現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 【ボンドカー・レプリカに撃たれる】ロータス・エスプリ S1とエスプリ・ターボ 後編

ここから本文です

【ボンドカー・レプリカに撃たれる】ロータス・エスプリ S1とエスプリ・ターボ 後編

掲載 更新
【ボンドカー・レプリカに撃たれる】ロータス・エスプリ S1とエスプリ・ターボ 後編

大間違いだった15年放置の不動車

執筆:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)

【画像】見事なボンドカー・レプリカ ロータス・エスプリ 最新のエミーラも 全81枚

撮影:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


シリーズ1のロータス・エスプリは、車重900kgという軽量なミドシップならではといえる、繊細なバランスを備える。一度運転すれば、病みつきになるほどの魅力だ。

もし潜水艦として水中に潜ったら、それほど速くは進めない。しかし、路上なら興奮度満点。最高速度は公称の222km/hに届かないかもしれないが。

ファビアンの仕事は、ボンドカーのレプリカという点でも、英国製スーパーカーのレストアという点でも、非の打ち所がない。彼好みの特殊装備がなければ、コンクール・デレガンスで優勝も掴める完成度だといえる。

これほどの1台を作り上げたのなら、当面は満足できるはず。だが彼は、エスプリ・ターボをベースにしたレプリカへ突き動かされる。1981年の、「ユア・アイズ・オンリー」に登場したボンドカーだ。

「スキーを載せたボンドカーの、良くできたレプリカは見たことがありませんでした。そう気が付いたら、居ても立ってもいられなくなったんです」。苦笑いするファビアン。

「買ったのは安価な不動車。それが大間違いでした。同じ金額で走行可能なエスプリ・ターボも見つけたのですが、サンルーフが付いていたのでやめました。15年も放置されると、悲惨な状態になります。トランスミッションも、すべて腐っていました」

「バラすと、さらに多くの問題が。売り手はレストア途中だと話していましたが、殆ど何も手つかず。想像以上の災難でした。摩耗するす部品はすべてダメ。金属が腐食し、ハンドブレーキもダメ。サイドシルを外す必要がありました」

数度経験したエンジンブロー

ドライサンプのタイプ910エンジンも問題の塊だった。「彼はリビルドしたと話していましたが、大体の人はそう主張して売ります。部品をバラしてみると、かなりきれいで、新しい部品も多く使われていて安心しました」

「簡単に始動し、ブルックランズで新年のクラブ・ミーティングを楽しむまで、3週間位は調子良く回っていたんです。ところが、その帰り道にエンジンブロー」

「信じられず、ジャッキでエンジンを支えながらシリンダーヘッドを外すと、カムフォロアが破損していました。新しく見えていた部品も、すべてダメに。エンジンは、フルリビルドが必要な状態まで摩耗していたんです」

ファビアンは丁寧にエンジンを組み立て直し、何度もチェックを重ねた。その途中、油圧不足に気づく。圧力のリリースバルブの不具合が原因で、きれいに掃除。シリンダー内の確認も重ね、無事に命を吹き返した。一度は。

「3週間後に再びブローです」。苦々しい表情のファビアン。「これが原因か、と発見した瞬間は、ロータスでレース用エンジンを組んでいた経験を持つゲイリー・ケンプとの会話でした」

「リリースバルブを取り出したのか、彼が質問してきました。その部品は修理できないんです。その話を聞いて、すぐに抜き出しました。エッジはひび割れていて、あちこちに破片が付着し、オイルの潤滑不良を引き起こしていたんですね」

「結果的に、これまで4度もエンジンをダメにしています」

撮影車両から採寸したスキーラック

それ以外のレストアは、比較的順調に進んだらしい。パナソニック社製のステレオを天井にマウントし、コンポモーティブの3ピース・アルミホイールをセット。ボディはカッパーファイアー・メタリックで輝かさせた。

塗装色は、友人が所有するエスプリの燃料キャップ裏から調色した。太陽光で、色あせていない部分だ。

レプリカを仕上げるうえで重要な要素となるのが、特徴的なスキーラック。ファビアン以外のレプリカにも、大体は装備されている。当初は、ロータスが用意していたものらしい。

航空会社でパイロットを務めるファビアンは、フライトスケジュールを利用し、撮影用車両が保管されているマイアミのディーザー・カーコレクションを訪ねた。細部にまで気が配られ制作されていたことに、感心したようだ。

「様々な角度からスキーラックを採寸し、写真も数百枚は撮影しました。当初は、スタイロフォームと呼ばれる発泡材を削って複製を試みましたが、屋根へ正しく固定できなかったんです」

「もう一度カーコレクションへ戻り、観察すると原因がわかりました。ルーフは湾曲していますが、スキーを左右対称に並べるため、わたしはラックの角度で調整していました。ですが、もとはスキーが屋根の形に合わせてねじれていたんですよ」

「そこでグラスファイバーで成形し、スチールで構造材を組みました。完成したスキーラックは、6mmのボルト8本でルーフに固定しています」

走りにも表れている努力の結果

「テールゲート側は中空なので、構造材に用いられるフォーム材で強化。穴を開けた部分は金属のパイプで補強してあります」。ボンドカーとして最後のピースは、オーリン・マークVIというスキー板。オレゴンの友人を介して調達した。

シリーズ1のエスプリと4年しか違わないが、2台のロータスには想像以上のギャップがある。エスプリ・ターボの方が遥かに複雑で、レストアに要した努力も大きかったことが伺い知れる。

その結果は、走りにも表れている。ロータスは新車当時、タイプ910エンジンにギャレットT3ターボを組むことで、最高出力213psを発揮すると主張していた。だが、鍛造部品を用いているおかげで、さらにパワフルに感じられる。

実際の加速力には、目を疑う。同年代のイタリアン・スーパーカーに匹敵すると思えるほどだ。

どちらのボンドカー・レプリカも、ディティールまで美しい。でも、この2台で筆者が強く惹かれるのは、真っ白に塗られたエスプリ・シリーズ1の方。

見事なシャシーバランスと精密な操縦性に、不安感のないロードホールディング性が融合。運転に夢中にさせる力がある。

エスプリ・ターボにもその多くが受け継がれているが、ターボの中間加速は少々尖すぎる。現実世界では、運転免許が危ぶまれるほど速い。ボンドカーらしくはあるけれど。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

オジエが豊田スタジアムステージの苦手意識を明かす「僕たちはいつも遅い」/ラリージャパン デイ1コメント
オジエが豊田スタジアムステージの苦手意識を明かす「僕たちはいつも遅い」/ラリージャパン デイ1コメント
AUTOSPORT web
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
ベストカーWeb
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
AUTOSPORT web
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
ベストカーWeb
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
Auto Messe Web
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
AUTOCAR JAPAN
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
AUTOSPORT web
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
乗りものニュース
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
AUTOSPORT web
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
AUTOSPORT web
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
くるまのニュース
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
AUTOCAR JAPAN
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
AUTOSPORT web
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
Auto Messe Web
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
乗りものニュース
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
レスポンス
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
AUTOSPORT web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1180.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

488.0488.0万円

中古車を検索
エスプリの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1180.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

488.0488.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村