テレビ局を中心に悪用が目に余る企業の「コンプライアンス」。ご都合主義的に「コンプラ!」を持ち出す姿勢にライターの武田砂鉄が疑問を呈す。
コンプライアンスとは?
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テレビで、トーク番組やバラエティ番組を見ていると、「コンプラ的にマズいでしょ!」や「このコンプラの時代に……」などと言いながら盛り上がっている場面をよく見かける。事前収録の番組の場合、その発言自体がテロップで強調されていたりもする。
よく使われるようになったものの、言葉の意味や、意味する範囲が共有されているわけではない言葉の筆頭が「コンプライアンス」だろう。日本語に訳せば「法令遵守」だが、各種法律を守りましょう、との意味だけではなく、その時々によって更新されていく社会的通念と照らす形で使われていく。社会や時代という極めて曖昧な枠組みで作り上げられていくコンプライアンスを「ウザったい存在」に位置付け、アレが自分たちの動きを妨げているとするのだが、アレの姿はどこかに具体的な形として存在しているわけではない。
だからこそ、勝手に設定できる。先日見たテレビでは、芸人が自分の娘の前でほかの芸人から繰り返しビンタされる場面で、こんな時代ではないのだから、と大勢で盛り上がっていた。放送されているのだから、そのビンタは問題ないと判断したことになる。視聴者として、ここでビンタなんてすべきではない、とも思わなかったが、コンプラの厳しい時代なのにこんなことができてしまっている、と言いたげな賑わいに食傷気味である。
周知の通り、TOKIOの国分太一に度重なるコンプラ違反が発覚、無期限活動休止が発表された。6月20日、日本テレビが発表した文章を抜粋すると、「日本テレビは、タレントの国分太一氏について、過去にコンプライアンス上の問題行為が複数あったことを確認しました」「なお、国分氏のコンプライアンス上の問題行為の詳細については、プライバシー等の観点から配慮すべき点が多く、説明を控えさせていただきます」「日本テレビは、弊社の『コンプライアンス憲章』に基づき、今後とも適切に対処してまいります」とのこと。
コンプライアンスの問題があったが、プライバシー等を理由に何があったのかは説明せず、ただ自分たちとしては引き続き「コンプライアンス憲章」を遵守していくとする。とにかく、国分太一に深刻な事態が発覚したので、もう、出せません、出しません、と言っている。
理由が明かされていないこともあり、週刊誌などが、こういう事案があったらしい、との情報を断片的に並べている。ファンとしてみれば、その断片を信じたくないだろうし、逆にその断片を知って、もっと卑劣な事案もあったのではないかと探る人も出てくる。
昨今の性加害事件のように、告発した被害者が叩かれ続ける実情を知れば、プライバシーには極めて慎重に配慮する必要があるが、今回のように「コンプライアンス」を連呼して曖昧にするだけでは、その隙間から憶測が侵入していく。
テレビの中では「コンプラ」がポップに使われ、テレビ局が深刻な事案について「コンプラ」を歯止めのように使う。この両立は可能なのだろうか。これを機に日本テレビの「コンプライアンス憲章」を読んでみる。この憲章は「日本テレビグループの全ての役員・執行役員・社員」が遵守すべきものとのこと。
「3・人権を尊重します」の項目には2つ並んでいる。
「(1)差別的扱いの禁止:私たちは、一人ひとりの人格や個性を尊重し、性別、人種、国籍、宗教、信条、身体的条件、性自認、性的指向などによる差別や嫌がらせを、けっして行いません。また、他人がそれをすることを許しません」
「(2)安全、健康な職場環境:私たちは、不当な差別や嫌がらせのない、健康的で安全な職場環境を維持します。 職場において、性的な誘いかけ発言や行為(セクシャル・ハラスメント)、信条など人権にかかわる中傷発言や行為をしません」
この2つを守るのって相当難しい。テレビ番組の中で発生する喜怒哀楽、それらがこの2つに抵触していないかを細かくチェックしていったら、かなりの事例が何がしかに抵触する。でも、そんなことはしない。先のビンタの事例もこの放送局の番組だったが、文字通りに判断していけば「1」「2」の両方に引っかかってもおかしくない。でも、見逃される。放送を中止せよ、とは思わない。となると、この憲章ってなんなのだろうとは思う。
日本テレビに限らず、
1:コンプラが厳しくって大変だよ、と愚痴ったり、果敢に挑んでいったりする光景がよく放送される。
2:時折、コンプラ違反によって、タレントに活動休止などの処分が下されることがある。
3:各テレビ局には、厳しい「コンプライアンス憲章」が用意されている。
4:だが、それが厳しく遵守・運用されているわけではない。
という状態にある。
「2」が生じると「3」を持ち出すが、日頃は「4」なので、私たち視聴者がもっとも接する機会が多くなるテレビの世界の「コンプラ」って、「1」になる。それに慣らされると今回のような事態において、「コンプラ違反」が軽く響いてしまう結果にもなる。コンプラ違反には被害者がいるわけなのだから、テレビ局や出演者はいい加減、「1」みたいな振る舞いをやめたらいいと思う。そんなこと言わなくても、しなくても、面白いはずなのに、どうしてアレに駆け込むのだろう。
武田砂鉄ライター
1982年生まれ、東京都出身。 出版社勤務を経て、2014年よりライターに。近年では、ラジオパーソナリティーもつとめている。『紋切型社会─言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、のちに新潮文庫) で第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。著書に『べつに怒ってない』(筑摩書房)、『父ではありませんが』(集英社)、『なんかいやな感じ』(講談社)、『テレビ磁石』(光文社)などがある。
文・武田砂鉄
編集・神谷 晃(GQ)
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