DSオートモビルズはシトロエンの高級サブブランドとしてスタートし、その後シトロエンから独立したステランティスの中の高級車ブランドとして今に至る。その中核モデルがシトロエンC4をベースにした、VWゴルフなどかひしめくCセグメントに属するDS4だ。
どこから見ても美しく彫刻的なエクステリアデザイン
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日本でもそのパリが香るデザイン性に惚れたファンも多いはずだが、DS4はどこから見ても美しく彫刻的なエクステリアデザイン、パリの美学、アートが息づくどんなクルマにも似ていないインテリアの素晴らしさから、2022年1月に自国、パリで開催された「第37回国際自動車フェスティバル」で”世界で最も美しいクルマ”に選出されている。
今回はそんなDS4の美学をさらに高めた、パリのファッションブランドから着想された、オートクチュールの息吹とDSブランドが誇るサヴォア・フェール=匠の技を、各モデルにより美しく表現したとされる新しいモデルコンセプト「DS COLLECTION」から、感性を揺さぶる豊かな旅へと誘う特別仕様のPHEVモデル「DS 4 Esprit de Voyage E-TENSE」の試乗記をお届けしたい。※DS 4 Esprit de Voyageシリーズにはガソリンターボ、デイーゼルターボエンジンモデルもラインナップされる。
VWゴルフなどと同じCセグメントに属するボディサイズは全長4415×全幅1830×全高1495mm、ホイールベース2680mm(VWゴルフ8は同4295×1790×1475mm、2620mm)。PHEVとなるパワーユニットは1.6L直4ガソリンターボエンジン180ps、25.5kg-m+モーター110ps、32.6kg-m+8AT、システム出力225ps、36.7kg-mを誇る。WLTCモードのハイブリッド燃料消費率は16.4km/L。12.4kWhの駆動用バッテリーによって、WLTCモードで56kmのEV走行が可能だ。
スタイリッシュと思えるクルマでも、どこかの位置から見ると「そうでもない」と思わせることもありがちだが、DS4はクルマの周囲をグルリと一周しても破綻がない。どこから見ても美しく、日本の街に止めてもそこがパリに見えるようなエスプリを感じさせる。専用19インチアロイホイール“CANNES”がもたらす足元もスタイリッシュだ。
このDS 4 Esprit de Voyageモデルでは、ドアミラーやインパネ助手席側などに、DS COLLECTIONの発信地であるパリを起点とするヨーロッパのマップが描かれ、アイコンとなっているのもにくい。
キーを携えてDS4に近づけば、自動でそれまでドアに埋め込まれていたドアハンドルがすべて出てきて、乗員を迎えてくれる。
こだわりに満ちたディティールが光るインテリア
インテリアのDSらしいデザイン性は、どんなクルマにも似ていない、こだわりに満ちたディティールが光る、パリの装飾品がちりばめられたようなアーティスティックな世界。そのぶん、例えばパワーウインドースイッチなどは、それをそうとは見せないデザインゆえ、初見では戸惑うこともあるはずだ。
ダイヤ型のスターターボタンを押して走り始めれば、フルデジタル液晶のメーターは小ぶりだが、必要な情報はしっかり、はっきりと日本語で表示される。
インテリアデザインとともに感動できるのは、やはりフランス車の十八番と言えるシートのかけ心地の良さ。レザーシートながら上半身を優しく包み込むようなかけ心地、たわみによるホールド感が心地よい。
乗り心地は19インチタイヤを履いていることもあって、ふんわりしなやかなタッチとは違うしっかり感あるドシリとしたタッチが基本だが、プジョーシトロエン最新のプラットフォームによって段差などの乗り越えも不快なショックなしに通過できる。総じてフラットに徹した快適かつロングドライブでも疲れにくい乗り心地と断言していいだろう(シートの快適さを含む)。
パワーステアリングはセンター付近がビシリと引き締まり、低速域から高速域に至るまで、安心感あるドライビングフィール、直進感が得られる。
