに乗っている人が多いんですよ。あるとき、射撃練習をするために、バイクに乗って射撃場まで行ったら、クロスカブが2、3台並んでいたことがありましたね(笑)。
おそらく、リヤキャリヤのスペースが広くて、道とはいえない場所にも行けるので、狩猟目的で使っても乗りやすいバイクなのかもしれません。
──クロスカブ110の他に乗っていたバイクはありますか?
原付バイク(ホンダ ディオ)に半年ぐらい乗っていました。
故障してしまったので、クロスカブに乗り換えたのですが、原付バイクで東京から埼玉県に行ったときは流石に(身体的、精神的にも)つらかったです……。
あれはもう、やりたくはないですね(笑)。
クロスカブ110に積んだ荷物の中で一番重かったものは?
──狩猟をするために、舗装されていない道路もバイクで突き進むような場面もあるかと思いますが、走行中に危ない経験をしたこともあったのでは?
狩猟に行く道中のことですが、最初は走りやすい山道が進んでいくと砂利道になってきて、バイクがガタガタ揺れ始めてきたんです。
そのとき、銃(弾は未装弾)を背負っていたので、もし転倒していたら、銃が壊れたり、荷物が崩れたりして危なかったなと思いますね。
──キノコ狩りや狩猟をしていると、バイクに食材を積む機会が多いと思いますが、今までで一番重かった食材などはありますでしょうか?
一番重かったのはタンデムしたときの人間ですけど(笑)。自分が狩猟した中で重かったのはアライグマ2頭を載せたときですね。
ある朝方、前日に仕掛けていたトラップを「アライグマが1匹いたらいいな」と思いながら見に行ったら、なんとアライグマが2匹もいたんですよ!
想定外の出来事でしたが、血抜きをした1匹目のアライグマをリヤキャリヤにある箱(クーラーボックス)に載せたあと、2匹目に取り掛かろうと思ったら入るスペースがなくて……。
仕方ないので、持参していたビニール袋を使って、周りから見てもアライグマと分からなくなるまで何重に巻いたあと、アライグマをネットに被せて運びました。
過去最高にマズかったのはタヌキの脂身を使ったパスタ
──ブログや動画を見てみると、手慣れた様子でアライグマを解体していて驚きました! 捕獲方法や解体方法はいったいどこで覚えたのですか?
2018年ごろ、埼玉県にある公共事業のアルバイトがイノシシやアライグマの罠猟を学べるということでしたので、罠猟にも興味があったのでやってみることにしました。
そこでは、罠の設置や捕獲方法などを学び、解体はネットや本で学んだ自己流です!
ネットや本には、アライグマを解体する説明がなかったので、イノシシやシカのさばき方を参考にしていますね。
──ちなみに、様々な食材を調達・調理をしてきた中で「これはさすがにまずいな」と思った食べ物、美味しかった食べ物はありましたか?
過去最高にマズかったのはタヌキの脂身を使ったパスタ(ペペロンチーノ)ですね。知り合いの猟師からもらったタヌキを解体して調理をしたのですが……ドブのニオイがしましたね(笑)。
お肉は美味しかったのですが、タヌキの脂身はマズかったです!
その次にまずかったのは、ハシビロガモ(カモの仲間)ですね。
金魚の水槽のニオイがするお肉でした。
例えるなら、学校にもある金魚の水槽を放置したあとのニオイ、もしくは水草が腐ったようなニオイ。あれと一緒です。
ハシビロガモもマズかったですね……。
一番美味しかったものは、猟師仲間から物々交換(アライグマと交換)でもらったツキノワグマのお肉が美味しかったです。
熊のお肉って硬いイメージだったんですが、実際に食べてみると脂が乗っているお肉で、硬いと思ったら意外と柔らかくて、すごく美味しかったですね!
──これからはどんな「ハンターライフ」を過ごしていく予定でしょうか?
今年(2020年)の目標は鹿、イノシシを狩ってみたいなと思っていて、できたらリヤキャリヤに鹿やイノシシを載せてみたいですね。
最終的な目標は、東京付近で食べられる図鑑をブログでやりたいと考えていて、さまざまな食材を紹介しつつ、季節ごとに取れる旬の食材やどのような場所で取れるのかが、分かるような図鑑をブログにて作りたいと思っています。
牛肉とアライグマのお肉なら……
──しかし、なぜアライグマを食べようと思ったのですか?
食べたくないですか?
──私は……食べたくないですね(笑)。
牛肉とアライグマのお肉があるとするじゃないですか。どっちを食べますか?
──……牛肉ですね。
牛肉なんですか!? そうですか(笑)。
──やはり、アライグマを食べたいですか?
食べたいですね。食べたことがあるお肉と食べたことがないお肉があったら、食べたことがないお肉を選びますね!
もう、(アライグマのお肉を選ぶのは)好奇心ですよね!
トモさんは狩猟免許を持っているほか、調理などには十分安全に配慮したうえで調理をおこなっています。
安易に真似をしないようお願いします。
レポート●モーサイ編集部・小泉 写真●トモさん/ホンダ/八重洲出版
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