今日は3月30日。ということで、日産党のみならず、旧車ファンに330(サンサンマル)の愛称で親しまれている4代目・330系セドリック(グロリアは5代目)の試乗記をお届けします。『西部警察』ではコアの時代を駆け抜け(大量に爆破され)、トミカや族車のプラモデルなどでもおなじみの四十代より上の世代にはスカGに比肩する滋味深いモデルです。
ドライバー本誌に330セドリック/グロリアの試乗記が初めて掲載されたのは、今から47年前の1975年8月20日号。ライバルのトヨタ クラウンが4代目(通称 “クジラ” )で苦戦するなか堅調なセールスを重ねた先代230型。その勢いを加速させるべく、アメリカナイズの豊満なスタイルに生まれ変わった新型。そこに立ちはだかったのは…世界一厳しいとされた排出ガス規制。それをクリアすべく、各メーカーの技術者は腐心。現在のカーボンニュートラルに向けた世界レベルでの取り組みにも相通じています。
2021年の交通違反取締り件数ナンバー2は「速度違反」…もっとも多かったのは?
※以下試乗記は、当時の表現を残しつつ再構成しています
●左:先代セドリック(230型セダン・1971年)。右:4代目クラウンセダン(1971年)
[ニューモデル試乗速報]
50年規制クリア NAPS仕様
本命か セドリック2800 2ドアHT SGL
問題の グロリア 2000 4ドアHT SGL触媒コンバーターを採用し、50年規制をクリアしたNAPS仕様のセドリック&グロリアは、スタイルのフルモデルチェンジに加えて、心臓部までも変わっている。注目の2000モデルは、ライバル車クラウンに先がけての登場であるが、どうもパッとしない。本命はやはり2800というところか。[driverテストグループ]
■セドリック 2ドアHT 2800 SGL
2800でははじめての余裕をみる今回のフルモデルチェンジは、正直いって日産党にはなんとなく違和感を与えていることがわかった。試乗中に町の声を聞くと「セドリックらしからぬスタイルになった」、「なんとなくトヨタ的」、「もっとシブさがあってもいい」といったようなものばかり。つまり、旧型セドリックがあまりにも印象的かつ新鮮な感じをいまなお持ち続けていることを裏付けているようだ。いずれにしても、スタイル論評は好み問題が大きくからむので断言をさけるが、あまり好まれていないという傾向が強いことは事実である。
が、後のグロリア2000とくらべてこのセドリック2800は、たとえNAPS仕様といっても、排気量がパワーロス源となる触媒装置などをカバーしてあまりあるパワーを発揮している。正確なデータは測定していないのでハッキリしたことはいえないが、旧型の2600モデルに優るとも劣らないパワーと加速感はある。これでこそ “真のセドリック” といえるのだ。
L型6気筒エンジンのよさを十分に発揮し、スムーズな回転上昇とかねばりある強トルク発生は、未対策L26型エンジンそっくりである。このパワーならば、NAPS仕様と教えられないまま乗せられたら、きっと旧型L26エンジンだと思うであろう。
NAPS仕様になって、とくに旧型と違う点は、高回転時の伸び不足と、公害対策部分から発生する熱気くらいなものだろう。この熱気に関しては、低公害車の “証し” ではあるにしても、やはり不快感を与えるもののひとつ。もうすこしなんとかならないものだろうか。“エアコン” で快適な温度に保たれた室内に、ウインドを開けるたびにムッとした熱気がはいり込んでくるのにはまいった。
それにしても、パワー機構を各部に採り入れた超豪華仕様のSGLは、まさに走る応接室といったところ。アラベスクジャージー織のシートも旧型より豪華になり、取り扱いもグンと向上している。そしてハイレスポンスのパワーステアリングが、より走りやすさをくわえているのだ。
50年排出ガス規制をクリアし、なお余裕ある走りをするセドリック2800。が、212,7万円(東京地区標準現金価格)もするクルマをいったいだれが乗るのであろうか。なお、高速道路や渋滞路など約300kmを走っての燃費は5.7km/Lだった。
■グロリア4ドアHT 2000 SGL
疑問の115馬力L20型エンジン注目のNAPSは、日産の技術をフル動員して酸化触媒方式による排ガス清浄化システム。先号でも既報のとおり、そのすばらしさはおわかりいただけたと思う。つまり、これまでの公害対策エンジンは、どれもパワーダウンをよぎなくされている。それが、カタログデータによるとL20 NAPSエンジンは “触媒追加” にもめげず、気になるパワーダウンもなければ燃費もいい、ということなのだ。
これがホントの話であればそれこそいままでの低公害車感を完全にくつがえせると期待したのも偽らざるところ。ところがだ、事実はさにあらず、期待は完全にはずれたのである。
国産エンジンのなかでもスムーズな回転とすぐれた回転伸びのよさが売り物だったL20型が、NAPS仕様になったとたん、これまでの味をすべてなくしてしまった。115ps/5,600rpm、16.5kgm/3,600rpmというエンジン・データそのものは、未対策の旧型L20と変わらない。が、車両重量に約115kgの差(旧型GL比)はあるにしても、加速性やエンジン回転の伸びのニブさなどがハッキリとあらわれている。
とくにひどいのは、40→80km/hの追い越し加速で、通常多く使われる3速ギヤのタイムを測ったところ、なんと18秒。このデータは、これまでもっとも “悪い” とされたコロナTTC-Vよりも、さらに悪いのだ。たとえ慣らし運転不足といっても、これはあまりにヒドイ結果。あきらかにトルク不足を訴えている。
だからというわけではないが、この2000モデルでは、セドリックもグロリアもマニュアル・トランスミッションの5速仕様はなくなってしまった。きっと、5速の威力を発揮できないまでのトルク不足があるのだろう。それでも、オーバー・ドライブ・ギヤ(0.784の変速比)で165km/hの最高速が出るとは……。
ともあれ、期待は完全にくつがえされたのだが、反面、低公害車の妥協点というのもなんとなくみえてきたようだ。たとえ触媒方式にしても、排気量は最低でも2,300cc以上ないと、十分な加速性などは得られない、ということが……。そう考えると、トヨタのTTC-Cの2600モデルだけ(いずれは2000モデルも登場するだろうが)というのは商品イメージ(クラウンの)を落とすことなく、うまく登場させたともいえる。
パワーや加速性に不満は残るものの、そのほかのドライバビリティはさすが “グロリア” とうなずける。とくに、SGLのような超豪華高級車ともなれば、とりまわしや扱いになんら不自由はない。パワーステアリングも、一段と切れのよさに、“もどり” のよさがくわわって、“パワーステ” の威力は倍増された。このへんが日産の味だし、なんとしてもグロリア&セドリックには不可欠なもの。
残る問題はあくまでもパワー不足につき、もしこの状態でスカイラインにL20 NAPS仕様が搭載されたことを想像すると、“あのスカG” が泣くような気がしてならない。
〈まとめ=ドライバーWeb編集部〉
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みんなのコメント
記事ではSGLがトップグレードのようですが、程なく2.8Lにブロアムというグレードが追加され、ブロアムはその後の販売の軸になりましたね。