マセラティのSUVの「レヴァンテ」に設定されている高性能ヴァージョン「トロフェオ」に田中誠司が試乗した。
贅沢のためのクルマ
ディーゼルエンジン車の販売終了を経て、これまで3.0リッターV6ガソリンのみのラインナップであったレヴァンテに、3.8リッターV8エンジン搭載車がくわわった。
そのチューニングレベルには2種類あり、「GTS」は530ps/6250rpm、730Nm/2500-5000rpm、トップモデルの「トロフェオ」は、より高回転域にパワーのピークを設定しており、最大トルクこそ変わらないものの、最高出力が50ps高められ580ps/6750rpmに達する。
最高速は302km/h、0-100km/h加速は4.1秒。日本の公道に、これほどのパフォーマンスを存分に楽しむ場所はどこにもない。SUVであるから、サーキットで鞭を入れるわけでもないだろう。有り余るパワーを少しだけ使う。そういう贅沢のためのクルマだ。
今回試乗したトロフェオは、オウナー好みの内外装に仕立てられる「パーソナライゼーション・プログラム」に含まれる「フオリセリエ-ブルー・グラファイト」のボディカラーに、赤いアクセントがわずかにあしらわれ、ダイヤモンド切削された22インチ・ホイールが輝く。
インテリアには上質なレザーとハイグロス・メタルの装飾パネルが組み合わせられ、ルーフとピラーのライニングに用いられる人工皮革の「アルカンターラ」とともに、品よくマッチしている。
ふとした時に助手席側に目をやると、ダッシュボードのレザーに施されたステッチの仕上げやデザインが、イタリアの高級車ならではのクオリティとセンスにあふれているのに気づく。
レーシングエンジンの情緒が目を覚ます
フロントフードを開けると、深い赤に染められた、見目麗しいフェラーリ製V8エンジンのシリンダーヘッドカバーを“拝む”ことができる。エンジンルームの大部分をプラスティックのカバーで覆ってしまい、なかになにが入っているのかわからないクルマが多い現代においては貴重な仕立てで、「これこそ“本物の贅沢”だ!」という感慨がこみ上げる。
EV時代がひたひたと忍び寄る昨今に、わざわざエンジン車に乗るのなら、ましてやマセラティに乗るのなら、こうでなくてはいけない。
そのV8ツインターボ・エンジンが目覚める。スーパースポーツカー由来と聞いて心配するほどの大音量がコクピットに届くわけではないとはいえ、これから訪れる体験が特別なものであるという予感は、十分に伝わってくる。
車重2340kgに対して排気量3.8リッターであるから、控えめにガスペダルを踏んで発進するシーンにおけるレスポンスは、物足りなさを覚えない程度であるとはいえ穏やかだ。マルチシリンダーらしい軽いサウンドを放ち、1500~2500rpmあたりの常用域では、あえて残したのに違いない、わずかばかりの荒々しさを伝えてくる。8段ATのシフトショックはそもそもすくないが、ギアの上げ下げを頻繁に行わないスケジュールゆえ、スムーズに走れるのが特徴だ。
ハーフスロットルにおいては、V8エンジンならではの滑らかさを満喫できるが、それはこの価格帯の高級車ならば珍しくない話だ。
さらに深く右足を踏み込み、そしてわずかなターボラグを乗り越えたとき、秘められていたレーシングエンジンの情緒が目を覚まし、高らかな協和音とともに重々しい加速感が乗員を襲う。
体感的なトルクはトップエンドの7200rpmまでひたすら分厚くフラットだ。ドライビングモードで「Corsa(レース)」を選べば、マニュアルモードにおいてレブリミッターに当たっても、自動的なシフトアップは実行されず、ドライバーズ・カーらしい流儀でコントロールできる。
いわゆるスーパースポーツカーほどには、音や振動を剥き出しであらわにするわけではないものの、速さだけを追求した乗り物がもつ“狂気”の片鱗を、レヴァンテ・トロフェオは味わわせてくれる。
スーパーカーの世界をほどよく味わえる
それほどの高性能エンジンを支える足まわりには、4輪エアサスペンションが採用されている。とりわけスポーツモードを選んでいれば、負荷の高いコーナリングやブレーキングにおいても、ロール方向・ピッチ方向ともに姿勢変化は十分に抑制されており、580psのハイパワーと巨体を持て余す素振りをみせない。52:48(車検証上の値)という前後重量配分がもたらすバランスの良さもステアリングの反応から実感できる。
高速道路では、目地段差を最小限の衝撃でクリアする様子におどろかされた。8速ギアでの巡航時、100 km/h時の回転数は1500rpmに過ぎず、harman/kardon製のオーディオをゆったりした心もちで楽しむこともできる。
そのいっぽうで、ノーマルモードを選んでいても基本的なスプリングレートやラバーブッシュがハードに設定されているようで、市街地の速度においては、凹凸のすくないスムーズな路面でも常に乗員がわずかに揺すられている印象を受ける。
ひたすらソフトであることを狙ったラグジュアリー・セダンに慣れたパッセンジャーには、必ずしも歓迎されない乗り心地かもしれない。
まぁ、もしも率直なパートナーから多少のクレームが入ったとしても、レヴァンテ・トロフェオを選ぶような行動力のあるオーナーであれば、マセラティの伝統とフェラーリ製エンジンの価値、そしてこのクルマが秘めたパフォーマンスをきちんと説明して納得させることができるに違いない。
オーナーとしては、全長5020mm、全幅1985mm、全高1700mmという巨体が収まる車庫さえ確保できるなら、ほかになにも実用上の問題はない。ボンネットは左端までよく見えるし、Aピラーも視覚的に気にならない位置にある。大きなサイドミラーは広い後方視界を提供してくれる。後席空間とラゲッジスペースは、車体のサイズなりに広大で、多彩に活用できそうだ。
そうしたSUVでありながら、スーパーカーの世界をほどよく味わえるのがレヴァンテ トロフェオである、と言ってしまえば簡単なのだが、ハイチューンのV8ターボユニットと大柄なボディをスポーツカーらしく走らせるために、多大な努力が払われた結果としてもたらされる、繊細なバランスの妙を楽しめる作品である、とも表現できる。
文・田中誠司 写真・安井宏充(Weekend.)
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みんなのコメント
安っぽいフロントグリルに真っ赤なダサいブレーキキャリパーが最高にダサいね。
しかも、、。値段調べたらクッソ安ww ちょっとガッカリ。 トップグレードが3000万近くなら考えてもよかったけど。w