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シトロエンの「ハイドロサス」は壊れない!? 勇気を持って世界遺産と向き合ってみよう!【中古車至難】

掲載 更新 18
シトロエンの「ハイドロサス」は壊れない!? 勇気を持って世界遺産と向き合ってみよう!【中古車至難】

■90年以上前から尖ったメーカーだったシトロエン

 非常にギラついた顔立ちのクルマ。あるいは「コンピュータの満漢全席」とでも評したくなるクルマ。

【画像】現代でも通用する秀逸さ「ハイドロ シトロエン」を見る(12枚)

 筆者はそういった物々を一概に否定する感性は持ち合わせていないが、それでも時おり、そういったクルマばかりとなった路上の風景に疲れることはある。

 そんなとき、選びたくなるのが「ハイドロニューマチック・サスペンション」を採用していた往年のシトロエン各車だ。

 ご承知のとおりシトロエンは、ダブルヘリカルギア(やまば歯車)の製造で財を成したフランス人、アンドレ・シトロエンが1919年に興した自動車メーカーである。

 欧州の自動車メーカーとしては初めてオール鋼製ボディのクルマを大量生産するなど、初期段階から先進性が目立ったシトロエンだったが、1934年登場の「トラクシオン・アヴァン」(世界的に見てきわめて早い時期に前輪駆動とモノコック構造のシャシを採用したモデル)で、その企業キャラクターは決定的となった。

 さらに決定づけたのが、1955年登場のDSというモデルに採用された「ハイドロニューマチック・サスペンション」だった。

●魔法の絨毯の乗り心地はこうして生まれた

 賢明なるVAGUE読者各位には今さらな話だろうが、シトロエンのハイドロニューマチックとは、一般的な金属バネの代わりにオイルと窒素を使っているサスペンションシステムのこと。

 エンジンルームの左右に「スフェア」という球体があり、その内部に高圧の窒素ガスとオイルが封入されている。これらが普通のクルマでいう金属バネとショックアブソーバーの役割を果たし、路面からの衝撃をあくまでもやわらかく吸収し続ける仕組みになっているのだ。

 その乗り味は、簡単にいうなら「魔法の絨毯」である。

 そしてその車台の上に乗るボディおよびインテリアの意匠がまた素晴らしい。

 当時のアバンギャルド(前衛)が今なおアバンギャルドであり続け、それでいて人間味というか、「人間本来の生理に合っている感じ」も見て取れる意匠なのだ。

 ただし問題は、「それって今でもフツーに乗れるのか?」という点だ。

 年式的に古いDSはおくとして、ある程度現実的な選択肢となる「GS/GSA」でも35年から51年前の品であり、往年のハイドロ系シトロエンのなかでは新しいといえる「BX」でさえ28年から39年前のクルマだ。

 なおかつ、いささかややこしいハイドロニューマチックである。

 2021年の今、それに乗るという行為は実際のところ、どうなのか?

■複雑なフランス製旧車はこわれやすいのでは? という風評

 結論としては「意外と大丈夫」ということになる。

 もちろんこれはかなりの条件付きで、「マトモな専門店でマトモに修理された個体を買うこと。そして購入後も“定期検診”は怠らないこと」という条件下での「意外と大丈夫」という話だ。

 そもそもは普通に頑丈なシステムだったシトロエンのハイドロニューマチックが、日本では悪名高き存在になってしまったのには、大きく分けて3つの理由がある。

 ひとつは、日本への正規輸入が始まった初期の時代に、当時の輸入元が「シトロエンを正しく触れるメカニック」の育成を怠ったこと。

 筆者の独自取材によれば、多くの(当時の)ディーラーメカニックは「正確な資料やデータが会社から与えられず、その結果として、よくわからないまま整備をおこなっていた」という。

 もうひとつの理由は、初期にそういった整備を受けてしまった個体がその後も、畑違いな一般整備士による「整備」を受けてきたこと。

 そしてもうひとつの理由が、シトロエン自身が1989年の「XM」でハイドロニューマチックの電子制御化を図り、図ったのはよいのだが、機械製品としてのツメが甘かったため「謎の故障」を頻発させたことだ。

 これら事情の合わせ技によって「ハイドロニューマチックのシトロエン=近寄るべからず」という評価が固まってしまったのだ。

●世界遺産を手に入れると思えば安い!?

 だがしかし、ハイドロニューマチックに関する豊富な経験を持つ専門店が、納車前にビシっとした整備を施した個体でさえあれば、往年のシトロエンというのはそう簡単に壊れるものでもない。

 もちろん2021年製の新車とまったく同じ感覚で維持することなどできやしないが、それはハイドロシトロエンであろうと、金属バネの昔の日産スカイラインであろうと同じことだ。「古い機械と付き合うだけの根気と愛情」があれば、普通になんとかなるものである。

 とはいえ往年のシトロエンは決して激安なクルマではなく、とくに整備済みのそれは、そこそこのお値段にはなる。具体的には、あくまで「おおむねの目安」としては下記のような金額であろうか。

・シトロエン GS/GSA|200万-300万円
・シトロエン BX|200万-300万円
・シトロエン CX|250万-400万円
・シトロエン DS|800万-1200万円

「中古のハッチバックを買う」と思えば、いささか高額なのかもしれない。しかし「人類史に残る何か」を手に入れるためのお代としては、筆者には「爆安」に思えるのだが、いかがだろうか?

 ちなみに筆者は今、某店で売りに出されている約140万円の「GSAパラス」が欲しくて欲しくてたまらない状態になっている。車両価格にプラスして100万円くらいの整備費用および内装の補修費用はかかると思うが、それでも、「世界遺産としては激安!」としか感じられないのだ。

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みんなのコメント

18件
  • 12気筒エンジン、ロータリーエンジン、シトロエンのハイドロニューマチックは
    車語るなら体感しておくべき
  • ハイドロ・・・一度は味わってみたい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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