現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 激震走る!?モデルカー業界の命運を左右する動きがついに…!【アメリカンカープラモ・クロニクル】第16回

ここから本文です

激震走る!?モデルカー業界の命運を左右する動きがついに…!【アメリカンカープラモ・クロニクル】第16回

掲載
激震走る!?モデルカー業界の命運を左右する動きがついに…!【アメリカンカープラモ・クロニクル】第16回

1963年 ジョージ・トテフ、amtを去る

ジョーハンが一世一代の大仕事であるクライスラー・ターバインに苦心するのと頃合いを同じくして、amtは年次モデル=アニュアルキットのあり方について人知れず模索を続けていた。

トラックからまさかのバンボディ化!アオシマ製プラモ「TT2型サンバー」をディアスに改造・前編【モデルカーズ】

【画像56枚】複雑さを増していくamt製キットなど、1963年の様子を見る!

amtはアメリカンカープラモのオリジネーターの強みを存分に活かし、これまでキットの内容拡充を図ってきたわけだが、そもそもこのアニュアルキット・ビジネスのはじまりにはプロモーショナルモデルの金型コストの償却に最大の目的があったことは本連載第1回にてすでに述べたとおりだ。さしたる手間なく金型から外した部品をそのまま売る、それも安く、大量に。

これは一見たいへんな成功を収めたに見えたが、年を追ってキットの内容を拡充させるほどにコストはかさんでいき、加えてビジネス開始当初からナンバーワンの人気だったカスタマイジングの愉しみをより充実させるためにamtが次々にコンサルト契約をした実車カスタムビルダーへの報酬も馬鹿にならず、キットひとつ当たり1ドル49セントという当初から変わらない価格設定はいよいよamtの枷となっていた。amtが喫緊に果たすべきことはふたつ。シンプルにいえばそれは価格を上げることとコストを下げることだった。
amtはまず、それまで実験的であったスタイラインのキットを通常のアニュアルキットに統合した。スタイラインの「より手の込んだカスタマイズ」を「アドバンスド・カスタム」と再命名し、いくつかのアニュアルタイトルに3イン1の選択肢のひとつとして組み込んで、価格に強気の2ドルを設定した。また同じく2ドルの価格設定がなされたキットがこれとは別にあり、それがフォードF-100とシボレー・スタイルサイド、ふたつのコンパクトなピックアップだった。

以前からトレーラーを付属させて2ドルの値をつけられていた両アイテムだったが、悪いことにこの年次の「おまけ」は前年に5~6個のキットを購入できた者にしか手に入らなかったはずのトライアンフ・モーターサイクルとゴーカートそのものであった(連載第13回参照)。

amt自身が前年にさんざん煽ったスペシャル・フィーチャーが、何食わぬ顔で今年はバンドルド・クラップ(かさ増しのための不要なおまけ)にそのまま使われるという「大人の事情」に、小遣いをはたいたソーダ・ファウンテンでヒマシ油を飲まされたような顔をする少年も多かった。

簡易キットの発売、箱絵の個別化など、様々な動き
一方でamtは、金型費用の償却という当初の目的により忠実な、「組立式のプロモーショナルモデル」とでもいうべき簡易シリーズを展開した。ノー・グルー・リクワイヤード・フォー・アセンブリー(組立に接着剤は不要)と箱天面にキット最大の特長が大きく書かれ、キットを組み立てる少年の姿が添えられた4タイトルがそれだ。

キットはひとつ1ドルで、エンジンやカスタムパーツは一切含まれず、組み立て工程はすべて嵌め込みと底面にあるネジ留めで完結した。成型色はとても鮮やかなライトブルーないしレッドだったが、ジョーハンのキットに見られるほどの多彩なバリエーションはなかった。実車が「ハイパフォーマンスであることを旨としないコンパクトカーであるから」という理由をもってエンジンを付属させない方針を、より低年齢層に向けた簡易組立キットという方便と結びつけて展開したもので、これらは翌1964年には「クラフツマン・シリーズ」としていよいよ結実することとなる。

ジョーハンの奇策・98セントシリーズとの決定的な違いは、フルサイズ~インターミディエイトの車種を決してこのラインに組み込まなかったところで、いわばセグメント(車格)による価格差を模型にも反映させたかたちだった。
1963年のamtは雑誌や小売店頭の広告に大きく「インディビジュアライズド・ボックス!」の文字を躍らせて、ボックスアートがついに個別化を果たしたとアピールをおこなったが、実際には上箱に5面あるうちのいちばん小さな面が個別化されたに過ぎなかった。商品の価格が前述のとおりバラバラとなり、それぞれの価格が明記されるのがその面であったからという至極単純な、完全にメーカーの都合以外のなにものでもない仕様変更であった。
1963年のamtは、あきらかに臆面もなくなりつつあった。
立ち去る男の行く先は…
次回、連載第17回にてこれは詳述する話であるが、当時のアメリカ市場はいよいよ本格的に種々のレーシングコンテンツに傾倒しはじめていた。ローカルな改造車レースに過ぎなかったものが公的に、大規模に組織化され、ルールが整備され、競技種目は細分化されていった。1965年にカラー化されるテレビ放送がこの状況をより鮮烈にアメリカ全土へと拡げていくことになるわけだが、その前夜の熱気は今にも発火寸前であった。

