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【GT300マシンフォーカス】リヤの改良で空力バランス改善。調整幅も広がったアウディR8 LMS Evo2/後編

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【GT300マシンフォーカス】リヤの改良で空力バランス改善。調整幅も広がったアウディR8 LMS Evo2/後編

 スーパーGT GT300クラスに参戦する注目車種をピックアップし、そのキャラクターと魅力をエンジニアや関係者に聞くGT300マシンフォーカス。2022年シーズンの第5回はTeam LeMansの『Team LeMans Audi R8 LMS』が登場。この2022年シーズンにエボリューションモデル“Evo22”に進化したアウディR8 LMSについて、前編ではその進化の変遷を振り返ったが、後編では6号車チーフエンジニアを務める近藤良一氏、そしてドライバーとしてTeam LeMans Audi R8 LMSのステアリングを握る片山義章に話を聞いた。

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【GT300マシンフォーカス】大型ディフューザーの認可が下りず苦戦も。アウディR8 LMSの進化を振り返る/前編

 2011年から世界のFIA-GT3カテゴリーで走り始め、スーパーGTでは2012年にGT300クラスにデビューしたアウディR8 LMS。ベースマシンはモデルチェンジすることなく使用されてきたが、FIA-GT3マシンは2012年と2013年にアップデートを施し、2016年にはフォルクスワーゲングループの兄弟車、ランボルギーニ・ウラカンGT3と多くの部分を共用して大きな変貌を遂げると、2019年にはEvo(エボリューション)モデルが登場。そして2022年、Evo2へとさらなる進化を果たした。

 これまでの11年間、アウディR8 LMSの進化の変遷を振り返ってみると、もちろん前後のバランスを整えているはずだが、「フロントを重視した次のアップデートはリヤ寄り、その次はフロント」というような流れになっている。2012年モデルはフロントタイヤがワイドになり、2013年モデルではリヤセクション中心の進化を狙ったが、大型ディフューザーがFIAに認可されず。2016年にはついにディフューザーが大型化され、2019年のEvoでフロントのカナードが複雑化した。そして2022年のEvo2は“リヤの番”だ。

 アウディR8 LMS Evo2で最も特徴的なのがリヤウイングである。リヤウイングはメインフラップの下面からステーが伸びて“支える”タイプがオーソドックスだが、現在の主流はフラップの上面から“吊るす”スワンネック式だ。GT500車両でも2014年規定から全車がスワンネック式となり、アウディR8 LMSも2013年に同タイプを導入している。その目的は、ウイング下面の整流効率化だ。

 アウディR8 LMS Evo2では、それをさらに進化させ、前側からではなく後ろ側から吊るす“リバーススワンネック式”を採用した。「風を受ける前面に障害物がなくなり、下面の流速が上がってダウンフォースが増しました」と語るのは、6号車Team LeMans Audi R8 LMSの近藤エンジニアだ。ドライバーの片山も、その意見に同調する。

「昨年まではすごくオーバー(ステア)傾向が強く、その特性を利用して向きを変えて走るようなクルマだったのですけど、ちょっとリヤが落ち着いて安定方向にいったのかなと思います」

 リヤウイングでダウンフォースが増したぶん、フロント側はアンダースポイラーを2mm下げて前後の空力バランスを整えている。アンダースポイラーと路面とのクリアランスが狭くなれば、その隙間に入り込む空気の流速が上がりダウンフォースの発生率が高まる。「リヤ(のダウンフォース)だけ増やしてもよくない、ということでしょう。2mmでも、結構効果はあります」(近藤エンジニア)。

 また、リヤディフューザーのフィンが小型化された。これはドラッグを減らす(=ダウンフォースが減る)方向のモディファイと思われるが、「ウイングとの兼ね合いなのか、フロントからの風の入り方が変わったからなのか、そこは風洞をかけてみないと分からないですね」と近藤エンジニア。「速くなったかどうかは分からないですけど(笑)、前後の空力バランスは良くなりました。それでもまだ、ほかのGT3に比べるとオーバーなイメージですけどね」と、ドライバーとしてのフィーリングを片山が語る。

 ダンパーは仕様が変更になった。兄弟車のウラカンGT3では、2019年のEvoモデルでサスペンションが見直され、ダンパーの減衰力調整機構は2wayから4wayへと変わっていたが、アウディR8 LMSは、Evo2でやっと4wayのダンパーが採用されたのだ。ウラカンGT3と違い、サスペンション自体に変わりはないが、伸び/縮みそれぞれのピストンスピードのハイ/ローを調整できるようになり、「セッティングがしやすくなり助かっている」(近藤エンジニア)という。

 セッティングという面では、トラクションコントロールの調整幅も広がった。性能自体に変更はないが、昨年までは調整ダイヤルがひとつだったのに対し、Evo2ではふたつに増えた。これまでは縦方向のみに対する調整だったのが、縦方向と横方向を分けて細かく調整できるようになったイメージだ。ここはドライバーが走行中に切り替えるポイントとなる。

「単純に縦、横というわけではなく、その組み合わせですね。アウディ側から推奨値も出ていますが、今は横方向を決め打ちにして、タイヤの摩耗具合などそのときのコンディションで縦方向を合わせる使い方をしています」(片山)。そしてトラクションコントロールのダイヤルがふたつになったこともあり、ステアリングも変更されている。

 エンジンは、スペーサーを使ってインテークマニホールドを延伸。数センチのかさ上げによってトルクカーブに影響が見られたようだ。「回転の上がりが速くなった」とは近藤エンジニアで、「低回転域のトルクが増えた感じです」と片山が付け足す。

 ただ、たとえば2021年の富士ラウンドでは参加条件によるエアリストリクター径が41mm×2だったのに対し、2022年は37mm×2に絞られ、ふたりは「(インテークの延伸)効果をあまり得られていない」と口をそろえる。多彩な車種を均衡させるために致し方ない参加条件だが、エアリストリクターを4mmも下げられるということは、空力等も含め、それだけアウディR8 LMS Evo2の進化は大きく、戦闘力が高いと判断されたのだろう。

 Evo2になっても、アウディR8 LMSが得意とするサーキットに変わりはないという。ブレーキのパフォーマンスが高く、ミッドシップというトラクションの良さを活かせるモビリティリゾートもてぎが勝負のラウンドだ。今季ここまで、ベストリザルトの5位入賞を果たした開幕戦岡山と同様、全車がノーウエイトで挑む最終戦。ガチンコの戦いで、アウディR8 LMS Evo2の真価が再び試される。

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