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一瞬たりとも気が抜けない! 真のスーパースポーツ、ランボルギーニ アヴェンタドール SVJを駆る 【Playback GENROQ 2019】

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一瞬たりとも気が抜けない! 真のスーパースポーツ、ランボルギーニ アヴェンタドール SVJを駆る 【Playback GENROQ 2019】

Lamborghini Aventador SVJ

ランボルギーニ アヴェンタドール SVJ

一瞬たりとも気が抜けない! 真のスーパースポーツ、ランボルギーニ アヴェンタドール SVJを駆る 【Playback GENROQ 2019】

未知との遭遇

躍進の続くランボルギーニのフラッグシップであるアヴェンタドール、そのスペシャルモデルといえるのがSVJである。本邦初上陸したばかりの個体を連れ出して一般道でのダイナミクスについて検証を行った。

「絶望的な後方視界は、むしろ走りに集中させてくれる!?」

SVに「J」の文字まで加えたアヴェンタドールの最終進化型が今夏のモントレー・カーウィークで発表された。日本でも11月のランボルギーニ・デイ・ジャパンでお披露目されたばかりのアヴェンタドール SVJである。

もともとアヴェンタドールは異形の神のような特別な“スーパースポーツカー”だが、その最強版であるSVJは最近ではなかなかお目にかかれない厄介なクルマだった。レーシングカーのようなカーボン製空力付加物でサイズはさらに拡大し、全長はほぼ5m、全幅は2.1m(ミラーを入れるとほぼ2.3m!)に達しているが、アヴェンタドール Sでも全幅は2mを超えていたからそれは大きな問題ではない(本当は立派な問題だが、比較で言えばそうではない)。厄介なのは、そもそも斜め後方が見えないうえに、SVJではルームミラーがまったく役に立たないということである。

巨大なカーボン製リヤウイングの支柱がボディ後部中央に立てられ、アヴェンタドールSVJの最大の特徴である進化版可変エアロダイナミクス「ALA2.0」のエアインテークが、その基部に設けられているせいで、ルームミラーを通して見る後方視界がまるで期待できない。取り外し式のカーボン製エンジンフードの隙間から左右後方がわずかに覗くに過ぎないのだ。

「返却後、正直ドッと疲れが押し寄せて来た。こんなクルマは久しぶりである」

トレーラーやダンプトラックでひしめき合う東京湾岸のディーラー・ファクトリーから都内を抜けて東名高速に乗り入れても、そこで安心するわけにはいかない。道幅に余裕は生まれたが、前述のように何しろ後ろが見えない。ただでさえスーパースターのように目立つのに、後方から忍び寄る危険に注意するにしてもサイドミラーしか頼るものがないのである。駐車する際ももちろん面倒だ。今ではどんなスーパースポーツにも備わっているバックアップカメラもパーキングセンサーも何にもついていないからだ。無論、リヤビューカメラを取り付けることはできるが、ランボルギーニ・デイでのお披露目に間に合わせるためにその時間さえ惜しんだのだという。何しろこのアヴェンタドール SVJには「1 di 900」のプレートが張られていた。つまり限定900台のうちの第1号車なのである。

ついでに言えば、ボディ前後にはバンパーというよりスプリッターとディフューザーと呼びたい無塗装のカーボン製スポイラーが突き出しており、サイドにもカーボン製のスプリッターが備わっている。サイドスプリッターなどは巨大なピレリPゼロが跳ね上げた路面の砂粒をまともに受けてしまうのだから、走ればどうしても無傷ではいられない。

大切な第一号車であることは重々承知ではあるが、こちらも仕事ゆえに走らなければならない。返却の際に若い社員が、前20/後21インチのホイールのリムやスプリッターの下側を丹念に指で撫でて傷を確認するのを見てヒヤリとした。とにかく大切な1号車を無事で返却することができて良かった、と正直ドッと疲れが押し寄せて来た。こんなクルマは久しぶりである。わずか900人のごく限られたオーナーにしか渡らないわけだから、そんな心配はないはずだが、その高性能とは裏腹に高い洗練度と扱いやすさを併せ持つウラカン ペルフォルマンテとはまったく別物であることを伝えておきたい。

「ニュルで量産市販車最速の6分44秒を叩き出したSVJ」

ダウンフォース向上とドラッグ低減を両立させたアクティブ・エアロダイナミクスとともに、さらにパワーアップした伝統の6.5リッターV12エンジンもアヴェンタドール SVJのトピックだ。L539型V12は吸排気システムに改良を受け、566kW(770ps)/8500rpmと720Nm/6750rpmを発生、この数字はアヴェンタドール Sより30psと30‌Nmの増強、2015年に限定発売されたSVと比べても20psアップとなる。許容回転数は200rpm引き上げられて8700rpmに達するという。0-100km/h加速はSよりも0.1秒速い2.8秒(SVと同じ)、最高速度は350km/h以上と発表されている。

ちなみにアヴェンタドール SVJはニュルブルクリンク北コースで6分44秒97という量産市販車最速(何をもって量産とするかの議論はあるが)の記録を叩き出している。いやはや、この猛牛を御して7分を大幅に切るなんて、そのドライバー(日本のスーパーGT選手権にも参戦しているマルコ・マペッリだという)を心から尊敬する。