満充電でのスタート後はEV走行になるのだが、気になるノイズはほぼロードノイズのみ。これでロードノイズを低減できれば、もっとDS4 PHEVの美学を静謐な美術館の中にいるように堪能できると思えはする。が、エンジンが始動し、中回転まで回した時のエンジンノイズの遮断は見事。遥か遠くにエンジンがあるかのようだった。EV走行時とエンジン始動時のパワーユニットからのノイズの差が大きい国産PHEVとの大きな違いでもある。
加速力はEV走行時、HV走行時ともに実にジェントル。レスポンスは穏やかで、ジワーッと速度を高めていく感覚だ。ドライブモードはエレクトロリック、ハイブリッド、コンフォート、スポーツが備わるが、スポーツにセットするとアクセルレスポンスが鋭すぎてギクシャク感が伴うため、一般道の走行では使いづらいと感じた。山道などを除いてそれ以外のモードを推奨する。
路面をなめるような安定感のある走り
DS4はその全高、バッテリー積載の低重心を生かして、カーブの走行も得意中の得意。19インチタイヤの恩恵もあり、路面をなめるようにクリア。その際、シートの絶妙なホールド性が安心感、安定感を高めてくれる。本来、張りの強いはずの本革シートでここまでのたわみを実現しているあたりは、リーン・ロゼなどの高級ソフアでも名をはせるフランスの椅子文化がもたらす特筆点と言えるだろう。
DS4にはパドルシフトも備わるが、その効きはけっこう穏やか。とはいえ、加減速のしやすさに威力を発揮してくれる。
そうそう、ペダル配置は左ハンドルが基本だけに、足元は狭い。左足のフットボードなどはなく、ブレーキペダルを踏む右足と左足がかなり近いのである。
また、標準装備のナビゲーションの使い勝手はドイツ車や日本車に比べ、使いづらく、他のフランス車同様にオートブレーキホールド機能がないところはちょっと残念なポイント。渋滞の多い日本の市街地では、やはりオートブレーキホールド機能は鉄板な機能装備だからだ。
後席の居住性は、Cセグメントの流麗なハッチバックモデルとしては及第点。身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で頭上に130mm(ガラスサンルーフ標準装備)、膝周りに150mmは必要十分と言えるが(ゴルフ8は同130mm、175mm)、フロアからシート座面先端までの距離=ヒール段差が330mmというところはちょっと物足りない。フロア中央の出っ張りが最小限なのはいいとして、具体的には、太ももの裏に隙間ができる、お尻で体重を支えるやや体育会的着座になりがちだからだ。ちなみにVWゴルフ8の後席ヒール段差は350mmあり、太ももの裏はほぼシートに密着する(身長172cmの筆者の場合)。
PHEVのE-TENSE では390L(ガソリン、ディーゼル車は430L)となるラゲッジルームは開口部地上高770mm、開口部段差130mm、フロア奥行730~780mm、フロア幅1060mm、最低天井高560mm。床下収納なし(FOCAL Electra®プレミアムサウンドシステム14スピーカーのスーパーウーファーが鎮座)・・・という寸法だ。VWゴルフ8ハッチバックモデルは容量380L、寸法は開口部地上高660mm、フロア奥行750mm、フロア幅1030mm、最低天井高675mm。床下にはスペアタイヤ・・・という比較になる。車幅の広さから、フロア幅の広さで有利な一方、高さ方向では床下にバッテリーを積むPHEVゆえフロアの高さ分、やや不利になる。
もっとも、エクステリア、インテリアのデザイン性でDS4が同クラスのライバルを圧倒するのは間違いなく、より個性的な選択としてPHEVも選べるDS4の魅力は、人とは違うCセグメントのハッチバックモデルとして、ナビの使い勝手や今では軽自動車にもあるオートブレーキホールド機能がない点を許せれば、"世界でもっとも美しいクルマ”に選出された個性、デザイン性優先の手ごろなサイズの輸入車の1台であり、これ以上ない選択と言っていいだろう。フランス、パリ好きのオシャレさんにとっても、どこまでも走って行きたくなる”電欠なし”の電動車、最高の相棒になってくれるはずである。
DS 4
文・写真/青山尚暉
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みんなのコメント
ただVWよりさらにサービス拠点が少ないのか少し不安
絶対的には安いとは言え頑張って買う人にとっては高い買い物になるから安全なVWやBMWに流れちゃうんでしょう
街中で見かけたら洒落てるって思う