amtはその発足から1963年に到るまで、基本的にフォードを筆頭とする自動車メーカー各社と立場を同じくする存在であって、社の性格はフォード・GMのコーポレート・プロパガンダ(御用広告)の色彩がいつまでも色濃かった。製品の制作現場の「より活きた」意見を反映していくつかのレーシングコンテンツに特化したアイテムも皆無ではなかったが、その扱いはあくまで副次的なものであった。大ヒットを記録した'32フォードはあくまで1932年式フォードであって、ドラッグレーシングに特化した姿はあくまで選択肢のひとつにとどめ置かれていた。
ジョーハンほど冷淡ではないにせよ、こうしたレーシングコンテンツへの煮えきらない態度、あくまでもフォード・GMとの関係調整に終始しがちな製品開発、モチーフに深く切り込んで精密化をすすめる方向に対してコストなどの都合からブレーキをかける姿勢、1ドル49セントの壁。こうしたすべてにいつしか不満を抱くようになっていたジョージ・トテフ(連載第4回参照)は1963年、副社長という大きな職位をかなぐり捨ててついにamtを辞するに到る。

amtの事業のほぼすべての実務を任されていたジョージの離脱は、本当なら同社にとって致命打となりかねない痛恨の大事件となるところであったが、最悪の事態は他ならぬ彼自身の周到かつ誠実な姿勢によってみごとに回避された。ジョージは辞意とともに新会社設立の意向、ビジョン、古巣amtに残していくさまざまな懸案の行方と始末について、amt社長のウェスト・ギャロリーにすべて包み隠さずに相談をしていた。

もちろん強い慰留はあったものの、amtにできることとできないこと、設立される新会社にできることとできないことに整然たる目配りのなされたジョージのビジョンにamtは首肯せざるをえず、両社はきわめて円満に袂を分かつこととなった。休む間もなく「仕掛り品」の開発が続くアニュアルキット・ビジネスをいちばんよく知悉する彼なればこそ、彼の新会社モデル・プロダクツ・コーポレーション(MPC)は古巣amtの今後のビジネスに支障をきたさないよう、当座の新製品開発と生産を名を伏せたかたちで請け負うこととなった。
ジョージ・トテフのamt離脱とMPC設立は、間接的に巨大自動車メーカー主導によるプロモーショナルモデル時代の終焉をうながすことにつながった。お仕着せの行儀のよい車だけを売りたいメーカーの意向は、消費者の行儀の悪い(ワイルドな)嗜好の前には早晩時代遅れになることが運命づけられていた。amtできわめて慣例的に用意されていたファーストクラスの席は、自動車メーカーにとって何もせず座ることができるものではなくなった。

野蛮なレースの隆盛は、自動車メーカーが目配りし取り込まなくてはいけない対象にすっかり育っていた。実車・模型の別を問わず、このゲームに参加するすべての者が、時代とのマッチレースを余儀なくされていたのだ。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

[大型ミニバン]頂上対決!? レクサス[LM]vsトヨタ[ヴェルファイア]約800万円の価格差はどこ?
[大型ミニバン]頂上対決!? レクサス[LM]vsトヨタ[ヴェルファイア]約800万円の価格差はどこ?
ベストカーWeb
破格の約90万円!! ダイハツ・[コペン]は今こそ買い時でしょ!
破格の約90万円!! ダイハツ・[コペン]は今こそ買い時でしょ!
ベストカーWeb
[BEV]計画着々と進行中!? トヨタが福岡県に[BEV]電池工場を新設
[BEV]計画着々と進行中!? トヨタが福岡県に[BEV]電池工場を新設
ベストカーWeb
アストンマーティン・ヴァルキリーのデビュー戦とふたりのドライバーが決定。IMSAはデイトナを欠場へ
アストンマーティン・ヴァルキリーのデビュー戦とふたりのドライバーが決定。IMSAはデイトナを欠場へ
AUTOSPORT web
モリゾウがトヨタを激励。豊田スタジアム新コースでの“人力パワー”に観客から拍手/WRC写真日記
モリゾウがトヨタを激励。豊田スタジアム新コースでの“人力パワー”に観客から拍手/WRC写真日記
AUTOSPORT web
「エニカ(Anyca)」サービス終了…カーシェアはどこへ向かうのか?
「エニカ(Anyca)」サービス終了…カーシェアはどこへ向かうのか?
ベストカーWeb
オジエが豊田スタジアムステージの苦手意識を明かす「僕たちはいつも遅い」/ラリージャパン デイ1コメント
オジエが豊田スタジアムステージの苦手意識を明かす「僕たちはいつも遅い」/ラリージャパン デイ1コメント
AUTOSPORT web
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
ベストカーWeb
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
AUTOSPORT web
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
ベストカーWeb
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
Auto Messe Web
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
AUTOCAR JAPAN
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
AUTOSPORT web
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
乗りものニュース
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
AUTOSPORT web
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
AUTOSPORT web
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
くるまのニュース
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村