活発なスプリント用16バルブ・ユニット
世界で最も快適なサルーンの1台として、高く評価されたトライアンフ・ドロマイト。パワフルなスプリント仕様では、胸のすくような加速と不足ない車内空間を備え、サルーンとして今でも充分に活躍できる。ドライビングポジションも理想的といえる。
【画像】マニア心をくすぐるスプリント トライアンフ・ドロマイト スピットファイアにTR4も 全116枚
動力性能は、ドロマイト 1300で0-97km/h加速が約20秒を必要とするが、スプリントでは9.0秒を切る。グレードによって速さの開きは大きいものの、エンジンは回転数を問わず滑らかに吹け上がる。
特にスプリントの2.0L 16バルブ・ユニットは活発だ。ただし、ラジエタークーラントの交換を怠ると、アルミニウム製ヘッドの腐食やオーバーヒートに繋がる。ヘッドガスケットも傷めてしまうので、定期的なメンテナンスは欠かせない。
ベーシックなスチールヘッドの1300や1500の4気筒ユニットでも、オーバーヒートの痕跡やウオーターポンプの調子、ガスケットの状態がチェックポイント。管理が行き届いていれば、鋳鉄製のエンジンは基本的に堅牢といえる。
パワー不足や吹けの悪さは、キャブレターのラバーマウントの劣化が原因かもしれない。弱点の1つがクランクエンド・フロートと呼ばれる部分。エンジンを始動し、クラッチペダルを誰かに踏んでもらい、フロント側のプーリーに遊びがないか確かめたい。
致命傷となるボディやシャシーのサビ
ドロマイトが現役の頃、ガソリンは有鉛が一般的だった。対策を取らないまま現代の無鉛ガソリンで高回転域まで回すと、ヘッドのバルブシートが駄目になってしまう。添加剤を用いるのも良いが、バルブシートのアップデートを済ませた方が安心だろう。
デフの摩耗具合や、MTの場合は変速時にギアの回転数を調整するシンクロメッシュの状態を予め確かめておきたい。英国では、専門ガレージへエンジンやトランスミッションのオーバーホールを依頼できる。
ブレーキは、公道で乗るぶんには現在の交通環境にも充分耐えられる。サーキットでの走行会に挑むなら、制動力は足りないだろう。スプリントのブレーキパッドは、1850より高性能なアイテムが用いられていた。
年代物のクルマらしく、ドロマイトの致命傷となるのがボディやシャシーのサビ。最も深刻な部分といえるのがフロントガラスの付け根、Aピラーとバルクヘット、インナーフェンダーなどが交差する付近だというが、全般的に錆びやすい。
ハンサムなミケロッティ・デザインのボディに、先進的な技術が組み合わされたトライアンフ・ドロマイト。アルミホイールを履くスプリントは特に、カーマニアの心をくすぐるクラシックサルーンといえるだろう。
購入時に気をつけたいポイント
ボディとシャシー
前後バンパーの裏側、フェンダーの内外、サスペンションの取り付け部分、アンダーボディやサブフレーム全般、シャシーレッグ、フロントガラスの周辺、フロアパンなどが錆びやすい。ドアの下側や荷室のフロア、トランクリッドも要注意。
リアシートの下側やビニール張りルーフの素地など、確認しにくい部分も錆びがち。
エンジン
16バルブヘッドのスプリント用ユニットは先進的で高性能。一般的なグレードに積まれた4気筒ユニットの方が、信頼性では勝る。不具合は完璧ではない鋳造材料や、メンテナンス不足に起因する。基本的には堅牢といえる。
1854ccと1998ccのエンジンヘッドはアルミ製。オーバーヒートやヘッドガスケット、タイミングチェーンの状態を確認する。
1300と1500に搭載されていたのは、トライアンフ・スピットファイア譲りのスチールヘッド・ユニット。こちらも耐久性はあるが、クランク・スラストベアリングが劣化しがち。バルブ周辺の摩耗や腐食状態もチェックポイント。
トランスミッション
4速MTにはシンクロメッシュが備わるが、1速と2速は特に弱い。内部のレイシャフトも同様。オプションだったオーバードライブが備わる場合は、変速できるか確かめる。ニュートラルでシャフトノイズがないか聞き耳を立てる。
3速ATはボルグワーナー社製。フルード交換の履歴と、変速が滑らかに完了すること、加速時のキックダウンが機能するかを確認する。新車時はATの人気が高かったが、クラシックカーとして現在はMTの方が注目度は高い。
サスペンション
サブフレームやウイッシュボーン、トレーリングアーム部分などのブッシュの状態を確かめる。リアアクスルも、経年劣化しやすいゴム製のブッシュが支えている。ポリウレタン製へアップデートすることも可能だが、乗り心地に影響が出ることも。
インテリア
トップグレードの内装にはナイロン素材が用いられていたが、摩耗しやすく状態の良い例は珍しい。ベーシックなグレードに用いられていたビニール素材の方が耐久性はあり、生存数も多い。ウッドパネルの木目に狂いがないか観察する。
トライアンフ・ドロマイトのまとめ
価格は上昇傾向で、今後もスポーティなドロマイト・スプリントの評価が下がることはないだろう。不意の大きな故障が少ない、付き合いやすいクラシックサルーンといえる。状態が良ければ長距離ドライブもいとわず、運転も楽しめる。
購入時は過去の整備履歴を辿り、不適切な改造や修理が施されていないか確かめたい。長期間放置されてきた例も少なくない。ボディの状態、インテリアの摩耗具合、メカニズムの調子を順に確認していく。予算の範囲内で最も良い1台を選びたい。
良いトコロ
優れた動力性能を備えた、能力に長けたクラシックサルーン。英国にはオーナーズクラブのバックアップ体制があり、ボディパネルなど部品の入手もしやすい。
良くないトコロ
生産数は多かったものの、残存数は少ない。部品の再生産は行われないだろう。長く中古車価格が低迷し、放置されてきた例も多い。
トライアンフ・ドロマイト(1972~1980年/英国仕様)のスペック
英国価格:2953~4896ポンド(1978年時)
生産台数:25万5360台(合計)
全長:4122mm
全幅:1588mm
全高:1372-1395mm
最高速度:133-186km/h
0-97km/h加速:8.4~20.1秒
燃費:8.1-12.4km/L
CO2排出量:−
車両重量:904-1041kg
パワートレイン:直列4気筒1296/1493/1854/1998cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:58ps/5500rpm-128ps/5700rpm
最大トルク:9.3kg-m/3300rpm-16.8kg-m/5400rpm
ギアボックス:4速マニュアル/3速オートマティック
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みんなのコメント
でも、日本でわざわざ乗る人なんているの?みんなの好きな「佳き時代」の車じゃないんだよ?