現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【牧野茂雄の自動車業界鳥瞰図】安価な価格帯で ASEAN をねらう中国勢

ここから本文です

【牧野茂雄の自動車業界鳥瞰図】安価な価格帯で ASEAN をねらう中国勢

掲載 更新
【牧野茂雄の自動車業界鳥瞰図】安価な価格帯で ASEAN をねらう中国勢

ASEAN(東南アジア諸国連合)自動車市場は昨年実績で約340万台。2025年には500万台に届くと言われる。日本勢は過去50年に渡って投資を続け、いまでも85%のシェアを誇る。では今後、日本勢はASEANでどう振る舞うのだろうか。緩い連合を組んで欧米中に対向するのか。内輪の競争を続けるか。そろそろ決断を迫られる時期に来ている。TEXT◎牧野茂雄(MAKINO Shigeo)

 2017年のASEAN自動車市場のうち、インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナムの5ヵ国合計は約327万台であり、ASEAN全体の96%を占める。この5ヵ国が自動車生産国であり、シンガポール、ラオス、ブルネイ、ミャンマー、カンボジアは輸入に依存している。17年の市場が前年比減だったのはベトナムで、約10%のマイナス。インドネシアとマレーシアは横ばい。タイとフィリピンは同10%以上伸びた。

オリックス・レンテック:EVの心臓部「プラットフォーム」のレンタルサービスを開始

 現在の日本とASEAN市場がまったく違う点は自動車所有欲である。「ほかのなにを我慢してでも自動車は欲しい」という欲望が自動車市場を支え、成熟市場ニッポンからASEANを見ている我われの予測がしばしば外れる。新車を買うことへのあこがれは強い。しかし「見栄えのいい中古車」の流通量が増えると、すんなり流れたりする。モデルチェンジで姿形が変わることにはあまり頓着せず、外観にキズがなくキレイであることにこだわる。そんな印象を抱く。

 自動車メーカーも調査会社も、いずれASEANは年間500万台の市場になると予測する。一人当たりGDPで突出したシンガポールとブルネイは自動車生産国にはならないだろう。この両国を除けばマレーシアが約1万ドルでトップ。2位はタイで約6000ドル、3位はインドネシアで約3500ドル。フィリピンはそろそろ平均が3000ドル台に乗りベトナムは急速に2500ドルへと近づきつつある。自動車生産拠点を持つこの5ヵ国は着実に経済発展を続けている。それが市場の力でもある。

 一方、国ごとの売れ筋モデルには大きな違いがある。インドネシアはMPV(多目的ワゴン)とSUVを中心としたワゴン・バン系が約6割を占め、HB(ハッチバック)を含むセダン系は2割にとどまる。タイは荷台のあるピックアップトラックが4割強でセダン系は3割強だ。マレーシアとベトナムはセダン系が最多でフィリピンはセダン系とMPVおよびSUV系がともに約4割である。

 世界的な流行になったSUVとその派性モデルであるクロスオーバーも、ASEAN域内での販売台数は増えている。過去にこのカテゴリーがあまり売れなかったマレーシアで売れるようになり、フィリピンでは一気に人気車種になった。都市部に住む中間所得層が中級価格帯のクロスオーバー車に強みを示す傾向は、さらに顕著になるように思う。

 市場調査会社は「国による」というが、流行は伝染する。いままでSUVが売れなかった国でもSUV需要は徐々に拡大するだろう。ただし道路舗装率が低い地域ではフレーム車の需要は廃れない。タイのピックアップもインドネシアのMPVもフレーム車である。インドネシアではトヨタ・アルファードが人気だが、未舗装の道をお構いなく飛ばしていると「2年でモノコックが歪む」そうだ。それでも高額で取り引きされているから、日本車への信頼感は極めて高いといえる。

 当然、ASEANは日本以外の自動車メーカーも狙っている。かつてVW(フォルクスワーゲン)は、ドイツ政府とともにタイ政府にエコカー政策(小排気量小型車の優遇)を持ちかけた張本人だが、この制度は現在、日系メーカーが利用しておりVWは工場進出はしていない。今後3~4年で欧州勢のASEAN域内生産拠点が現在よりも大幅に充実する可能性は低い。

 ただし、すでにKD(ノックダウン)組み立て工場を持つダイムラーとBMWは、SUVのASEAN域内組み立て機種を増やし、一部の部品を現地調達し、ベトナム向けの出荷を開始した。そのベトナムでは、韓国・ヒュンダイ傘下の起亜がトヨタに次ぐナンバー2の地位を占めており、ヒュンダイ・起亜がASEAN攻勢の拠点と位置づけている。

 そして中国である。すでに上海汽車はタイに工場を構える。タイを選んだ理由は部品のサプライチェーンがASEAN域内でもっとも充実しているためだ。一方ベトナムは、今年1月にASEAN域内製の自動車部品について関税を撤廃した。完成車の関税撤廃はスケジュールどおりだったが、部品の門戸開放は昨年11月の決定だった。域内での完成車流通が活発化した場合、すでにベトナムに工場進出している自動車メーカーが撤退する可能性を否定できないという点が部品関税撤廃の理由だ。(次ページへ続く)

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
ベストカーWeb
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
AUTOSPORT web
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
ベストカーWeb
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
Auto Messe Web
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
AUTOCAR JAPAN
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
AUTOSPORT web
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
乗りものニュース
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
AUTOSPORT web
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
AUTOSPORT web
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
くるまのニュース
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
AUTOCAR JAPAN
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
AUTOSPORT web
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
Auto Messe Web
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
乗りものニュース
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
レスポンス
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
AUTOSPORT web
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

250.0360.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

14.0155.0万円

中古車を検索
MPVの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

250.0360.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

14.0155.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村