「サーキットでもなければその高性能を発揮する余地はない」

ただし、ストラーダモードとATモードで漫然と運転してる限りでは、まったくエキサイティングではない。それどころかもっさりしていると感じることもあるだろう。それは主に今や古めかしいシングルクラッチの7速AMT(ランボルギーニはISR=インディペンダント・シフティング・ロッドと称する)のせいで、自動シフトはヨイショっという感じにゆっくり変速し、高速道路で前が空いて加速しようと右足を踏み込んでも反応せず、だいぶ待たされてから2、3段一気にキックダウンして猛然と加速するという場面が多々あった。なぜかアヴェンタドール Sよりもストラーダモードでの変速はスローでタイムラグが大きいように感じられた。

ちなみに、例によって乾燥重量で記載される車重は1525kgとされているが、いかにカーボンモノコックとはいえ、巨大なV12エンジンを搭載する4WD車でそれはちょっと楽観的に過ぎる。車検証には1820kgと記載されているが、それでも十分軽いと言えるだろう。

となれば当然、ランボルギーニらしく走らせるためにスポーツ、あるいはコルサ・モード(加えてカスタムの“エゴ”がある)を選ぶことになるが、そうすると途端に武闘派に変身することを覚悟する必要がある。V12エンジンは6000rpmぐらいから明確に猛々しい咆哮を上げ、爆発的にリミットめがけて上り詰めるが、低いギヤではエンジン回転数をデジタルバー表示のタコメーターできちんと確認する余裕がないほどだ。クローズドコースで試した人間が言うには、リミッターが作動する8500rpmまで回すと1速でおよそ80km/h、2速では140km/h、3速は180km/hぐらいまで伸びるようだ。FSWのような広いサーキットでなければ、その真価を存分に発揮させるのはそもそも無理があるというものだ。

「日常的な扱いやすさなど歯牙にもかけず、攻撃的に走ることだけを考えたSVJ」

加えてスポーツ・モード以上では、路面が荒れているところではビクビクッと針路を乱すほど締め上げられた足まわりと(コルサではかえって接地性が落ちるほど)、情け容赦なくガツンと変速する7速AMT、そして際限なく猛り狂うエンジンの従来よりも鋭くなったと思われるレスポンスに付いていくのがやっと。さらにアヴェンタドール SVJ用に開発されたというピレリPゼロは明らかにドライコンディション用らしく、少しでも山道の路面が湿っていたり、落ち葉が残っていると、たちまちお尻がムズムズ動くので、一瞬たりとも気が抜けない。一般公道では路面状況を間違いなく見極めるのに精いっぱいで、正直言ってとてもALA2.0の効果を確かめることはできなかった。

日常的な扱いやすさなど歯牙にもかけず、攻撃的に走ることだけを考えた由緒正しい真のスーパースポーツがアヴェンタドール SVJの実像である。

REPORT/高平高輝(Koki TAKAHIRA)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)

SVJの中枢「LDVA(Lamborghini Dinamica Veicolo Attiva)」を詳細解説

アヴェンタドール SVJには様々な電子制御技術が採用されている。ALA2.0(可変空力機構)、LRS(リヤステア)、4WD、スタビリティ・コントロール、マグネティックライドダンパー、ABSなどである。電子制御が進化することはすなわち、車両統合制御の複雑化を意味するが、これだけのシステムが絡み合うと、パラメーターが干渉して、正しい制御ができなくなる恐れが出てくる。そこでランボルギーニは加速、ブレーキング、そしてコーナーへの進入などの状況にあわせて優先順位を決めて、もっとも有効な電子制御デバイスを作動させるという。もっとも有効なデバイスが最大限効果を発揮できるように周辺デバイスをコントロールすることを念頭に置いているのだ。

この時に肝要となるのはLDVA2.0(ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・アッティーバ)という車両統合制御で、いわばこのクルマの頭脳である。開発者にコーナリングでLDVAがどう作動するのか訊くと、ブレーキングからコーナー進入時にはリヤステアが車体の安定性を高め、同時にALA2.0がオフになることでダウンフォースを高めて車体を安定させる。コーナリングが始まるとエアロベクタリングでロールを抑制し、4WDシステムがスムーズなコーナリングをするためにリリースされる。そしてコーナー出口でアクセルを踏み込むと4WDシステムが前輪にトルクを伝達し、鋭く加速できるという流れだという。もちろん物理的な限界は存在するから、常識を大きく外れた旋回性能を示すわけではない。だがコーナー進入時から出口まで、スムーズな特性変化を実現した。もちろん、一連の技術の中で特にALA2.0を搭載することでダウンフォースを増やし、リヤのスタビリティが向上した効果が大きな役割を果たしているのは言うまでもない。

TEXT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)

【SPECIFICATIONS】

ランボルギーニ アヴェンタドールSVJ

ボディサイズ:全長4943 全幅2098 全高1136mm
ホイールベース:2700mm
乾燥重量:1525kg
エンジン:V型12気筒DOHC
総排気量:6498cc
ボア×ストローク:95.0×76.4mm
圧縮比:11.8±0.2
最高出力:566kW(770ps)/8500rpm
最大トルク:720Nm(73.4kgm)/6750rpm
トランスミッション:7速SCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前255/30ZR20(9J) 後355/25ZR21(13J)
最高速度:350km/h
0-100km/h加速:2.8秒
環境性能(EU複合モード)
燃料消費率:19.6L/100km
CO2排出量:452g/km
車両本体価格:5154万8373円

※GENROQ 2019年 2月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

文:GENROQ Web 高平高輝
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