マイルドHVになったM コンペティション
BMWは、2023年にクーペSUVのX6へフェイスリフトを施した。その変化は、高性能なX6 M コンペティションにも及んでいる。むしろ、想像以上に多くのアップデートが加えられたといって良い。ちなみに、コンペティションではないX6 Mは廃盤になった。
【画像】625馬力 V8はマイルドHVに BMW X6 M コンペティション 競合クラスのSUVと比較 全148枚
スリムになったヘッドライトや新形状のテールライトを獲得し、実際に押せるハードボタンが大幅に減り、大きなモニターパネルが装備されたことなどは、通常のX6と共通する。だが「M」ならではといえる、メカニズムの更新にも力が注がれている。
ボンネット内に収まるのは、ツインターボで過給される4.4L V8ガソリンで、表面的には同じ。BMW X7やXMにも採用されているものだ。しかし、電圧48Vのマイルド・ハイブリッドが与えられ、BMWはまったくの新世代ユニットだと主張する。
それでも最高出力は625ps、最大トルクは76.3kg-mで、フェイスリフト前と変わりない。ZF社製の8速オートマティックには、スターター・ジェネレーター(ISG)が内蔵され、1速から3速までのギア比が落とされた。
その結果、0-100km/h加速を僅かに縮めた、と書きたいところだが、実際は0.1秒遅くなり3.9秒だ。とはいえ、このクラスのSUVとしては極めて鋭いダッシュを披露することは事実。早いタイミングで変速されるようになり、実際は数字以上に速く感じられる。
やや合成的なエンジンサウンド
シャシーまわりでは、アクティブ・アンチロールバーを装備できるようになったことが主なトピック。従来より高速化されたスタビリティ・コントロールと、改良されたアダプティブダンパーも組まれる。
サスペンションは、コイルスプリング。アップデート後のX6で、エアスプリングが組まれないのは、M コンペティションだけだ。
勇ましいエンジン音は、必要に応じて静かにできる。試乗車をお借りしていた時は、ご近所へ気を配り、クワイエット・モードを毎回指定していた。少なくとも車内で聞く限り、その効果は大きいようだ。
スポーツ・モードを選び、エグゾーストシステムのバルブを開けば、あからさまなV8サウンドを楽しめる。クラス最高の音響体験、というわけではないけれど。
ベントレー・ベンテイガのような重層的な唸りや、フラットプレーン・クランクらしい咆哮は楽しめない。排気ガス規制に対応させるためなのか、意図的なチューニングによるものなのかは不明だが、X6 M60iより合成的な、その中間的な響きに聞こえた。
またコンクリート舗装の高速道路では、車内に充満するロードノイズも小さくなかった。
能力を引き出すには寛大な環境が必要
アクティブ・アンチロールバーを獲得したものの、一般道での乗り心地は明確に硬い。姿勢制御の向上に合わせて、コイルスプリングのレートが弱められたわけではないようだ。X6 M コンペティションを普段使いで乗るには、相応の覚悟が必要かもしれない。
そのかわり、ボディコントロールは極めてタイト。ハードコアといっていい。加えて四輪駆動システムは、安定性を担保しつつ、後輪駆動へ近い体験を味わわせてくれる。
ただし、大きいサイズと重たいウエイトも隠さない。ステアリングホイールは重めだが、情報量が充分とはいえず、思い切り操れそうな自信は抱きにくいだろう。エンターテイメント性でいえば、アストン マーティンDBXの方が勝るといえる。
日常的な速度域で評価する限り、実のところX6 M60iの方が魅力的に思えてしまう可能性はゼロではない。エアサスペンションで乗り心地は上質だし、パワーは多少劣るものの、V8エンジンのサウンドはより豊潤。英国価格も大幅にお手頃だ。
X6 M コンペティションの能力を最大限に引き出すには、より寛大な環境が求められる。乗り心地はポルシェ911 GT3並みに硬いが、望ましい条件では極めて速く、運転も楽しいはず。もう少し時間をかけて、検証する必要があるだろう。
BMW X6 Mコンペティション(英国仕様)のスペック
英国価格:13万1405ポンド(約2444万円)
全長:4960mm(通常X6)
全幅:2004mm(通常X6)
全高:1700mm(通常X6)
最高速度:289km/h
0-100km/h加速:3.9秒
燃費:7.8km/L
CO2排出量:291g/km
車両重量:2445kg
パワートレイン:V型8気筒4395cc ツインターボチャージャー+ISG
使用燃料:ガソリン
最高出力:625ps/6000rpm
最大トルク:76.3kg-m/1800-4800rpm
ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動)
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