この記事をまとめると
■いま「TGR GR86&BRZ カップ」が注目を集めている
意外や意外! ふつうの「買い物グルマ」を使って行われるレースがけっこうあった
■プロドライバーも参戦し、見応えあるバトルが繰り広げられている
■ドライバーに聞いたこのレースの魅力や参戦費用について解説する
ドライバーの腕が試されるワンメイクレース
2013年にスタートした「TGR 86/BRZ Race」は文字どおり、トヨタ86(ZN6)およびスバルBRZ(ZC6)の初代モデルを使用したワンメイクレースで、2015年からはプロドライバーを対象としたプロフェッショナルとアマチュアドライバーを対象としたクラブマンの2シリーズを設定。2019年からはクラブマンをエキスパートとオープンクラスに細分化するなど、2021年までナンバー付きワンメイクレースの登竜門として定着していたが、2022年はベース車両のモデルチェンジに合わせて同シリーズも新型のGR86(ZN8)およびスバルBRZ(ZD8)を使用した「TGR GR86/BRZ Cup」として新たなスタートを迎えた。
この新型モデルを使用したTGR GR86/BRZ Cupもプロフェッショナル、クラブマンの2シリーズが設定されているのだが、プロフェッショナルシリーズはマシンの改造範囲が広がっている。
ノーマルマフラーに限定されているクラブマンと違ってプロフェッショナルは「5ZIGEN」、「トラスト」、「フジツボ」、「ブリッツ」など複数のサプライヤーから選択可能。さらにサスペンションに関しても「TRD」および「STI」に限定されているクラブマンに対して、プロフェッショナルに関しては「テイン」や「ブリッツ」、「クスコ」、「エンドレス」、「K-ONE」など複数の指定パーツから選択することが可能だ。
これに加えて装着タイヤも「ダンロップ・ディレッザZIII」のワンメイクで行われるクラブマンに対して、プロフェッショナルは「ダンロップ・ディレッザβ05」や「ブリヂストン・ポテンザRE-09D」、「ネクセンN FERAスポーツR」などのハイグリップスポーツタイヤが使用可能である。
さらにドライバーのラインアップもプロフェッショナルのシリーズ名に恥じない豪華な顔ぶれで、谷口信輝、堤優威、菅波冬悟、中山雄一、青木孝行、宮田莉朋、元嶋佑弥、蒲生尚弥、松井孝允、吉田広樹、平良響、阪口良平、小暮卓史、井口卓人などスーパーGTで活躍するトップドライバーが勢揃い。このメンバーだけを見ても、いかにプロフェッショナルシリーズがハイレベルになっているかが伺い知れることだろう。
もちろん、アマチュアを対象にしたクラブマンもモータースポーツ経験の豊富なベテランに加えて、抜群のパフォーマンスを持つ若手まで豊富なラインアップ。これに加えて前述のとおり、同シリーズはよりワンメイクの要素が高いことから、こちらも激しい接近戦が展開されている。
事実、10月29日~30日に鈴鹿サーキットで開催された第4戦でも、両シリーズともに予選から僅差のタイム争いが展開され、決勝でもスタートから最終ラップまで息がつく間もない混戦が展開された。
参戦ドライバーが語る「GR86&BRZ カップ」の魅力とは
この新型モデルに対して「クルマの剛性感が上がったし、エンジンも2400ccになったことによりパワー不足が補われました。ダンパーを含めて使えるパーツが増えたことでセッティングの大変さは増えましたが、レースのベース車両としては良くなりました」と語るのは、プロフェッショナルシリーズに参戦する井口卓人。
GR86/BRZ Cupの魅力について「最近はフォーミュラ以外で、ひとりで戦えるレースが少ないですよね。スーパーGTもスーパー耐久も複数のドライバーでマシンをシェアするので、ある程度セッティングの合わせ込みも妥協が必要なんですけど、GR86/BRZ Cupは自分のセッティング能力とドライビングスキルで戦うことができる。しかも、プロフェッショナルシリーズはスーパーGTに参戦しているメンバーで戦えるし、タイヤ競争もありますからね。パーツメーカーも参入しているので過剰になり過ぎている感もありますが、そこが楽しみでもあるし、ドライバーとしてはやり甲斐がありますね」と付け加える。
一方、クラブマンシリーズに参戦する松井宏太はFCJ、スーパーFJの経験を持つフォーミュラ出身のドライバーで、ヴィッツレースを経て、2017年より86/BRZ Raceにチャレンジ。この新型モデルを使用したGR86/BRZ Cupについて「ディーラーでマシンを買うことができるし、ナンバー付きなので気軽に参戦できるところがいいですよね。それに新型モデルになったことで、パワー感が上がったし、ミッションも強くなった感じがします。タイヤのグリップが下がったので、タイム的には落ちていますが、ガチンコで戦えるので楽しい」と語る。
同じくクラブマンシリーズに参戦する菱井将文は全日本ジムカーナ選手権でも活躍するドライバーで、「ジムカーナはタイムアタック競技なので誰かとコース上でバトルをすることはないからね。86/BRZ Raceで本格的にレースを始めたけれど、コース上でポジション争いをするのは楽しいし、このレースはマシンを買えば誰でも参加できるので参戦しやすい。クラブマンはタイヤがワンメイクになったことでタイムも3秒ぐらい落ちたけれど、ライフは3倍ぐらい伸びたし、それにワンメイクなのでなかなか抜けないんですけどそこが面白い」と語る。
ちなみにGR86/BRZ Cupの気になる参戦コストについてだが、ベース車両の販売価格は約334万円で、前述の松井は「カップカーはほとんど何もついていないので、そこからホイールなどの装備品を取り付けていくと工賃を含めて500万円弱になると思います。それにプラスして、レースではタイヤ代や人件費などが必要になってくるので1レースあたり50万円はランニングコストとして必要ですね」と語る。
つまり、2022年の年間コストとしては最低でも800万円以上は必要になるが、松井によれば「ヤリスカップと比べると予算はかかりますが、ピュアなレースを楽しめるので、良くできていると思います」とのことで、魅力的なカテゴリーとなっている。
なお、第4戦では松井がクラブマンシリーズで今季2勝目、堤がプロフェッショナルシリーズで今季初優勝を獲得している。
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みんなのコメント
走行会で頑張って「何秒でた!」とか「あそこのコーナーが!!」なんて言いながらコーヒー飲むのことが出来るだけで幸せを感じてます。
プロドライバーが単独で本気バトルをする。日本で唯一な貴重なレースカテゴリですね。