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ダムス、カーリン、ARTグランプリ。日本とも縁が深いFIA F2老舗チーム【海外レーシングチーム解体新書/第1回】

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ダムス、カーリン、ARTグランプリ。日本とも縁が深いFIA F2老舗チーム【海外レーシングチーム解体新書/第1回】

 海外レーシングチームの歴史とバックグラウンドをお届けする不定期連載『海外レーシングチーム解体新書』。第1回は、日本人ドライバーの活躍で注目を浴びるF1直下のフォーミュラシリーズ『FIA F2』から、岩佐の残留が決まったダムスを筆頭に、カーリン、ARTグランプリといった日本とも縁が深い老舗3チームについてお届けする。

■ダムス/新体制で復調狙うフランスの老舗

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 1988年にジャン-ポール・ドリオと元F1ドライバーのルネ・アルヌーが設立したフランスのレーシングチーム、ダムス(ドリオ=アルヌー・モータースポーツ/DAMS)は、翌1989年より国際F3000選手権に参戦を開始。そんなダムスの名を広く知らしめた最初のドライバーは、JGTC全日本GT選手権、スーパーGT GT500クラスなどでも活躍したエリック・コマスだ。

 コマスは1990年の国際F3000選手権タイトルを獲得。さらに、1993年はオリビエ・パニス、1994年はジャン-クリストフ・ブイヨンが国際F3000選手権を制覇し、ダムスはフランス人ドライバーのF1昇格を支えた。

 国際F3000選手権で常勝チームとなったダムスはF1進出を計画。1995年にレーシングカーコンストラクターのレイナードと提携し、F1テストカー『ダムスGD-01』を開発。コマスらがステアリングを握り、ポール・リカール・サーキットで実走テストにも臨んだが、資金不足によりF1進出は断念することに。

 その後もスポーツカーレースやFIA GT選手権に参戦するも、これらの活動は自動車メーカーとの契約やコラボレーションによるものでいずれも短期間に終わる。ただ、主戦場としていたフォーミュラカーレースでは、フォーミュラ・ルノーV6ユーロカップ、A1グランプリ(チームフランスとして)、GP2などでタイトルを獲得するなど、依然として強豪チームであり続けた。

 日本のファンにとってはダムスが身近なチームとなったのはトヨタ・ヤングドライバーズ・プログラム(TDP/現:TGR-DC)のドライバーを受け入れ、中嶋一貴、小林可夢偉がGP2に参戦した際だろう。なお、小林可夢偉はダムスとともに2009年のGP2アジアシリーズのタイトルを獲得している。

 そのほか、ダムス在籍歴のあるF1ドライバーの名前を挙げると、アラン・マクニッシュ、フランク・モンタニー、セバスチャン・ブルデー、ジェローム・ダンブロジオ、ロマン・グロージャン、フェリペ・ナッセ、マーカス・エリクソン、ピエール・ガスリー、ニコラス・ラティフィ、アレクサンダー・アルボンと錚々たるメンバーの名が連なる。

 チーム創設から30年が経過した2019年8月にジャン-ポール・ドリオが鬼籍に入ると、その息子のオリビエとグレゴリーがチーム運営を引き継ぐことに。そして2022年2月には、元F1ドライバーのシャルル・ピックがダムスを買収。そして4月にはフォーミュラE部門のe.ダムスをニッサンに売却するなど、創業者亡きあとのダムスはチーム体制の大きな変更を余儀なくされた。

 ただ、FIA F2に絞った2022年は岩佐が2勝を挙げ、ドライバーズランキング5位に入るなど、復調の兆しが見えている。それだけに2023年シーズンのFIA F2でも注目のチームに違いない。

■カーリン/日本人ドライバーが多数在籍

 チームマネージャーとしてレーシングカーコンストラクターのボウマンや、ウェスト・サリー・レーシングで手腕を発揮したトレバー・カーリンが1996年にイギリスで創設したカーリン・モータースポーツ。日本のファンにとっては古くから馴染み深いチームに違いない。

 1997年にイギリスF3選手権で活動をスタートさせたカーリンは、2000年に当時ホンダの育成ドライバーだった佐藤琢磨が加入し、過去最高位となるドライバーズランキング3位を獲得。翌2001年には琢磨とともにイギリスF3、F3マカオGP、F3マスターズを制覇し、その名が広く知れ渡ることとなった。

 2010年よりGP3(現:FIA F3)、2011年よりGP2に参戦。そして2018年より北米最高峰のインディカー・シリーズに参戦するも、2021年をもって撤退している。また、2019年にはOIRC Team YTBとタッグを組み、YTB by Carlinとして全日本F3選手権にも参戦していた。

