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正統派セダンを求める人へ──ジャガーXE試乗記

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正統派セダンを求める人へ──ジャガーXE試乗記

かつて英国を代表するふたつの自動車メーカーだったジャガーとランドローバーは、それぞれフォードに買収されて統合された。その後、フォードは経営難に陥り、2008年にインドのタタ・モーターズにジャガーおよびランドローバーを売却した。現在両社はタタ傘下のジャガーランドローバーというひとつの会社である。

以来、ジャガーブランドはセダンとスポーツカーを扱い、ランドローバーブランドでSUVを展開してきた。ところがSUV全盛時代が到来し、(新モデルを)出せば出しただけ売れる状況……といっても過言ではなくなってきたため、ジャガーブランドもSUVを扱うようになった。

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もっとも、それより前にランドローバー側も「レンジローバー・イヴォーク」と呼ぶ、分類上はSUVであるものの、3ドアがあってコンバーチブルもあるという“背の高いクーペ”を販売しているから、両ブランドが互いの領域にクロスオーバーしているといえる。

案の定、ジャガーが出した「F-PACE」と「E-PACE」の大小2種のSUVはどちらも販売好調だ。ここのところジャガーの販売台数は右肩上がりである。なお、SUVモデル購入者のうちの少なくない割合が、ジャガーのセダンから乗り換え、セダンを買おうと来店したものの「こっちのほうがいいね」と心変わりして買っているという。

しかしちょっと待ってほしい! 1990年代に単なるクルマ好きとして愛読していた『NAVI』誌上では、当時の編集長にして現在『GQ』の編集長であるスズキ氏が、当時の「XJ」を乗りまわしてその魅力をとうとうと書いていた。それを読んで育ったワタシをはじめ、多くの40歳以上のクルマ好きは“ジャガーといえばセダンだろう!”という思いを拭いきれない。そのジャガーのセダンが、自らのSUVに押されて元気がないなんて、きっと編集長も嘆いているに違いない。←この一文が残っていたら「yes」ということだ。

と言いつつも、そういや最近ジャガーのセダンに乗っていないなと思い、久々に「XE」を試した。ジャガーがメルセデス・ベンツ「Cクラス」、BMW「3シリーズ」クラスの分野に2015年に投入したモデルだ。試乗したのは「ランドマーク・エディション」という特別仕様車で、2.0リッター直列4気筒ターボディーゼルエンジンと8速ATが載る。

バランスのよさが絶妙

ジャガーは変わったATシフターを好む。かつてはジャガーの「J」をかたどった溝が掘られているシフターがおなじみだったが、現在はエンジンオンでせり出してくるダイヤル式を採用する。特に使いやすいわけではないものの、今やギアチェンジはパドルでできるし、ATシフター自体はスイッチみたいなものなので不満はない。

そのダイヤルセレクターを“D”に入れてスタート。ディーゼルエンジンは日常域で力強さを感じられ、実に好ましい。今回試乗した長野県長野市から白馬村にかけてのルートは、交通量も信号も少なめで、一般道にしてはそこそこ高い速度を維持できる典型的な地方の交通環境だったが、こういったシーンでディーゼルエンジンは真価を発揮する。

低回転で十分なトルクを発揮するのでエンジン音もうるさくない。踏めばグイッと鋭く加速するし、燃費がよい。しかも使用油種は軽油だから、燃料代が安い。いいことづくめだ。

XEは車体にも足まわりにも特筆すべき特徴はないものの、「こういう部分がイヤだ」と、指摘したくなる点もない。素直なハンドリングに終始するエンジン縦置きのセダンだ。基本RWDであるが、いくつかのグレードで4WDを選べるのもXEの美点だ。試乗車は4WDだったこともあり、ところどころ雪が残る田舎道でもトラクションの面で不安を感じる場面は一度もなかった。また、必要があれば内側の車輪のみにブレーキをかけてクルマを曲がりやすくしてくれる「トルク・ベクタリング・バイ・ブレーキ」は、低μ路において若干速すぎる速度でコーナーへ進入してしまったときのお助け機能として有効だった。

またランドローバー譲りの装備として、「ASPC(オール・サーフィス・プログレス・コントロール)」が備わる。言わば悪路用の低速クルーズコントロールで、これを使えば、ドライバーが設定した速度を維持するようにシステムがアクセル(トラクションコントロール)とブレーキ(ABS)を自動でコントロールしてくれるため、ドライバーはステアリング操作に専念できる。

XEは突出した特徴や性能があるわけではないものの、高次元であらゆる部分のバランスが取れたグッドセダンだ。また昨今は、フロントグリルの大きさとカタチの大胆さを競うようなトレンドがあるなかで、ジャガーはフラッグシップのXJから1番小さなこのXEまで、上品な顔つきを保っているのも好ましい。正統派セダンが少なくなるなか、XEはかえって個性的かもしれない。デビューしてから月日は経つものの、その個性が依然失われていなかったのは大きな魅力であった。

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