 在籍した日本人ドライバーは多く、先述した佐藤琢磨をはじめ、イギリスF3では2001年に星野一樹、2002年に細川慎弥、2005年~2006年に井原慶子が所属。FIA F2では2019年に松下信治、2020年に角田裕毅。FIA F3では2019年に名取鉄平が所属したほか、2021年には日本のBuzzグループがBuzzFXブランドでカーリンのFIA F3チームのタイトルスポンサーに就任するなど、近年も日本との縁が深いチームだ。

 2022年はFIA F2、FIA F3、ユーロ・フォーミュラ・オープンなどのフォーミュラカーレースに参戦しつつ、2022年に初開催となった世界初の国際電動スクーターレースシリーズの『eスクーター選手権(eSC)』にエントリーし、2輪チームとしてのキャリアもスタートさせている。

■ARTグランプリ/フェラーリの新チーム代表バスールが立ち上げた名門

 2023年1月9日よりスクーデリア・フェラーリのチーム代表兼ゼネラルマネージャーに就任したフレデリック・バスール。ARTグランプリはバスールが1996年に立ち上げた『ASM F3』を源流とするレーシングチームだ。2004年にレーシングドライバーのマネジメントを手がけるニコラス・トッドが共同オーナーに就任するとチーム名をARTグランプリに改名。なお、ニコラス・トッドは2018年をもってチームの株を手放し、現在はチーム運営から手を引いている。

 ASM F3としてはF3やフォーミュラ・ルノーなどのミドルフォーミュラを主戦場とし、特にF3ユーロシリーズでは2004年から2009年にかけて51勝を記録するなど、シリーズを長きにわたり支配する活躍を見せた。2006年~2007年には小林可夢偉が所属し、F3ユーロシリーズ、F3マスターズ、F3マカオGPなどに参戦している(トッドの株式取得後もミドルフォーミュラではASM F3としてエントリー)。

 トッドがチームプロモーションを統括するようになると、ARTグランプリの主戦場はビッグフォーミュラへと移り変わり、A1グランプリやGP2へ参戦を開始。GP2初年度の2005年はニコ・ロズベルグがドライバーズタイトルを獲得。翌2006年にはルイス・ハミルトンがタイトルを手にし、ARTグランプリの名は世界に広く知れ渡った。また、2008年のGP2、2008/2009年シーズンのGP2アジアシリーズでは当時ルノーF1のテスト・デベロップメント・ドライバーだった山本左近を起用している。

 2010年よりF3ユーロシリーズに代わり、GP3がスタートするがここでもARTグランプリはエステバン・グティエレスとともに初代チャンピオンを獲得。GP2、GP3で広く成功を収めたARTグランプリはF1進出を計画し、2011年シーズンからの参戦に向けてFIAへエントリー申請を行うも、その後財政状況を理由に申請を撤回している。

 ただ、バスールの野望は留まらなかった。バスールはスパークレーシング・テクノロジーを設立し、2014年よりスタートしたフォーミュラEへのシャシー供給を開始。フォーミュラEでの活動が多忙を極めると、バスールは同年にチーム代表を辞任し、スーパーGT GT500クラスにも参戦したセバスチャン・フィリップがARTグランプリのチーム代表に就任した。

 2014年からはF1に参戦するマクラーレンとの関係が深まり、マクラーレンとホンダの育成ドライバーが加入。2014年には伊沢拓也、2015年~2017年は松下信治がGP2/FIA F2に、そして2016年~2017年は福住仁嶺がGP3に参戦した。

 また、SMPレーシングとタッグを組んでWEC世界耐久選手権、GPXレーシングの技術サポートとしてスポーツカーレースにも進出。DTMドイツ・ツーリングカー選手権へ単独チームとしてエントリーしたこともあったが、近年はFIA F2、FIA F3、フォーミュラ・リージョナルとシングルシーターに注力。2022年シーズンにはビクトール・マルタンスとともにFIA F3で初のドライバーズタイトルを獲得している。

 そのほか、在籍歴のあるF1ドライバーの名前を一部挙げると、セバスチャン・ベッテル、シャルル・ルクレール、バルテリ・ボッタス、ニコ・ヒュルケンベルグ、ジョージ・ラッセル、エステバン・オコン、アレクサンダー・アルボン、ロマン・グロージャン、ストフェル・バンドーン、ジュール・ビアンキ、セルゲイ・シロトキン、ニキータ・マゼピン、ニック・デ・フリースと、現役F1ドライバーをはじめ、錚々たる顔ぶれが並ぶ。

 また、ARTグランプリは2011年にシャシーメーカーとして、レーシングカートに参入。日本へも進出し、2012年~2013年には道上龍率いるARTグランプリ・ジャパンが全日本ジュニアカート選手権やスーパーFJに参戦した。2014年にレーシングカートの名門ビレルと合併し、以降はビレルARTとして広く展開を続けている。

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